【写真】イケメンすぎる! “低音イケボ”が話題の津田健次郎、インタビューフォト
■耳心地の良い低音ボイスが、朝ドラ『エール』にぴったり
『エール』は作曲家・古関裕而をモデルに、音楽で人々を励まし、心を照らした夫婦の波乱万丈の人生を描く物語。語りを担当する津田は、1971年生まれの48歳。1995年にアニメ『H2』で声優デビュー。アニメ、吹き替え、ナレーション、ラジオパーソナリティーといった声優業を中心に、舞台など多方面で活躍している。
いじめられっ子で気弱だった少年・裕一が音楽と出合い、才能を開花させていくさまにワクワクとさせられる本作だが、回を追うごとに実感するのが、彼に寄り添う津田の語り(ナレーション)の心地よさ。重みとともに艶のある低音ボイスで、まるでチェロの音色を聴いているかのような味わいがある。音楽がテーマになっているドラマだけに、語りにも“音としての魅力”があるのは大事なポイント。
さらに『エール』制作統括の土屋勝裕氏が「音楽がガンガン鳴っているなかで、視聴者にも聞こえるように語らなくてはならない、一筋縄ではいかない“語り”」と本作の語りの難しさを明かすとともに、「津田健次郎さんは、落ち着いた声で聴きとりやすく、耳に心地よく、何よりうまい」とコメントしているように、低いけれど決してこもることがなく、語りがクリアに聞こえてくることも、老若男女が楽しむ朝ドラには必須だろう。
■弱さを持った主人公に寄り添う、“憂い”と“包容力”を兼ね備えた語り
ナレーションには物語を補足し、進行していく役割があるが、朝ドラにおいては“登場人物のひとり”といっていいほど、視聴者に大きな印象を与える。『ひよっこ』であれば、語りを担当した元オリンピック日本代表の増田明美が、ヒロイン・みね子と一緒にマラソンを走っているかのような応援者となっていたし、『なつぞら』ではヒロイン・なつの亡くなってしまった父親役でもある内村光良が、語りとして彼女の成長を見守った。
『エール』では、自分の気持ちをうまく打ち明けられない裕一が、何度もくじけそうになりながらも周囲に支えられて、自らの道を見つけていく。
■メリハリを生む表現力がすごい!
また第13話では、ドラマにメリハリを生む、語りの表現の豊かさに驚かされた。裕一が家族のために、銀行を経営する茂兵衛(風間杜夫)の元へ養子に出ていくという悲痛な姿がつづられた第13話。父・三郎(唐沢寿明)から養子に出ていくことを求められ、よその家へ出される寂しさと音楽を諦めざるを得ない悔しさから、裕一は涙を流した。「この公演で最後にする」と決めたハーモニカ倶楽部の定期公演で熱く指揮棒をふるい、演奏が終わると、暗い廊下をひとり歩いていく裕一。「ただ時は過ぎていきました」と静かなナレーションが流れ、家族のもとを旅立つ裕一の姿が視聴者の涙を誘う。
観ているこちらも「これからどうなってしまうんだ…」と重たい気持ちになっていたところにガラリと扉をあけて現れたのが、新天地での仲間となった川俣銀行のにぎやかな面々。
陰から陽への変化を鮮やかに表現したナレーションで、改めて“語りにも表情がある”と実感させられた。少々ぼんやりした裕一に時折入れるツッコミも愉快! これからは音(二階堂ふみ)との出会いが、裕一にどのような変化をもたらすのかも気になるところ。実力派声優の語りを堪能しながら、裕一の旅路を見守っていきたい。(文・成田おり枝)