坂口健太郎と杏がダブル主演を務めるフジテレビ系月9ドラマ『競争の番人』の第7話が8月22日に放送された。公正取引委員会にスポットを当てた本ドラマは、公正取引委員会・第六審査(通称「ダイロク」)の審査官たちが主役だが、第7話は坂口演じる小勝負勉の出番が合計で3分もないという少なさに驚いた視聴者も多かったようだ。
終盤直前を迎え、視聴者の心をガッツリ掴んできたいこの時期に、ダブル主演の一方の出番がほぼなく、さらに公正で自由な競争の実現のために動く彼らが、法ではなく、情に訴えて案件を解決するというパターンが続いているのも残念に感じた。
「調査対象者に肩入れ」「情に訴え、自白を導く」パターンふたたび
第7話は今まで小勝負とバディを組んで調査をしていた白熊楓(杏)が一人で案件を担当するという「独り立ち」のストーリーとなった。ダイロクのキャップ・風見慎一(大倉孝二)から任されたのは、大手通販サイト「三ツ星マーケット」のオリジナルファッションブランド「アンカレント」の再販売価格維持についての調査。三ツ星マーケットは、アンカレントの商品について「値引き販売は許可していない」とし、守れない場合は取引の停止をちらつかせていたのだ。
アンカレントを販売している通販サイトを複数回ってみると、割引キャンペーンを行った会社宛てに、三ツ星マーケットブランド事業部長の黒崎美佐子(雛形あきこ)の名義で値引き販売は規約違反になると伝えるメールが届いていたことを掴む。順調に証拠が揃い、三ツ星マーケットの立ち入り検査を実施することに。三ツ星マーケット社長の山辺純次(姜暢雄)、そして美佐子は素直に事実を認め、調査にも協力的で、二度とこのようなことをしないと是正を約束したため、悪質ではないとの判断で立ち入り検査は途中で打ち切ることになった。
順調に解決……というところに、ファッションブランド「ワンソーイング」の館山留美(夏子)がやってくる。以前、三ツ星マーケットの不正を明らかにしてほしいと白熊たちに訴えていた人物だった。販売不振に悩んでいた留美は、三ツ星マーケットが人気商品ランキングを操作している疑いがあるといい、白熊に調査してほしいと相談しに来たのだ。
証拠がない上に、デジタル分野の案件は公取でもほとんど前例がないため、人気商品ランキング操作の調査については渋る風見。一方、三ツ星マーケット側が再販売価格維持をあっさり認めたのは、ほかに後ろめたいことがあるのではと疑う白熊は、他のアパレルメーカーを回り、他社も三ツ星マーケットの人気商品ランキングに疑いの目を向けていることを知る。また、美佐子のもとを訪れ、アンカレントが三ツ星マーケットの傘下に入った経緯を尋ねるが、白熊がまだ嗅ぎ回っていることを知った三ツ星マーケット側は、これ以上の調査を続ければ事実無根の調査により損害を被ったとして国家賠償を請求するとの抗議書をダイロクに送りつけ、上から調査にストップがかかることに。
それでも諦めず、風見を説得して調査とブツ読みに励む白熊。そこに公取委DFT(デジタル解析チーム)の紺野守里(石川萌香)が、三ツ星マーケットがアンカレントに対する口コミページで低評価コメントのみ非表示にしていると教える。それでも、問題視されるべき明確な証拠は一切ない。だが、白熊はこれまでの調査結果を資料にまとめ、美佐子を聴取させてほしいと風見に頼む。
白熊は、調査から得られた推論を美沙子に話す。アンカレントの売り上げは近年伸び悩んでおり、明らかにアンカレントより売れている競合ブランドがあるのに、三ツ星マーケットの人気商品ランキングでは絶対に上位に入らないこと。非表示になっている低評価コメントでは、アンカレントが三ツ星マーケットの傘下になったタイミングから、トレンドに左右されない唯一無二のデザインではなくなった、クオリティが下がったといった意見が相次いでいること。そしてデザイナーである美佐子自身が、三ツ星マーケットの傘下に入る以前のアンカレントの服を着ていること。「これがあなたが目指していたことですか?」「なぜ今の商品を着ないんですか? それはあなた自身、今作っているものに納得していないからじゃないですか?」と訴える白熊。
そして最後に、社長の山辺が三ツ星マーケット傘下に入るよう声をかける1カ月前に、すでに大量製品化のために縫製工場と契約を結んでいた事実を突きつけ、「山部社長は最初からあなたを利用するつもりでした」と白熊は伝える。コストなどを理由に美佐子のやりたいデザインをまったく通そうとしない山辺は、三ツ星マーケット傘下入りを説得する際は「これまでどおり作りたい服を作ればいい」と説得していたが、これが口先だけだったことに美佐子は内心で気づいていた。そこに白熊は、アンカレントに憧れて自分のブランドを始めた女性(留美)が、いいものを作っているのに売れ行きが悪く、夢やぶれて撤退してしまったことを告げると、ついに美佐子はランキング操作について「証言」をするのだった。
“刑事白熊”物語と化した第7話
第7話も前回に続いて1話完結で、迷いながらも成長する白熊と、それを見守る風見の懐の深さを描く展開自体は悪くはなかった。しかし、決定的な証拠を掴むことはできず、相手の情に訴えて”自白”を促す解決法は、昔の人情刑事ドラマのワンシーンを彷彿とさせた。元刑事の白熊が美佐子を尾行し、中目黒の古着屋で以前のアンカレントの服を買う現場を目撃するというあたりは、完全に刑事ものか探偵ものだった。
そもそも白熊は、調査対象者に肩入れしてしまう癖を小勝負にたびたび注意されており、今回も「本当に反省してた」という理由で立ち入り検査を途中で中止したことを責められ、結果その指摘どおり、立ち入り検査を続けなかったことで商品ランキングの不正操作の証拠を掴むのに苦労したのだ。情で解決するパターンが続いていることに、視聴者からは「2話ほど情に訴える路線が続いちゃって残念」「公取らしさがなくて感情論だけ」という批判も多い。今回の白熊の“落とし方”は小勝負っぽいと言われていたが、せっかくの“白熊回”であれば、もっと白熊らしい解決の仕方もあったのではないだろうか。
“白熊回”がゆえに、小勝負ら他のダイロクのメンバーの登場シーンが少なめになるのはある程度仕方ないが、主役の一人である小勝負の出番の少なさは、さすがに少々残念だった。なにせ一度に1分以上映ったシーンがなく、数秒から数十秒のシーンが8回あっただけである(提供バック含む)。そのうち、しっかりと喋る場面は2回だけ(回想のぞく)で、合計しても2分にも満たない。ネットでは、「鎌倉のほうの仕事が忙しいのかな」といった声も上がっていたが、『競争の番人』は今年1月~5月に撮影していたとされており、確かに放送の半年前に撮っているという『鎌倉殿の13人』後半戦の撮影と重なってスケジュールが厳しかったのかもしれない。いずれにせよ、箸休め的なこの第7話は面白かったかと問われれば、素直に頷けないものがあった。
「半年後」となった番組終盤の展開からして、次はいよいよ小勝負の過去と、以前から存在感を放っている国土交通省の事務次官・藤堂清正(小日向文世)との関わりが明らかになるようだ。
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■番組情報
月9ドラマ『競争の番人』
フジテレビ系毎週月曜21時~
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、小日向文世、黒羽麻璃央、大西礼芳、石川萌香、寺島しのぶ ほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
音楽:やまだ豊
主題歌:idom「GLOW」
プロデュース:野田悠介
演出:相沢秀幸、森脇智延
制作・著作:フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/index.html