公式サイトより

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、放送開始が大幅に遅れた日曜劇場『半沢直樹』(TBS系)がいよいよスタートした。人気作家・池井戸潤の小説を原作に、2013年にドラマ化された際には視聴率40%を超えるメガヒットを打ち出した人気作の続編とあり、ツイッター上ではタイトルがトレンド入りするほどの大盛り上がりを見せた。

テレビ局関係者の話。

「2020年のTBS肝入りドラマというだけあって、初回放送は関係者もみな緊張していたといいます。まあ、すごかったのは放送の合間に流れるCMの多くが堺雅人さん出演のものだったこと。ドラマとCMの境がわからなくなるくらい(笑)。日曜劇場の枠はいまや下手したらNHK朝ドラ大河ドラマより視聴率がハネますから、スポンサーの期待度も違う。終盤には『倍返しだ!』の名ゼリフも飛び出し、SNS上も盛り上がりましたから、視聴率にも期待できそう」

 主演の堺雅人の熱演は健在だったが、特に話題をかっさらったのは2020年版からの参加となる市川猿之助の怪演だ。

舞台となる東京中央銀行本部証券営業部の部長・伊佐山役として、ドラマ前半のヒール役を務める市川は、第1話から憎たらしいほどに主人公・半沢の敵として立ちふさがった。

 さらに市川は13年版から引き続き半沢の大敵として君臨する香川照之演じる大和田とも因縁がある役回りで、ドラマ中は市川と香川のギラギラとした表情が何度もアップで映し出され、さながら“顔芸合戦”の様相を呈していた。

 視聴者からは「猿之助さんと香川さんが同じ顔に見えてきた」「伊佐山と大和田そっくり」といった声も上がっていたが、放送作家はこの2人の競演に「さすが肉親なだけあった」と拍手を送る。

「放送を見ながら『よ! 澤瀉屋!』って叫んじゃいましたよ。実際に猿之助さんと香川さん(市川中車)はいとこ同士で、市川家(屋号:澤瀉屋)を支える2人です。とはいえ、これまでそんなに似てるとは思ってなかったんですが、今回両名の顔芸がソックリで驚きました。

さらに、尾上松也さんも出てましたし、今後はお待ちかね片岡愛之助さんの出番もある。これだけ歌舞伎役者が揃っていたら、もはや『半沢歌舞伎』って感じですね(笑)」

『半沢』の顔芸は歌舞伎の「見得(みえ)」に通ずる

『半沢直樹』香川照之と市川猿之助の“狂演”に「よ!澤瀉屋!」池井戸作品、歌舞伎化のワケ
伊佐山部長もとい市川猿之助の見得(Getty Imagesより)

 確かに、今回の『半沢』はやたらと歌舞伎役者が多いように感じる。これに対し、前出のテレビ局関係者は「日曜劇場×池井戸潤のタッグに歌舞伎役者は必須なんです」と語る。

「13年版の『半沢』では、女性的な喋り方をする金融庁検査局主任検査官・黒崎役を演じた片岡愛之助さんが大当たりした。当時、愛之助さんの怪演は原作者の池井戸さんにも大ウケで、原作執筆にも影響を与えたんだとか。これがきっかけで、日曜劇場の池井戸作品には歌舞伎役者が必須となったそうです」(前出・テレビ局関係者)

 振り返ってみれば、14年『ルーズヴェルト・ゲーム』では香川照之と坂東三津五郎、15年と18年の『下町ロケット』は中村歌昇・尾上菊之助、17年『陸王』は市川右團次、19年『ノーサイド・ゲーム』は市川右近・中村芝翫と、日曜劇場の池井戸作品には必ず歌舞伎役者が登用されてきたことがわかる。

「日曜劇場の池井戸作品は、ここぞという場面では顔面のドアップを映して表情の芝居をより際立たせる演出が多いんですよね。これは、歌舞伎の『見得(みえ)』に通ずるなと感じます。見得というのは、感情の高まりを表現するためのポーズですからどんぴしゃです。堺雅人さんの『倍返しだ!』のシーンなんか、歌舞伎的にいえば大見得ですよね。日頃から舞台で見得を切ってる歌舞伎役者と池井戸作品の相性がいいのも頷けます」(前出・放送作家)

 今後の『半沢直樹』でも、くせ者揃いの歌舞伎役者たちが芝居で大暴れする予感。来週以降も市川と香川の“狂演”に期待したい。