米マサチューセッツ内科外科学会が発行する医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に3月28日に掲載された報告書によると、インドの首都ニューデリー近郊にある大学病院に、18歳の男性が運ばれてきた。男性はてんかんを起こし、その後、意識を失ったという。



 家族の話によると、男性は数週間前から股間の痛みを訴えており、医師による初期診察では、男性の右目が腫れ、右の睾丸にも異常が認められた。

 そこでMRI検査を行ったところ、脳の至るところに無数の嚢胞(のうほう)が見つかった。写真を見ると、米粒のような白い影が頭部全体にびっしりと写っているのが素人目にもわかる。

 男性は神経嚢虫症とみられ、豚肉に寄生するサナダムシなどの寄生虫の幼虫が、脳の神経系統に侵入し、てんかんを起こしたものと診断された。

 豚肉の寄生虫は、肉に十分火を通せば死滅するが、生食したり、よく火が通っていないまま食べると、E型肝炎や食中毒を引き起こす危険性がある。

 サナダムシ以外にも、有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)、旋毛虫といった、名前を聞いただけで気味が悪い寄生虫に感染する恐れもあり、日本では食品衛生法により、豚肉や豚の内臓を生食用として販売・提供することは禁止されている。


 病院の医師団は、嚢胞の炎症を悪化させる可能性がある抗寄生虫薬の投与はやめ、一般的にはアレルギーや関節炎、皮膚角化疾患の治療に使われるステロイド系抗炎症薬の使用を決定。さらに、抗てんかん薬も投与された。

 しかし、治療のかいなく、男性は数週間後に死亡した。

 日本でも2016年に千葉県の男性が禁止されている豚肉の生レバーを食べてサナダムシに感染する事件があったが、こういった危険性もあることは十分知っておく必要があるだろう。