【関連】『バトル・オブ・ヒロミくん!~The High School SAMURAI BOY~』作品フォトギャラリー
明らかに無理のあるキャラ設定もさることながら、ヒロミのツチノコ探しから始まり、心温まる家族愛にヤクザとの義理・人情、そしてプラトニックラブを通過しての邪教集団とのバトルで大団円を迎えるストーリーは、まさに荒唐無稽。しかしこれが文句なしに面白い。竹内が持つお笑いポテンシャルの高さと、野獣のようなヒロミの見た目や性格を伏線にした展開、個性的なエピソードのさばき方など、演技・演出・脚本が驚異的な化学反応を起こしている。
“ヒロミくん”が生まれたのは2010年のVシネマ『ヒロミくん!全国総番長への道』。その続編となる今回で“ヒロミくん”はスクリーンに進出するのだが、笑いの面ではまさに“倍返し”。赤ちゃんのように半分寝ながら白目を向いてどんぶり飯を食べる竹内の姿は抱腹絶倒。椅子からずり落ちそうになるほどの衝撃度である。竹内は「子供のころから人を笑わせるのが好きなんですよ。監督からは『作品的にはありがたいんですが、力さんの芸能界的な部分は大丈夫でしょうか?』と言われたけれど、お構いなしで今まで出していない部分を出しました。特にあのシーンでは、本物の赤ちゃんに負けたくなかったからね」と並々ならぬ情熱を滲ませる。
ただ今回の役柄を特別視しているわけではない。竹内は「色々な役柄を演じるのが俳優という仕事だから、自分にとっては二枚目も三枚目も、演じるという意味では同じ。
それでも本作で見せるボディアクションを駆使しての笑いは冴え渡っている。ヒロミくんが喫茶店の入り口にある果物を野獣のように口に含んで吐き出しながら相手に迫るという神がかり的行動は、竹内による完全なるアドリブだ。「現場では常に人間観察。色々な役者さんと喋ったり、イタズラを仕掛けたりして反応を探るんです。
演じながらも、全体を把握し、作品から予定調和を追い出していく。「俺の視点は常にカメラの向こう側、つまり観客側にある。アクション場面ではもう1人の自分が空から俯瞰で全体をチェックしていますからね」と客観性を常に同居させているのだ。粗暴ながらも情熱的で、人情に厚いヒロミくん。周囲の人間たちはそんな異質人物に振り回されながらも、その存在に触発される。そんな姿は映画『男はつらいよ』の寅さん、そしてあのNHK連続テレビ小説「あまちゃん」のヒロイン・天野アキにもダブる。
竹内は、演じたヒロミくんについて「ペットみたいに思われて、子供の心を捉えたい。ご両親にも映画を観てもらって、さらにお子さんもファンになる。理想は『クレヨンしんちゃん』。子供たちから『あれやってよ』とか言われたら超嬉しい」と相好を崩す。
映画『バトル・オブ・ヒロミくん!~The High School SAMURAI BOY~』は10月5日よりキネカ大森、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開