大河ドラマ西郷どん』(NHK総合/毎週日曜20時ほか)は「革命編」に突入し、坂本龍馬(小栗旬)ら維新の礎を築くキーパーソンが続々と登場中だ。中でも川路利良(泉澤祐希)は、西郷吉之助(隆盛/鈴木平)や大久保一蔵(利通/瑛太)に気に入られ、初代警察庁大警視に任じられた人物。
大河ドラマ出演は3作目だが、「がっつりできて、うれしい」と喜びをにじませる泉澤に思いを聞いた。

【写真】泉澤祐希演じる川路利良、銃を構える<4枚>

 薩摩藩士だった川路は、生真面目な仕事ぶりや人柄が西郷に愛され、警察組織を任されるに至った男。「実は僕、川路さんを知らなかったんです」と正直に打ち明けた泉澤は、オファーを受け役を調べるうちに、この人物にすっかり魅了されたようだ。

 「正義感も強いですし、自分の信念をかなり持っている。実際、とても無口な方だったらしいんです。怖そうに見えますが、すごく優しく、人に怒ったことがないらしいとも聞いています」と、丹念に調べた川路像を熱弁する。

 だからこそ、演じるにあたっては「すごく責任感を覚えますし、やり甲斐のある役だなと感じています」とキュッと口を結ぶ。川路らしい立ち居振る舞いについては、「当時は人を斬れるような時代で、厳しい世の中だったと思うんです。目の力の入れ方には注意を払っています。あまり抜けているような芝居はしないように」と、泉澤自身が作り上げた川路に寄り添う。

 7月22日放送の第27回「禁門の変」では、川路が来島又兵衛(長州力)を討ち取る、いわゆる最初の見せ場も出てくる。スナイパーとして腕が立つ川路を演じる上では、銃の取り扱いがポイントになってくる。


 泉澤も、「物語が大きく動くところなので、大事に演じました。ほかの射撃をしている人たちと、ちょっとフォームが違うんです。普通は狙って撃つものですけど、川路は素早く照準を定められる。差別化するために、フォームを相談しつつ撮影していました」と、身振り手振りを交えた。

 史実によれば、本人は身長が180センチ以上あり大柄。一方、泉澤はというと小柄でスリムな体型。演じる上では、肉体的な課題も大きかったと振り返る。

 「周りの皆さんが大きいですし、横にいると僕が子供みたいに見えてしまう。これはあまりよろしくないなと思い、“鍛えたいです”と亮平さんに相談しました。今は一緒に筋トレに連れて行ってもらっているんです」と楽しそうに話した。 「筋トレの時間は、大きなコミュニケーションの場所になっています。亮平さんは、親身に“ここの鍛え方はこうだ”と先生として教えてくださっていますし」。


 体つきが変わると、芝居にも変化が訪れた。「歩き方、構え方、心持ちが変わっていったんです。体に自信を持てると、芝居にも出てくると思いました。自分の体が変化している、そんなうれしみもあるんですけど…」と言いつつ、「まるでナルシストみたいですね(笑)」と苦笑。47kgだった体重が54kgまで増えたと話す顔つきは、精悍だ。

 ところで、川路といえば中村半次郎(桐野利秋/大野拓朗)と意識し合う、ライバル関係のような役どころである。実際、泉澤にとって「ライバル」と思う存在はいるかを問うと、正直な答えが返ってきた。

 「同世代は常にライバルではあるんですけど…一緒に芝居をして、その後仲良くなって分かり合えると、プライベートでごはんに行って芝居について話すこともあります。そういう関係性が持てる友達ができると、自分が成長できる糧になるんです」と言い、具体的に「仲いいのは志尊淳とか、堀井(新太)くんもですね」と愛を込めた。

 インタビュー中、泉澤が大事そうに手にしていたのは、束になっていた紙資料。聞けば、「川路さんのご子孫の方から“資料として読んでみてくれないか”と頂いたんです。本に書いていないこともあったりして、すごく参考になっています。
取材のときに話せればいいかな、とも思って」と、見せて教えてくれた。

 鍛えた体、身に着けた知識、お守り代わりの資料の装備で、川路として躍動する泉澤の出番を楽しみに待ちたい。(取材・文:赤山恭子)

 NHK大河ドラマ『西郷どん』はNHK BSプレミアムにて毎週日曜18時、総合テレビにて20時放送。
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