昨年、事前にマスコミに情報が漏らされた不可解な逮捕騒動の末、不起訴となった歌手・ASKAだが、11月下旬の逮捕時、尿検査を求められた際に「お茶にすり替えた」と証言したことに、日本中が驚かされた。

 容疑を否認した上で、ASKAは「あらかじめ用意したお茶を、尿の代わりに採尿カップに入れた」と話したのだが、これに作家の影野臣直氏が「私の原作漫画を読んで参考にしたのかもしれない」と話している。



 アウトローや犯罪事情などにも精通する同氏は、昨年11月発売の漫画本『実録!体験談刑務所の中「住めば都」と化す底なし沼』(コアマガジン)の中で、お茶と尿をすり替える話を描いていたからだ。

 この作品はオウム真理教の教祖、麻原彰晃の妻である松本知子がオウム事件で懲役6年の実刑判決を受け、2002年10月まで和歌山刑務所にいた際、所内で遭遇したという女性(覚せい剤取締法違反で当時収監中)の証言をコミック化したもので、取材した影野氏が原作を書いた。

 話の中で女性は尿検査を求められた際、コンドームに入れて隠し持っていたお茶とすり替えたとしている。

 逮捕時や刑務所内でのエピソードを明かした同社のシリーズは、元犯罪者にも愛読者が多いことで知られ、影野氏は「ひょっとしたら、ASKAさんはこれを読んでいたのかな」と話す。

「警察はASKAさんに対して“逮捕ありき”で動いていたように見え、おそらく『連行すれば、どうせ覚せい剤が検出されるだろう』と安易に思い込んでいたのでしょうが、逆に逮捕される側は、グレーでもクロにされてしまう恐怖感から、たとえ潔白でも尿をすり替えるということはあるんです。ただ、ASKAさんが証言通り、本当にスポイトを用意してすり替えたなら、かなり手慣れた人のやること。
私の漫画を読んで思いついたのでなければ、ほかの薬物犯罪者から情報を仕入れていたのかもしれない。尿検査を逃れる手口なんて、普通は逮捕経験者にでも聞かないと思いつかないですし、何かまだ奥に知られざる真相がある気がします。こういう薬物捜査の捜査段階のミスは、実は珍しくなくて、逮捕されて不起訴になったことがある岡崎聡子や小向美奈子も似たようなケースだったと思われます」(同)

 漫画内の話では、女性が出所後も売人たちから覚せい剤を売られそうになる場面があり、日常生活でも危ない誘いから逃げにくい現実もしっかり描かれてはいるのだが、影野氏は「もしASKAさんが私の漫画を読んでいたなら、今後は逆に危なくて、こういう話は描きにくいですね。まるで検査を逃れる方法を教え、犯罪者への指南書を作っていると誤解されてしまいそうですから」とも語っている。

 ASKAの逮捕騒動では、不可解な警察の捜査姿勢に対する不信感が巻き起こり、その情報だけをうのみにして必要以上のバッシングを仕掛けたテレビなどのメディアにも批判が集まったが、アウトローの世界では密かに「ASKAがなぜ、尿のすり替えなんていう一般人には考1えつかないようなことをやってのけたのか」に注目が集まっているようだ。

 そのあたり、近いうちに出版予定といわれるASKAの著書で明らかになるのかもしれないが……。

(文=ハイセーヤスダ/NEWSIDER Tokyo)