日本将棋連盟会長の羽生善治九段が、28日放送の『NewsBAR橋下』(ABEMA NEWSチャンネル)に出演。この日の放送では、史上初めて将棋タイトルの八冠制覇をした藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖)を羽生九段が徹底解剖した。



【動画】羽生九段が語る藤井聡太の“強さ”とは

 番組ホストの橋下徹は羽生九段との初共演に、「僕は羽生九段の1つ年下で同世代。僕が大学浪人中に羽生九段が初タイトルを獲り、司法試験に落ちて燻っている時には次々にタイトルを獲得した。うだつが上がらなかった時に見た、同世代の羽生九段の輝かしい報道は強烈に覚えてる」とコメント。
また、橋下さんは「長男が将棋教室に通っていて、彼が小学2年生の時に対局したら負けてしまった。まさか負けるなんて…」と告白すると、羽生九段は「将棋は基礎を覚えるとすぐに強くなれるので、小学校低学年でも強い子はたくさんいる」とした上で、「私も小学2年生から将棋道場に通い始めた。年配の人と対局して私が勝つ度に『もう1回やろう』と言われて応じていたら、そのまま5回ほど負かしたことがある。子どもなんて躊躇なく本気で指すから、気の毒なことをしましたね(笑)」と話し、笑いを誘った。

 そのほか番組では、藤井聡太竜王・名人の「強さの秘訣」について羽生九段が言及。羽生九段は「総合的な実力があることはもちろんのこと、藤井さんは出来不出来の差がすごく小さい。20代前半の棋士は粗削りで、長けている部分もある一方で弱い部分もあるのが普通だが、藤井さんは安定感がありこの結果が出せている。未知な場面でも正しい羅針盤で良い方角を向けることに優れている」と評価した。

 続いて、藤井聡太竜王・名人が史上初の八冠達成した「第71期王座戦五番勝負」を振り返ると、羽生九段は「例えば12時間対局をやっていて、11時間半優勢だったとしても、最後の30分にひっくり返されることは将棋ではよくある。
今回の王座戦でも永瀬拓矢九段は勝ちの手順があることを気づいていたけど、持ち時間がなくなって読み切れなかった。まさにギリギリの紙一重の勝負が明暗を分けた」と評し、「持ち時間1分の中ですべてを出さないといけない残酷さがある一方で、そこにドラマがある」と将棋の魅力を語った。

 また、この対局で大きな話題となった「AIによる形勢判断」について、「AIが示してくれる候補手を見ると、『これを指せば確かに勝率90%だけど、人間がこの手を見つけるのは難しいだろう』と思う時もある。つまり、絶対安全な“勝率80%”もあれば、逆転の可能性がある“勝率90%”もある」と明言。

 さらに「頭がフレッシュな状態だったら永瀬さんも最善な一手が読めていたと思うが、12時間以上戦い続けていてヘトヘトになっている状態でそれが見えるかというと微妙なところである」と話した。

 そのほかにも“世紀の一戦”となったこの対局に関する裏話を披露する一幕も。羽生九段は「第1局の前日に、関係者の食事会があった。私は永瀬さんの隣に座っていたが、彼は“それどころではない”感じで上の空だった。すでに対局モードに入っているんだなと隣でひしひしと感じていた」と舞台裏を明かした。

 『NewsBAR橋下』はABEMA NEWSチャンネルにて毎週土曜21時放送。

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