『相席食堂』(ABCテレビ)公式Twitter()より

玉袋筋太郎――“筋兄ぃ”は千鳥・大悟の兄貴分

 10月11日放送の『相席食堂』(ABCテレビ)、関西ローカルでなければ間違いなくアウトだったであろう、最高の内容だった。

 まず、人選が信用できる。今回の旅人は2人。1人目は玉袋筋太郎だ。同番組MCの千鳥とは過去に福岡で酒を酌み交わしたことがあり、大悟から「筋兄ぃ」と慕われる東京芸人である。

「(飲みの)翌朝、空港で筋兄ぃがベッロベロで。2リットルくらいの水を持って、ワシに『大ちゃん、これで肝臓洗うのよ』って(笑)。筋兄ぃ、あれから私、水で肝臓洗わせてもらってます」(大悟)

 そんな“関東代表の呑み師”が、ついに『相席食堂』に降臨だ。しかも、ロケ地はまさかの東京都中野区である。同番組が都内でロケを敢行するのもめずらしいし、中野は完全に玉袋のホームグラウンドだ。ロケ史上、自宅から最も近い場所を選んだ芸能人なのでは? 案の定、玉袋が最初に立ち寄ったのは彼の行きつけの店「第二力酒蔵」だった。

 彼がレギュラーを務める『町中華で飲ろうぜ』(BS‐TBS)を見ている人にはおなじみだが、玉袋の一口目はやはりサッポロ赤星の瓶ビールである。

「(喉を上下にさすりながら)まずは、定番の気道確保して。(コップに注いだビールを一気に飲み干して)あ゛ーーーっ、(気道が)洗浄されましたよ」(玉袋)

「カレーは飲み物」という言葉があるが、彼にとって「ビールは吸うもの」か? この気道確保を2度繰り返し、直後にいきなり日本酒を飲み干した玉袋。のっけから飛ばしている。『町中華で~』以上に、今回は玉袋筋太郎三昧だ。

 そして案の定、いきなり目が赤くなった玉袋。

ノブ 「なに、この目!? トライアスロン完走後やん」

大悟 「ビールをクッといくと涙出るやん。あれが好きなんよ」

早くもベロベロになった玉袋の顔がスゴい。ロケが始まって4分しか経っていないのに、オープニングとは別人の顔なのだ。

ノブ 「何をくぐり抜けたら、あんな顔になるの(笑)」

大悟 「だって相方さん(水道橋博士)、今や議員さんでしょ? 議員の相方、見てよこれ(笑)」

 酒場で飲んで、食べて、酔っ払う。どちらかというと、今回のロケは『町中華~』よりも『吉田類の酒場放浪記』(BS‐TBS)に内容が近い気がする。

「今日が最終回?」と心配になる納言・薄幸の下ネタ連発

 
 2人目の旅人は、納言の薄幸であった。こちらは、関東を代表する女呑み師だ。スゴい顔ぶれである。玉袋筋太郎vs薄幸の泥酔対決。酔っ払いは見てるだけで面白いし、今回の『相席食堂』は見ているだけの我々も飲みたくなってくる。

 いや、酒だけじゃない。この日、幸がロケに訪れたのは大阪府・堂山町だった。同地のゲイバーにお邪魔した幸は、店の空気に乗り、いつしか矢継ぎ早に下ネタを放出するテンションに達していた。

 千鳥でいえば、断然“大悟派”の幸。しかし、かつて1度だけノブと飲んだことがあるらしい。そのときのエピソードが強烈なのだ。

「ノブさんとは1回しか飲んだことないですけれど、9割9部下ネタで、1割が薄い笑いの話だったんで。(中略)私、ノブさんがどういうオナニーするか知ってるんです。聞いたんです、その飲み会のときに。まず全裸になって、ソファに仰向けで寝そべって、ティッシュを(お腹の)上に敷いて、シコるっていう」(幸)

 彼女の発言を書き起こしているだけで、こちらが恥ずかしくなってきた。地上波で「シコる」というイヤなワードを耳にする機会は、もう今後ないと思う。

 さらに、ハシゴ酒で次のバーに向かった幸は、2軒目の店へ着くなりこんなカミングアウトをし始める始末だ。

店員 「ご結婚してないんですか?」

幸 「してないですよー。そういうスケベなこと、何もなく。スケベしたい。すごいスケベしたいです。もう、4~5年くらい何もしてなくて。ハッハッハ! やっぱり、付き合ってる人としかしたくないんで」

「今日が最終回なのか?」と心配になるほど、ど下ネタばかりである。それでいて、不意に乙女の顔を出してくるから気が抜けない。

 3軒目のバーで飲む幸は、もっとひどいのだ。

「(千鳥の2人が)ちんぽデカいかどうかで考えたことなかったですけど、どっちだと思います?」(幸)

 先輩芸人の性器のデカさ談義で盛り上がる幸。この宴は、地上波で放送OKなのだろうか? 爽やかに下品な回だ。

『町中華で~』でもおなじみ「氷抜き緑茶ハイ」を飲み、1軒目ですでに赤ら顔の玉袋。視線がおぼつかない彼にスタッフは報告する。

――今回はもう1組、飲むロケに行っていて。納言の幸さんなんですけど。面識あります?

玉袋 「無え。そいつ、強えのか?」

ノブ 「急にルフィ! なんで? あんな飲兵衛が急にルフィやん!」

大悟 「いや、もはやルフィよ(笑)」

 急にルフィみたいなことを言い出し、『ワンピース』の世界観に千鳥足で踏み入った玉袋。酔っ払いつつも相手の強さを気にし、なぜか好戦的なところはトコトン男の子だ。

 実は、衝撃の事実がある。『相席食堂』放送後の10月12日、幸がこんなツイートを発信しているのだ。

 自らがゴッドファーザーなのに、名前を授けた“子”、幸の存在を覚えていなかった玉袋。とぼけているのか、忘れているのか、それとも本当に知らなかったのか? 実は、件の命名企画では、「肉便器実子」「ビーチクロイクー」「ライオネス&飛鳥」といったひどい候補も挙がっていただけに、仄かに麗しさ漂う「薄幸」を提案した玉袋は、今振り返るとグッジョブだと思う。

 2軒目の居酒屋に向かう玉袋。その道中、彼はこの町で起きた血生臭いエピソードを明かしてくれた。

 20代の頃、同じ「関東高田組」の構成員である江頭2:50とよくつるんでいた玉袋。ある日、2人は“怖いお兄さん”に絡まれてしまったそうだ。そのチンピラは外に置いてあったビール瓶を叩き割り、その刃先を玉袋に向けてきた。しかし、江頭が制止して男の持つビール瓶をはたき落とし、危機から脱することに成功する。

「したら、そいつがまたビール瓶を持って、江頭の頭をバコーンって叩き割ったわけよ。抑えてたエガちゃんの、そっからの、パパパって動き。(道路を指して)そいつに対して、ここがアキレス腱固めを極めた場所ですよ。ここでアキレス腱固めを極めて、そいつからタップを取ったんだから。『ごめん、ごめん、ごめん!』って。ハッハッハ!」(玉袋)

 千鳥の2人が、すっかり引いてしまっている。

大悟 「ただの事件現場やん(笑)。江頭さん、頭ビール瓶で割られてるやん。その後に締め上げたんだ」

ノブ 「ニュースになってないだけで、全然事件ですよこれは(苦笑)。(大悟に)筋兄ぃとは(酒を飲みに)行くなよ?」

大悟 「(苦笑)」

 酔っ払いからの暴力に屈せず、頭を割られながら、中野の路上でアキレス腱固めでタップアウトを奪っていた江頭。さすがの超人エピソードだが、明かされた思い出ががっつり事件だったため、怖くて笑うに笑えない。やはり、むちゃくちゃな時代だったのだ。

 2軒目の居酒屋に到着した玉袋は、タバコを咥え、不意に一点を凝視した。その顔の渋みは常軌を逸しており、昭和の映画スターにしか見えない。

「『龍が如く』のパッケージなんよ(笑)。なんで、映画スターになってないん?」(ノブ)

 もはや、日常生活が映画スターの玉袋。次第に、『町中華で~』でも見せない顔つきになってきた。そろそろ、この人はもう飲んだらダメなのでは?

 そのタイミングで玉袋がオーダーしたのは、ポテトサラダだ。割れた半熟卵も乗っかっており、かなりおいしそうだ。この逸品メニューを前にソースを取った玉袋は、「食べる前に(ソースを)かけるか、食べてからかけるか」で延々悩み続けた。

玉袋 「かけるのか、かけねえのか? これ、CMまたぎだよ」

大悟 「またげるか!」

玉袋 「どっちだよ、これ? Do Judge! う~ん……」

ノブ 「早よかけ、酔っぱらいが! 何しとんねん、このジジイ!!」

大悟 「これが、筋兄ぃの芸やないかい。“ソースかける、かけん芸”」

 結局は、ソースをかけずに“生”(き)でポテサラを食べた玉袋。その後に向かった3軒目は、玉袋行きつけのスナックである。この店のママは、玉袋について理解しているようだ。

ママ 「うちのお客さんは、“玉ちゃん大好き”いっぱいいるよ。でも、玉ちゃんは苦手じゃん。プライベートで飲んでて『俺、番組見てます!』って言われたら、“酔いスイッチ”から“まともスイッチ”に入るじゃん」

玉袋 「俺は、心としてね……まあ、ミッキーマウスにはなれねえんだろうね」

ノブ 「なれるか!」

大悟 「いやいや、筋兄ぃは“中野のミッキーマウス”ですよ(笑)」

ノブ 「人を楽しませる者の中で真逆やん!」

 こう見ると『町中華で~』での玉袋は、酔いをだいぶ抑え気味にしているのがわかる。普段のロケの玉袋と今回の玉袋は、だいぶ雰囲気が違うのだ。酔い方を含め、各番組でタガの外し方を微妙に変えているプロ。つまり、今回は『町中華で~』以上の黒帯パワーが堪能できる良回だと言える。いわば、「玉袋筋太郎の酒場放浪記(マッドマックス)」といったところか?

 そんなこんなで、かれこれ7時間飲み続けた玉袋のロケは終了。いつの間にやら、彼は2リットルのペットボトルを片手に携えていた。

玉袋 「大変ですよ、内臓が。(ペットボトルの水をラッパ飲みした後)いいですか? 肝臓は……水で洗うんですよ!」

ノブ 「出た、名言出た! ふわぁ~、聞けた(笑)!!」

「肝臓は水で洗うんですよ」by 玉袋筋太郎

 酒呑み界屈指の名言で、千鳥のオープニングトークの伏線をしっかり回収した玉袋。本当に、これは彼の口癖なのだろう。やはり、最高の飲兵衛だ。しかも、『町中華で~』では見たことのない玉袋を見れた。やはり、玉袋筋太郎自身がブルース。つくづく、こんなふうに楽しく飲み歩けるおじさんになりたい。

 千鳥からは「相席スターが現れた」「シリーズ化してもいいんじゃないか」という声が出たほど、傑作ロケだった。玉袋が通常運転でも千鳥のツッコミがあると普段以上に面白く感じられるし、不作続きだった今年の『相席食堂』の中、間違いなく1番面白いロケだったと思う。

 そもそも、玉袋の人間性は同番組と相性がいい。千原せいじ回や松崎しげる回など、旅人が泥酔する回では爆発しがちな『相席食堂』。だからこそ、「これだよ、これ!」という感想を抱けたのだ。

 地上波でこれだけ「酒」「タバコ」「下ネタ」が登場する無秩序さも、関西ローカルだから許されるレベルだ。玉袋も幸も、ノーブレーキで楽しそうに飲む姿は気持ちよかった。いつか2人を地方の飲み屋で相席させ、飲み屋巡りをさせても面白い気がする。

 あと、今回の『相席食堂』を見ていると、こちらも無性に飲みに行きたくなるのだ。だから、視聴者の側もベロベロに飲みながら視聴するのがオススメ。そうすれば、“相席居酒屋感”が半端ではない。