8月に開催されるコミックマーケット90を前に、また定番の問題が浮上してきた。

 コミケ会場で頒布されるエロ紙袋をめぐる問題である。



 コミケでは企業やサークルがさまざまな紙袋を頒布するのが恒例。それを問題視する声は、繰り返しネットで話題になっている。2012年には、夏コミ開催前日に「コミケ会場へ行く駅の地元民」を自称する人物がTwitterで苦情とも取れる意見を公開。これは7,000件を超えるリツイートを集めて話題となった。

 コミケで頒布される紙袋の中には、水着姿など大胆な絵柄のキャラクターが描かれているものもあるのは事実だ。そうした紙袋を持って会場から自宅までを歩く姿には、オタクであっても拒否反応を示す人もいる。


 再び、エロ紙袋問題が議論されるようになった、7月下旬のTwitterでは「エロ本開いて子供や女性に見せ歩いてるみたいなもんだから」「普通AVとか買ったら目立たない袋に入れるものだしな」という意見も存在する。

 ただ、最近のコミケで頒布される紙袋を見ると、絵柄が過激化の一途を辿っているというわけでもない。むしろ控えめな傾向になっているという意見もある。つまり、何がエロ紙袋なのか曖昧なまま、さまざまな意見が飛び出ているのが現状だ。

 中には2010年の東京都青少年健全育成条例改定問題の発端のひとつに、コミケのエロ紙袋の問題があったという意見も。もちろん、これはデマである。
当時の議論の中で、規制強化を進めた東京都からも、コミケのエロ紙袋に関する言及は一切なされていない。

 明らかなのは、一定水準以上に二次元に慣れ親しみ、水着のキャラ絵を当たり前のものとしているのは、限られたコミケ参加者だけということである。コミケを「なんかテレビでも報道しているマンガのお祭り」程度にしか認識していない人にしてみれば、やっぱり「キモイ」と見られるのは仕方がない。それは絵柄が水着ではなく健全なものだとしても仕方がない。

 なぜなら、街角で見られるコミケ帰りの紙袋は、それを持っている人と共に認識されるわけだ。頒布されるでっかい紙袋を肩からかけた自分の姿を想像してみれば、自ずと答えは出てくるだろう。


 まず、コミケは無数の人が押し寄せる非人道的なレベルの地獄である。冬コミが大叫喚地獄だとして、夏コミは灼熱が加わるので、大焦熱地獄といったところ。そんな空間に、朝も早くから出かけ、目当ての同人誌やグッズを手に入れて疲労困憊になった帰り道。疲労と共に、早く家に帰って同人誌を読みたいとか、グッズを愛でたいという欲望に心はあふれている。そんなテンションで、紙袋を下げていれば……紙袋がエロくなくても、ちょっとヤバイ人に見えるのは間違いない。少なくとも自分は、そう思われている自覚はある。


 やっぱり何かしら、ポーズだけでも配慮したほうがいいのは間違いないだろう。今回のコミックマーケット90では、同人誌印刷の共信印刷が「雨・埃・人の<視線>から紙袋を保護する」という真っ黒な「紳士袋」を頒布することを告知している。

 これによって、ある程度は配慮できるけど。妙なテンションを、ぐっと抑えないとやっぱりキモさは消えないよな。

 筆者も気をつけようと、思った。
(文=ルポライター/昼間たかし http://t-hiruma.jp/)