タモリが司会の長寿バラエティ番組『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系/毎週金曜24時20分)が、3月末で放送終了する。1982年10月にスタートし、40年以上にわたり歴史を築いた番組の終了を惜しむ声は少なくない。

同番組は数々の人気企画を展開してきたが、中でも、根強い人気を誇るコーナーが「空耳アワー」だ。洋楽を中心に、メロディに沿った歌詞が別のフレーズに聞こえる“空耳”作品を募集するコーナーで、これまで数々の作品を世に輩出してきた。本稿では、最高位の賞品“ジャンパー”を獲得した中から、いまだ語り継がれる名作5作品をピックアップして紹介する。

【動画】「農協牛乳」「パン 茶 宿直」本当に聞こえる? 原曲をチェック

■「農協牛乳」

原曲:バット・ダンス/プリンス
元の歌詞:DON’T STOP DANCING
空耳:農協牛乳

 ほぼ“出落ち”といっても過言ではない、ハイスピードな“ワンフレーズ系”空耳の超名作。司会のタモリ、共演のソラミミスト・安齋肇はVTR後に爆笑し、繰り返し再生したあと、タモリが「絶対『DANCING』とは言ってないよ!」と大絶賛していた。番組内で取り上げたのは原曲のわずかなフレーズで、VTRもスピーディな展開に。
黒バックでスモークが炊かれる中、紙パックの「農協牛乳」がせり上がるのみのシンプルな構成だった。

■「パン 茶 宿直」

原曲:スムース・クリミナル/マイケル・ジャクソン
元の歌詞:WOO! CHA! CHUKU CHUKU!
空耳:パン 茶 宿直

 世界的アーティスト、マイケル・ジャクソンの名曲に新たな意味をもたらした“シュール系”空耳の人気作品だ。VTRは、換気扇が回るシーンからスタート。誰かが3つの「パン」が置かれた皿を手にして歩き、お「茶」を入れる手元が映るまでのシーンは何が起きているか分からないが、最後、カメラが引いて「宿直」室が映ったときに思わず「なるほど!」と手を叩きたくなる。鑑賞後に「パンとお茶ってのは宿直につきものなのかね!」とつぶやいたタモリ、安齋の大爆笑を誘った。

リズム&ストーリー系の名作 オチまでの流れが驚きの完成度

■「ナゲット割って父ちゃん×12 どうすんだい!?」

原曲:キリング・イン・ザ・ネーム/レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン
元の歌詞:AND NOW YOU DO WHAT THEY TOLD YA~THOSE WHO DIED
空耳:ナゲット割って父ちゃん×12 どうすんだい!?

 展開に沿って、ジワジワと笑いが押し寄せてくる“リズム系”空耳の秀作。
VTRでは、居間で団らんする父、母、息子の3人家族が登場する。机上のナゲットを1つ1つ手に取り「ナゲット割って父ちゃん」と渡す息子、ナゲットをテンポよく割りながら徐々にノリノリになる父の姿だけでも笑えるが、2人を見守っていた母親が「どうすんだい!?」とツッコむオチまでの完璧な流れに爆笑必至。タモリや安斎だけではなく、放送回で共に“空耳”作品を見ていた俳優・六角精児お笑いコンビの博多華丸・大吉らも大絶賛していた。

■「あの イボ痔 あの イボ痔 ああぁぁ」

原曲:清らかな女神/フィリッパ・ジョルダーノ
元の歌詞:A NOI VOLGI A NOI VOLGI AH~
空耳:あの イボ痔 あの イボ痔 ああぁぁ

 鑑賞後にタモリが「名作」と連呼するほど絶賛した、悲哀も感じられる“ストーリー系”空耳の1作。乗客ひしめくバスが舞台のVTRと共に、強くインパクトを残す。映像の主な登場人物は、苦しそうな表情を浮かべながらバスの手すりにつかまる老婆と、自身の座っていた席をゆずろうとする青年。
老婆が「あの イボ痔」と断るものの、ヘッドホンで音楽を聴く青年は気づかず、やがて「ああぁぁ」ともだえる老婆の表情がどアップになるまでの流れが秀逸。原曲タイトル「清らかな女神」とのギャップも、作品の持ち味に。

■「あんたがた ほれ見やぁ 車ないか… こりゃ まずいよ…」

原曲:ベンベンマリア/ジプシーキングス
元の歌詞:NO TE VAYAS VUELES YA TU NO ME DEJAS TU NO ME DEGAS
空耳:あんたがた ほれ見やぁ 車ないか… こりゃ まずいよ…

 最初のシーンだけでは何が起きるか予想は付かないVTRにも引き込まれる“長文系”空耳の名作だ。映像は、車を路上に停めた男女のカップルが街中の建物に入る場面からスタート。建物から出てきたカップルに、おじさんが「あんたがた ほれ見やぁ」と道路上を指差すと、そこに描かれていたのは「レッカー」の文字。停めていた車がレッカー移動された事実に「こりゃ まずいよ…」と苦笑いするカップルの男性、それにあきれる相手の女性のやり取りで終わる展開は、やや長尺ながらもテンポがいい。
鑑賞後の安斎に「これはまだまだ…。真の“空耳道”とは遥か彼方ですよね」と言わしめたほど、数ある中でも奥深い作品の1つ。

 これらの作品はごく一部で、それぞれの記憶に残る“空耳”の名作もあるだろう。金曜深夜に“何も考えずに見られる”ほど浸透した番組の終了は寂しさも募るが、その思い出は多くの人の心に刻まれている。