韓国で、信じられない詐欺事件が起きた。高校時代の同級生を18年間も奴隷のようにこき使い、多額の金銭をだまし取っていたというものだ。


 
 8月5日、韓国警察は詐欺の疑いでクォン容疑者(女性、44歳)を逮捕した。1998年7月から今年6月まで、高校時代の同級生であるキムさん(女性、44歳)に対し詐欺を働き、計2,389回、総額にして約8,000万円をだまし取った容疑だ。

 共通の友人を通じて知り合ったクォン容疑者とキムさんだったが、当時、クォン容疑者は「交通事故でけがをした友人の治療費」「金融業者への借金の返済」などの名目で、キムさんから約70万円をだまし取ったとされる。これが、2人の悪縁の始まりだった。自分を信じて疑わないキムさんに対し、クォン容疑者はより大がかりな詐欺を働き始める。

 クォン容疑者はその後、キムさんに「運気が悪い」とマインドコントロール。
韓国には、先祖をまつる祭祀(チェサ)という行事があるのだが、キムさんの運気が良くなるよう、「自分が祭祀をやってあげる」と持ちかけた。不思議なことに、キムさんはその言葉を信じて疑わなかった。そして、クォン容疑者が要求する“祭祀代”を貢ぎ続けたのだ。高校卒業後、キムさんは家族と共に日本で暮らすことになったが、それでも2人の悪縁は途切れなかった。キムさんは、アルバイトして稼いだ金を、数年間にわたりクォン容疑者に送金し続けた。

 キムさん一家が韓国に帰国した後、クォン容疑者のマインドコントロールは、さらにエスカレートする。
まず、より多額の金をだまし取るために「家族といると殺し合いが起きる」と説き伏せ、ひとり暮らしを始めさせ、その後、風俗店で働くように仕向けた。キムさんは毎日のように客と性行為をし、稼いだ金をクォン容疑者に渡した。

 挙げ句の果てに、クォン容疑者は「性行為の動画が流出した」「それを削除するために大金が必要」などと、キムさんを脅迫。精神的に追い詰められたキムさんから、さらに金を巻き上げ続けたという。並行して、前述した祭祀詐欺も続いていた。クォン容疑者は「祭祀に食べ物が必要」と話し、海苔巻やキムチなどを届けさせるなど、まるでパシリのようにキムさんをこき使った。


 ただ、この一連の詐欺事件にも終止符が打たれる時が来た。クォン容疑者は「借金のために刑務所に入れられた」「出所して返済するために、お金が必要」と、またしてもキムさんをだまそうとしたが、キムさんは、クォン容疑者が実際には刑務所に収監されていないことを突き止め、警察に通報。18年間続いた詐欺が、ようやく警察の知るところとなった。なお、前述の8,000万円は、警察が確認できた金額。キムさん自身は1億2,000~1億3000万円ほどの金銭を奪い取られたと主張している。なお、クォン容疑者はキムさんからだまし取った金を、高級マンションの購入費や、海外旅行の代金に充てていたという。


 クォン容疑者の外道ぶりもさることならが、客観的に見ると、そこまでだまされて気づかないキムさんの精神状態はとても理解しがたい。いったい、2人の間にどのような支配関係があったのだろうか?

 ちなみに、運気向上や祭祀をかたった詐欺は、韓国では珍しくない。一部、日本においても同じ手口で詐欺を働く、韓国系集団がいるという情報もある。決して他人事ではないかもしれないというのが、この事件の怖さのひとつでもある。
(文=河鐘基)