現在放送中のNHK大河ドラマ『真田丸』で、一際強い存在感を示している真田信尹(のぶただ)。草刈正雄演じる真田昌幸の弟にして、堺雅人扮する主人公・真田信繁の叔父にあたり、真田家の調略を一手に引き受ける重要な役柄だ。
そんな信尹を演じるのが俳優・栗原英雄。テレビドラマ初出演ということで、その存在を初めて知る人は多いかもしれないが、「劇団四季」に25年間在籍してたという実力派だ。

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 1984年に「劇団四季」に入団後、数々の舞台で主役を務めるなどキャリアを重ねてきた栗原。劇団退団後は「映像にも興味があり、インディーズの映画に出たりもしていました」と活動内容を語っていたが、2015年に出演したミュージカル『タイタニック』の演技が『真田丸』脚本家の三谷幸喜の目に留まった。「熱い戦国武将の中、クールに世の中を見ている信尹にぴったりだ」と声を掛けてくれたという。

 テレビドラマ初出演、しかも大河ドラマで重要な役割を担う。「大河ドラマはどこかで出演することを目指していた作品だと思うんです。劇団の晩年は、親も高齢であまり舞台を見に来ることができなかったんです。そんな親も、全国放送の大河なら見られると思っていました。父と母はすでに他界してしまったのですが、出演が決まった時と、クランクイン前に報告に行きました」と栗原にとって非常に大きな出来事だったことを明かす。

 「映像の世界のキャリアは少ない」という栗原。ライブの舞台と、シーンごとに収録する映像とでは似て非なる部分も多い。
「舞台は持続力、映像は瞬発力という印象。しっかり相手の芝居をキャッチできるように、映像の仕事の時はより準備を大切にしています。現場に入る時間を逆算して起きる時間や、食事の種類なども考えます」と栗原は語る。さらに「ささやくようなしゃべり方も、(舞台の観客)1000人を相手に発声するのとは違うので、さじ加減は常に意識しています」と技術的な部分でも考え抜いて芝居をしているという。 本作では、堺雅人、大泉洋をはじめ草刈正雄、遠藤憲一高嶋政伸内野聖陽近藤正臣ら個性的かつ実力派俳優たちと対峙するシーンが多い。「みなさんどんな風に演技をするのか、どんなことが得られるのかとても楽しみです」と目を輝かせる。「大泉さんは普段の“大泉洋”を封印している。そのことで長男としての実直さがより伝わる。すごいですね」と舌を巻くと「信繁の愛嬌があってお茶目な部分は、堺さんの人柄が出ている」とほほ笑む。

 また、クランクイン直後に対峙したという遠藤に対しては「目の奥にさまざまなことが流れていて、ストレートに表現される。嘘がない演技をされている」と脱帽した様子。高嶋や内野に対しても、それぞれの技術に裏付けされた表現力に正面から向き合い、食らいついていくという強い気持ちで臨んでいることを明かしてくれた。


 草刈演じる昌幸とは兄弟という間柄だが「感覚的な芝居をされていて、何が飛び出すかわからない」と現場を楽しんでいる。「草刈さんと言えば子供の頃から見ていたバリバリの二枚目の方。私が弟で大丈夫かなと不安だったのですが、三谷さんが『大丈夫です』と言ってくれたので、それを励みに頑張りました」と笑顔を見せる。

 「撮影は毎回勉強」と語った栗原。「細かい部分は違いますが、基本的には舞台、映画、テレビドラマも演じるということは一緒だと思いたい」と強い視線を向けると「役柄にどれだけリアリティを持たせることができるか。水が流れるような芝居がしたい」と理想の形を述べてくれた。(取材・文・写真:磯部正和)

 NHK大河ドラマ『真田丸』は総合テレビにて毎週日曜20時放送。
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