1914年の初公演から今日にいたるまで、長きに渡って人気を誇っている宝塚歌劇団。芸能界にも女優の北川景子AKB48渡辺麻友、タレントの西川史子など、宝塚に熱いラブコールを寄せているファンが多く存在している。
そんな宝塚を退団し、人々を魅了するきらびやかな第一線から退いた元タカラジェンヌたちはその後どのような活動をしているのだろうか?意外な道に進み多方面で活動している、和涼華さん(元宙組・星組男役スター)、四方花林さん(元星組娘役・ひなたの花梨)に、それぞれが切り開いたその後の人生について伺った。

【関連】宝塚歌劇<フォトギャラリー>

 四方さんは2012年、音楽学校時代から数えておよそ7年間在籍した宝塚を退団した。現在は、フリーの写真家やアートディレクターとして活動を行っている。退団のきっかけに関して、四方さんは「もともと油絵をやっていて、アートが好きだったんです。宝塚時代、自分が出演しているポスターを見ていて、漠然と『私ならこう撮ってみたい』と思うことがありました。それが、退団して写真をやってみたらどうなのかなと思ったのがきっかけです」と、一念発起した当時を振り返った。

 一方、和さんは2009年に退団後、ヨガインストラクター、アーティフィシャルフラワー講師、ポーセラーツ講師と三足の草鞋を履いている。「『宝塚をやり切った』という達成感が自分の中で大きくなり、退団を決意しました。その後、海の近くに住みビーチヨガをやるようになったのが、ヨガの講師の資格を取ったきっかけです」と振り返った。さらには、「祖母がお花の先生でお花好きが高じてアーティフィシャルフラワーを始め、そして講師仲間の紹介を受け、導かれるようにポーセラーツを学びました」と、何事にも積極的に取り組み、今では講師の座につくまでになった。

 中でも、アーティフィシャルフラワーの仕事では宝塚歌劇団を退団する際に贈られるブーケを制作するなど、今でも宝塚に縁は深い。「退団のお花って、生花で美しいのですが長くもたないし、水分を含んでめちゃくちゃ重くなるんです。
だから、生花をリアルに再現したアーティフィシャルフラワーなら、綺麗なままでもちもよく軽いし、最適なのではと思って始めました」と、実体験を交えて語ってくれた。 四方さんも「自分は演じていたほうなので、撮影のとき、被写体の方に『こう見せたらいいですよ』と最適なポージングを教えることもあります」と、宝塚時代の経験が役立っていると明かす。しかしながら、宝塚という大きな看板がもたらす誤解も過去にはあった。「何も努力しないで写真をやっていると思われて、『元宝塚だからうまくいっているんだよね』と言われることもありました。でも、もっと自分が頑張って上にいければいいので、恥じない作品を作ります」と、ロンドンの美術大学へ留学し、アートディレクションやイラストレーション、デザインをみっちり勉強をしてきた経験を胸に、堂々と前を向いている。

 二人に共通して言えることは、自分の意思が明確で肝が座っていることだ。厳しい世界で努力をし続け、一流の舞台に立った人のみが背負える重責と誇り。彼女たちをまだまだ奮い立たせるものとは、一体何なのだろうか。四方さんは「新しい道に進むのは勇気がいることですけど、成功しても失敗しても、自分が選んだから自分の責任だなと思う覚悟を持ちました。自分で決めることが大切だと思っています」と強い意思をのぞかせる。

 和さんも「私、『宝塚時代が一番楽しかった、良かった』と思い出話にばかり花が咲くような人生は嫌なんです。喜びや、やりがいを持てる人生にしたくて、踏み出しました」と胸を張った。
彼女たちの真っ直ぐなメッセージは、われわれにも明日への一歩を踏み出す力を授けてくれるようだ。(取材・文:赤山恭子)

 四方花林さんプロデュースの展覧会は11月4日から10日まで阪神梅田本店にて開催。和涼華さんへの依頼、注文はダブリュエムW.Mにて受付。
編集部おすすめ