ドラマ、映画、ミュージカル、歌手活動などさまざまなジャンルで輝きを放ち、近年はトーク番組のMCを務めるなどさらなる進化を続ける山崎育三郎。20日にスタートする主演ドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』(テレビ朝日系/毎週金曜23時15分※一部地域で放送時間異なる)では、自らも発達障害を抱える児童精神科医という難役に挑む。

「2022年は自分にとって集大成の年だった」と語る山崎に、新たな挑戦の幕開けとなる本作に込める思いやこれからの展望を語ってもらった。

【写真】スラリとしたスタイルに白衣がよく似合う山崎育三郎

◆繊細なテーマを扱う作品を「嘘のないように、丁寧に描いていきたい」

 同名の人気漫画を吉田紀子の脚本で実写化する本作は、郊外の児童精神科クリニックを舞台に、自らも発達障害を抱える院長と研修医が、発達障害をはじめ、さまざまな生きづらさを抱える子どもとその家族に真っすぐに向き合い、寄り添っていく姿を描く医療ヒューマンドラマ。山崎は主人公で、“凸凹(でこぼこ)”と名付ける発達障害(ASD)を抱えた「さやま・こどもクリニック」院長・佐山卓を演じる。共演には松本穂香志田未来、戸塚純貴、風吹ジュン、栗山千明らが顔をそろえた。

 本作出演にあたり、原作や脚本を読み、思うことが多かったという山崎。「自分自身が今、子どものいる環境で生活している中で感じることや共感する部分がすごくあったので、入り込みましたし泣けました」と語る。「読み終わった時にあたたかい気持ちになって、こんな作品をやりたかったと思うような本に巡り合えた瞬間でした」。

 デリケートなテーマを扱う作品ということもあり、佐山を演じるにあたっては心がけていることも多い。「繊細な物語ですので、嘘のないように。原作は大事にしつつ、より繊細に丁寧に描いて行こうという気持ちでいます。現場には、実際に発達障害の当事者の方が立ち会ってくださっていて、1つ1つ、こういう時にはどういう感情が生まれるとか、ちょっとした動作1つでも確認しながら丁寧に撮影を進めています」と話す。

 脚本の吉田紀子からは、佐山がこれまでどんなふうに生きてきたのか、彼にはどんな特徴があるのかなどが書かれたプロフィールが渡されたそう。
「こんな分厚いのは初めてというくらい詳しく書かれていて。それを参考にさせてもらっています。現場にいてくださる当事者の方からは、話しているときの目線だったり、体の使い方だったり、いろいろ助言をいただいています。佐山が体操をするシーンがあるのですが、最近までミュージカル『エリザベート』でトート閣下を演じていたので、『山崎さん、かっこよく動きすぎです!』って言われたり」とにっこり。

 松本とは2回目の共演。松本は山崎に対して「なんでこんなに優しいんだろう?っていうくらい、とにかく優しくて気遣ってくださって。現場が穏やかな空気でいれるのは育三郎さんのおかげ」と感謝していたが、山崎も「役に対して誠実と言いますか、取り組み方がすごく繊細であり、でもストイックで。役としてただそこにいてくれるので、自分自身も引き出されるものがあるし、芝居をしていても絶対的な安心感がある」と松本に対して信頼をにじませる。

 「今回医療用語も多いですし、(松本が演じる志保は)ばーっとしゃべるんですけど、絶対に間違えず、ほぼ一発で決めちゃうんです。尊敬する役者さんです」。空き時間には差し入れの話で盛り上がったそうで、松本が山崎にお手製のローストビーフの差し入れをリクエストするなど、劇中同様、バディ感も出来上がりつつあるようだ。

 “こどもクリニック”が舞台ということもあり、たくさんの子役が出演する本作だが、「子どもと日々過ごしているので、日常というか、普段のまんまっていう感じですかね」と特別な気負いはない。
「子どもたちが常にいるので、現場の空気も明るくなりますね。子どもたちは、本番ギリギリまで動いていたり、きょろきょろしていたり普通に子どもらしくいるんですけど、いざ“よーい、本番!”となったときの集中力には毎回驚かされます。先日も4歳の男の子と2人でお芝居をする機会があったのですが、わーっと泣く芝居を毎回完璧にやるんです。本当にびっくりですよ。子どもは嘘がないので、毎回心が動かされますね」と刺激をもらいながら作品に向き合えている。

◆デビューしてからの集大成だった2022年 第2章の幕開けにワクワク

 本作で佐山のよき理解者で、右腕としてクリニックを支えている臨床心理士・向山和樹を演じる栗山千明とは、ドラマ『六番目の小夜子』(NHK)での共演以来、22年の付き合い。「『六番目の小夜子』のLINEグループではつながっているのですが、連ドラでの共演は久しぶり。やっぱりうれしかったですね」と笑顔を見せる。「役者の仲間というよりは、幼なじみみたいな感覚が近いですかね。子どもの時から知っているんで、深い話をしなくてもつながっているようなところがあって、安心感があるといいますか。女優さんとしてもベテランですし、素晴らしい役者さんで、頼りがいがあります」と久しぶりの共演を楽しんでいる様子だ。「千明ちゃんは、あの頃もう今くらいの身長だったんです。
僕は声変わりをする前で小っちゃかったんで、見上げていたんですよね。今回共演して、見下ろす感じになって不思議な感覚です(笑)」。

 12歳でのデビューから24年。「中学時代に千明ちゃんとドラマで共演した頃から、『やっぱりミュージカルが大好きだ!ミュージカルがやりたい!』と再認識したんですよね」と明かす。その後、進学などを経て2007年にミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演してからは15年が過ぎた。この15年の歩みを振り返ってもらうと、「ミュージカルだけで30までは走り抜けてきたんですけど、1つ自分の中では、ミュージカルの世界で『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『モーツァルト!』『エリザベート』などで帝劇に立つという目標が20代でかなえられて。30代に入って、朝ドラ(『エール』)や大河(『青天を衝け』)、主演ドラマなどを経験させていただき、バラエティーでMCをやらせていただいて、ラジオももう5年になります。ほかにも、全国ツアーや日本武道館でコンサートをさせてもらったり、紅白にも出させてもらいました。“これだけはいつか!”というものを全部経験させていただきました」と感謝する。

 「自分の中では2022年は、自分がデビューしてからの集大成と捉えている部分があるんです。デビューした12歳が寅年で、24歳で帝劇初主演をさせていただき、昨年が36歳の寅年で節目の年。第1章が終わるみたいな感じ」と語る山崎。
「2023年からは新しい出発な気がしていて、この『リエゾン』もそうですし、新作ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』での主演もあります。これまでは先輩たちが築き上げてきたものに憧れてやり続けてきたんですけども、これからは自分もそういうロングランヒットする作品を作っていくってことにシフトチェンジしていくというか、そんな作品にチャレンジしていきたいですね」とやる気に満ち溢れている。

 「フルオーケストラツアーもやらせていただくので、また大きい年になると感じています。なんとなく自分の中で第2章というか、ここまでやってきたことをベースに、また違う展開が待っているような感覚で、すごくワクワクしています」。そう楽しそうに、力強く語る山崎。新章の幕開けとなる『リエゾン』で、また新たな魅力を放つ姿を見せてくれそうだ。(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 ドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』は、テレビ朝日系にて1月20日より毎週金曜23時15分放送(※一部地域で放送時間異なる)。

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