元宝塚歌劇団月組娘役トップで、退団後は『エリザベート』『ファントム』など舞台を中心に活躍する女優の愛希れいか。民放ドラマ初出演となる新春スペシャルドラマ『潜水艦カッペリーニ号の冒険』(フジテレビ系/1月3日21時)では、二宮和也の思い人という大役に挑む。

「驚きしかなくて。私でいいんですか?って何回も聞きました」という今回の抜てきへの思い、宝塚退団から3年が経過した中での変化など、今の気持ちを聞いた。

【写真】愛希れいか、二宮和也との共演に緊張!

初の映像作品でマドンナ役

 本作は、第二次世界大戦中に運命的な出会いを果たすことになる、厳格な日本海軍軍人と陽気なイタリア人たちの国境を越えた友情と恋を実話に基づき描く。主人公の日本海軍少佐・速水洋平を二宮、妹の早季子を有村架純が演じる。愛希は速水が思いを寄せる小学校教師・香苗役を務めた。

――NHK大河ドラマ『青天を衝け』にも井上武子役で出演されていましたが、本作が初めての映像作品への挑戦。お話を聞かれた時はいかがでしたか?

愛希:もうびっくりです。驚きしかなくて、私でいいんですか?って何回も聞きました(笑)。映像のお仕事も機会があれば挑戦してみたいと思っていたので、この作品でご縁を頂けたのがすごくうれしかったです。

台本を拝見すると、とてもコミカルで、イタリアの方と二宮さん演じる速水くんの絡みがとても面白くて! 読み終わった後にあったかい気持ちになって、これを皆さんどういう風に演じられるのかなって楽しみになりました。

――撮影の現場は初めてでした。

愛希:お芝居の基本みたいなところは舞台と変わらないのだろうと思うのですが、カメラで表情を撮られているということに慣れなくて…。
モニターに自分の顔が映っていることに、恥ずかしいしどうしよう…と思ってしまって(苦笑)。外で演技するということが初めてだったので新鮮でしたし、いろいろ試行錯誤しながらやっていたんですけど、皆さんあったかくて、私が慣れずにキョロキョロしていると「こっちのカメラで撮ってます!」とか優しく教えてくださって。最初は緊張でいっぱいだったんですが、終わってみるととても楽しかったなって。

――演じられる香苗の役作りで気を付けられたことはありましたか?

愛希:最初に監督に「香苗はマドンナなので」と言われて、「マドンナかぁ…、どうしよう」って(笑)。マドンナということは常に頭に置きつつ、台本を読んでいると小学校の教師ということもあり、子どもを守らなきゃいけないっていう正義感や、芯が強いしっかりした女性であると読み取れたので、そういうところは意識しましたね。あとは、いつもニコニコとしているイメージがあったので、笑顔にポイントを置いて演じるようにしました。

“世代”の大スター・二宮和也の自然な気遣いに助けられた

――今回、二宮さんから思いを寄せられるという役ですが、二宮さんはどんな方でしたか?

愛希:私は言ってみれば世代で、“A・RA・SHI”とか歌っていたので、その方と共演するなんて信じられない気持ちでいっぱいでした。でも本当に気さくに接してくださって! 撮影の合間に「寒いから」ってストーブを私に向けてくださったり、優しくて気遣いがすごい方です。それも自然に、こちらに気を遣わせないように気を遣ってくださるというか。この私にもフラットにいろいろ接してくださいましたし、映像が初めてだとお話すると、場を和ませてくださって、リラックスして撮影に臨めました。速水というキャラクターも、台本を読んでもすてきだなと思っていたんですけど、二宮さんが演じることによって親しみやすく、本当に憎めない愛らしいキャラクターになっているなと感じました。

有村さんとも控室でお話させていただいたのですが、優しくしていただき、いろいろ教えていただいて…。


――お二人とのエピソードで印象的だったことを教えてください。

愛希:私はもう「おはよう」って言ってもらえるだけで、あいさつしてもらえただけでうれしかったです(笑)。お二方ともとっても温かい雰囲気をお持ちで。兄妹役をされているせいか、似た雰囲気、温かさや柔らかさを感じました。周りを緊張させない大らかさや懐の深さがあって、本当にすてきでうれしかったです。

――2021年の愛希さんは、この作品のほかにも、舞台『泥人魚』でストレートプレイも初挑戦するなど、チャレンジが続いた年でした。

愛希:刺激的な、いろいろと挑戦させてもらった1年でしたね。30歳を迎えて、自分の中でも節目というか、なにか区切りとして、また一段階上がりたいなって思っていたところだったので、こうした挑戦をさせていただけたことがとてもうれしかったし、ありがたかったです。

――30歳を迎えられたことは大きかったですか?

愛希:29歳のころとかは、「あ、30になる。どうしよう」と思ったりもしていました。思い描いていた30歳というのは、こうなんじゃないか、ああなんじゃないかともっともっと理想も高かったんですけど、いざ30になってみたら、“あ、そんなに構えなくていいのかな?”って思えるようになって。舞台でご一緒した宮沢りえさんに「30歳になったんです」ってお話したところ、「いや、30代は一番楽しいよ~」って言ってくださったので、「そっか、楽しまなきゃ!」と思いまして、その言葉を胸にどんどん楽しんでいこうと思っています。


宝塚退団から3年 強くなった「自分自身でしっかり立たなきゃ」という思い

――宝塚を退団されてから3年が経ちましたが、振り返ってみるとどんな3年でしたか?

愛希:早かったように感じますけど、振り返ってみるといろいろあったな、いろいろ経験させてもらったなっていう3年でしたね。そこで学んだことで演じることに対する考え方も変わったところもありますし、コロナもあって自分がエンタテインメントをお届けする側として、いろいろ考え直したり見つめ直したりする時間が多く、濃い3年でした。

――1番大きく変わった部分はどんなところでしょう。

愛希:宝塚では、学校を卒業して、ずっと1年目から先輩方にいろいろ教えていただきながらやってきて、劇団なので、守られていると言ったらいいんですかね…。常に新しい子たちはどんどん入ってきますけど、私は組替えもせずにずっと1年生から月組という組でずっとやってきて、みんな顔見知り、みんな自分のことを知ってくれているという環境で育ったんです。それはすごく幸せなことだけど、そこに甘えてしまっていることもあったと思うんですね。卒業して1人になった時に、寂しさや不安も感じましたが、自分自身でしっかり立たなきゃっていう思いも強くなって。もちろん周りに支えてくださる方はたくさんいらっしゃいますけど、劇団じゃなくなって、組子という人たちが周りにいなくなったという環境の変化はすごく大きかったし、自分の中でも意識的にしっかりしなきゃっていう気持ちが強くなりました。

宝塚の時はずっとプライベートというものがあるのかないのかという状況で、それがいいところでもあったんですけど、今は本名の自分を見つめ直したりする時間を取るようになったし、しっかりオンオフを取ることによってリフレッシュできることや発見がすごくあるかなと思います。

――そんな中、今プライベートで楽しみにしていることはありますか?

愛希:車ですね! 車はずっと好きだったんですけど、時間がなくて免許を取れなかったので、卒業してから取りました。車に乗っていると、お家とはまた違う1人になれる空間でリラックスできます。運転が好きなんです(笑)。


――今回のドラマでは、「食べて歌って恋をして」というイタリア人の姿も描かれますが、恋愛面の充実はいかがでしょう。

愛希:先輩方にも「女優は恋をした方がいいよ!」って言われるので、出会いがあれば大切にしたいと思います。

――厳格な日本男児で、恋に奥手でなかなか気持ちを伝えてくれない速水少佐みたいな男性は愛希さん的には…?

愛希:すごくすてきだなと思います。でもきっと女性だったら、思いを伝えてほしくて、もどかしいだろうなって(笑)。いつ伝えてくれるかな?って思いながら待つのは大変ですよね。香苗だから待てたんだと思います。

――本作のようなハートフルな作品で幕を開ける2022年は幸先がよさそうですね。

愛希:ここ数年、コロナで舞台が中止になってしまったりということが続いたので、そうした陰な空気は吹き飛ばして、明るくいきたいなって思います。皆さんにお会いできる機会が増えるといいなと思いますし、地方の方々にも楽しんでいただける映像でスタートを切れることもうれしいです。自分をワクワクさせられるように、そして皆さんもそうできるように、頑張りたいなって思っています。(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 新春スペシャルドラマ『潜水艦カッペリーニ号の冒険』は、フジテレビ系にて1月3日21時放送。

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