放送中のドラマ『アイのない恋人たち』(ABCテレビ・テレビ朝日系/毎週日曜22時)で、恋と酒におぼれる女性を演じている佐々木希。アラサー男女7人の葛藤を描くドラマだが、佐々木自身の30代は「シンプルに物事を考え、生きられるようになってすごく楽しい」と充実の日々を過ごしている。

「幸せの物差しはみんな違う」という幸せの価値観。そして「苦手だった、お芝居の道を選んだ」ともがきながら進んだ転機について、率直な思いを明かした。

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◆遊川和彦が紡ぐセリフに共感「誰だって失敗をする」

 本作は、恋愛にまるでいい思い出がなかったり、過去に大きな失恋を経験していたりと、それぞれの理由により恋愛と距離を置き、恋人もいない状況にある“ワケアリの男女7人”による群像劇。数々の名作ドラマを生み出してきた脚本家、遊川和彦が手掛けるオリジナル作品だ。佐々木は、台本の面白さに心を惹かれ「ぜひ出演させていただきたいと思った」という。

 売れない脚本家、異性と付き合ったことのない会社員、結婚願望の強い警察官など、多種多様なキャラクターの七転八倒を映し出していく。
「それぞれがいろいろな壁にぶつかって、一歩進んだかと思うと、また一歩下がってしまったりする。でも人生ってそんなにうまくいかないものだよな、うまくいっていると思う時ほど何か起きたりするものだよな…と共感できる人もきっと多いのではないかと思いました。誰だって失敗をしますから」と登場人物たちに心を寄せた佐々木は、「刺さるセリフもたくさんありますし、私自身、台本を読んでいても次の展開が『どうなるの!?』と気になって仕方がなくて!」とすっかり物語に魅了されている様子。「うまくいかないことばかりの7人のキャラクターがみんな人間味にあふれていて、ものすごく愛おしい」と目尻を下げる。

 佐々木が演じるのは、福士蒼汰扮する久米真和の初恋の相手で、高校時代は学校のマドンナ的存在だった稲葉愛。ピアニストを目指していたが、現在は当時の輝きはなく、恋と酒に溺れる日々を送っている…というやさぐれた女性だ。


 佐々木は「つらい経験をしながらも、それを隠して明るく振る舞っている女性。そういったところがすごくチャーミング」と役柄の印象を吐露。「愛は頑張ってきたピアノができなくなってしまって、そこから人生が狂い始めてしまう。私は中学生の頃に新体操をやっていたんですが、体調を崩して入院をしたことによって、大事な大会に出られなくなったことがあって。やりたかったことができなくなるって、すごくつらいよなと、彼女の気持ちが分かる部分もあります」と愛着を感じながら、キャラクターに熱を注いでいる。

◆25歳の転機、苦手だった女優道を選択

 アラサー男女の葛藤を描く本作。
2月8日の誕生日で36歳となる佐々木にとって、30代というのはどのような時期だと感じているのだろうか。すると「私が一番つらかったのは25歳くらいの時」と切り出し、「25歳のころにたくさんもがいたので、30代はシンプルに物事を考え、シンプルに生きようと思って。周りの先輩方も『30代は楽しいし、40代はもっと楽しいよ』という方ばかり。私自身も30代は、とても楽しいなと実感しています」と回答。

 2006年に「第2回プリンセスPINKYオーディション」でグランプリを受賞し、17歳で芸能界入りを果たした佐々木。25歳に経験した葛藤は、「忙しくなって、自分の仕事や立ち位置をしっかりと考える時間がないまま、常に目の前に仕事が待ち構えている状況。
“仕事をこなす”という感覚になってしまうのはよくないんじゃないかと悩むようになって、事務所に『一度、立ち止まる時間がほしい』とお願いしました」と、がむしゃらに突き進んできたからこそ、生まれた悩みだ。

 「少し立ち止まって、自分には何が合うんだろうと考えて。そこで私は、一番苦手で、嫌いだったお芝居の道を選んだんです。お芝居についていろいろな意見をいただくこともありましたが、成長するためには、自分が一番苦手だと思うことをやった方がいいと思った」と大きな決断を振り返る。

 「私はきちんと学ぶことがないまま、お芝居を始めてしまったんですね。お仕事をいただいて、『苦手だ、苦手だ』と思いながらもやらなければいけなかった。
一度立ち止まった時に『ちゃんと学ぶ姿勢で臨まないと、お仕事をくれた方にも失礼じゃないか』と思って。最初からそういったことを考えないといけなかったんですけれど…」と照れ笑い。

 「一から学ぶ気持ちで、頑張ろうと思いました。ボイトレに行ってみたり、台本も『これはどういう人なんだろう。どうしてこう言ったんだろう』と役に集中して、深く考えながら読むようになったり。なんでもっと早く勉強を始めなかったんだろうと後悔することもありましたが、勉強することはいろいろなことを知っていくことなので、とても楽しくて。
そういった時期がありながら、今もお芝居を続けさせていただけていることがとてもうれしいです」と前のめりになって向き合うことで、苦手意識のあった芝居を楽しめるようになったと話す。

◆幸せの価値観「幸せの物差しはみんな違うし、誰かに幸せにしてもらうものでもない」

 今は2人の子どもを育てながら、育児と仕事を両立させている。佐々木は「育児はものすごく楽しいです。子どもは本当にかわいいですから。育児って、お芝居と一緒で正解がないもの。だからこそ、楽しいのかなと思います」とにっこり。「でも家に帰ると、なかなか台本を覚えられなくて。台本を読んでいると必ず、子どもが『何をしているの?』とちょっかいを出してくる。あれは絶対、わざとなんです!」と楽しそうに話し、「移動中の車の中が一番、台本を覚えられます。『ここで覚えなければ』と思うと集中できる」とメリハリをつけながら、育児や仕事に励んでいる。

 劇中の登場人物たちは、愛を求め、自分にとっての幸せを見つけようと奮闘していくが、佐々木にとって「幸せに生きるために大事なこと」は、「子どもや仲間、ナチュラルワインなど、愛しているもので自分の周りをいっぱいにすること」だという。

 「自分が愛しているものがそばにあれば、それで幸せです。幸せの物差しはみんな違うし、誰かに幸せにしてもらうものでもないのかなと。誰がなんと言おうと自分が幸せだと思うものを信じていようと、シンプルに考えています。そうすれば自分も楽しいし、愛を忘れられずにいられる」と清々しく微笑む。

 壁を作らない気さくな雰囲気と、輝くような笑顔で胸の内を明かす佐々木に、取材陣も魅了されっぱなしだったこの日。仕事もプライベートも充実していることがひしひしと伝わるオーラにあふれていたが、「私自身、映画やドラマを観て元気をもらうことも多くて。お芝居の仕事をさせていただくことで、もしも誰かの心になにかを届けられたら、これほど幸せなものはないなと思います。そういうことができる役者のお仕事って、すてきだなと改めて感じています」と喜びを噛み締めつつ、「25歳の私に言いたい! 大変なこともあるけれど、その道でいいよ!って」と声を弾ませていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 ドラマ『アイのない恋人たち』は、ABCテレビ・テレビ朝日系にて毎週日曜22時放送。