『ドクターX ~外科医・大門未知子~』シリーズをはじめ、数々のドラマや映画で魅力的な主人公を演じてきた米倉涼子。第10回開高健ノンフィクション賞を受賞した佐々涼子の同名ノンフィクションを原作にしたAmazon Originalドラマ『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で演じるのは、海外で亡くなった日本人や、日本で亡くなった外国人の遺体を母国へ搬送する国際霊柩送還士・伊沢那美(エンジェルハース社社長)だ。
【写真】凛として美しい、米倉涼子
■「亡くなった方の人生を、魂も一緒に運ぶという想いで」
――佐々涼子さんの原作を、発売当初に読まれていたそうですね。
米倉:素晴らしい本でしたし、こんな役があったらかっこいいよねと当時思っていたのを憶えています。映像化のお話をいただいた時はすごくうれしかったですし、運命を感じました。その反面「本当に?」とびっくりもしました。本当に、私が好きだと言っていたあの作品かな?って。だって、ずっと周りに紹介してたんですよ、「この本いいよ」って。
――国際霊柩送還士という仕事に対しては、率直にどう思われましたか?
米倉:送還士と聞くと、ご遺体を棺に納めて送るみたいなイメージかもしれません。でもそんな簡単なことじゃなくて、その人の人生を、魂も一緒に運ぶという想いでやってらっしゃる方々だと感じました。ご遺体に関しても、亡くなった方がどこから来た人なのかに始まり、いろいろ調べたり手続きしないといけないんです。許可をもらうだけでも大変。そうしたことを全部引き受けて、祖国に帰ってきた時にご遺族の方に喜んでもらえるように送り届けることが、彼女たちの誇りなのだと思います。
――生きていた頃を。
米倉:傷ついて亡くなったことは悲しいけれど、元気だった頃を思い返してもらえたらという、彼女たちの仕事ぶりを大切にしなきゃいけないという想いでした。亡くなった方たちを軸にした物語なのに、全話が、より生命を感じさせる、彼らが生きていたことに「ありがとう」と言いたくなるドラマになっていると思います。
――フィリピンのハッピーランドを舞台にした第1話から、非常に印象的です。
米倉:ハッピーランドはいわゆるスラム街と呼ばれているような場所で、狭い地域にたくさんの人たちが密集して住んでいる、マニラでも比較的貧しいエリアです。第1話に描かれていたように、亡くなった方のお葬式を出すためのお金を近所の人たちが賭け事をして集めるといったことを、私たちが撮影していたすぐ隣で実際にやっていました。
――実際にあの場に行っての撮影だったんですね。
米倉:本当に行きましたよ! すごく大変でした。私たちもですけど、第1話ゲストの葉山奨之くんたちはもっと大変だったと思います。あそこを駆けずり回っていましたからね。本編を見たとき、驚きました。
■「米倉涼子」を継続させていくために、私生活の「米倉涼子」も大切に
――体調のお話も出ましたが、いま時代は仕事、仕事ではなく、ライフワークバランスを重視した方向になっています。米倉さんはどうですか?
米倉:それこそ私は去年、お仕事をキャンセルしなきゃいけない事態になりました。最終的に自分を守るのは自分しかいませんから、大切なことだと思います。これまでは、いわば趣味のひとつとして“メンテナンス”と言ってました。でも、そうじゃなくて、本当に早めにオーバーホールしておかないとダメ。自分にも、みんなにも迷惑をかけますから。
――早めのメンテナンス、オーバーホールを。
米倉:たとえば、米倉涼子という一台の車があったとして、エンジンがかからなくなったら動かないですよね。そうならないように、洗車だけじゃなくて、オイルを入れたり、中身もきちんとメンテナンスをしなきゃいけない年齢になって来た。
――それは周囲の先輩方を見ていても感じますか?
米倉:やりたい気持ちはあるんだけど、体が思うように動かないと話す大先輩たちも、実際にたくさんいらっしゃいます。元気でいることに越したことはありません。ただ、年を取れば誰だって病気にもなったりする。気が付いたら倒れてるかもしれません。でもだからこそ、無理しすぎずに、バランスを整えるということが大事だと思います。
(取材・文:望月ふみ 写真:高野広美)
Amazon Originalドラマ『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』は、Prime Videoにて3月17日より独占配信。