なにわ男子3rdシングル「ハッピーサプライズ」

 こんにちは。じゅりっこダンス部と申します。

小さい頃から踊ることが大好きで、5歳からダンスを続けてきました。現在はインストラクター、振付師として活動しながら、YouTubeでダンス解説&レッスン動画を公開しています。

 そんな私ですが、久しぶりにダンス動画を見て、「お~」って声が出ちゃいました。

 これまで私は、なにわ男子といえば「初心LOVE(うぶらぶ)」のイメージで、正直ダンスにはそこまで注目していなかったんです。彼らの魅力の多くはダンススキル以外の部分にあるのだという印象でした……この記事を書くまでは。

 実は、なにわ男子って、パフォーマンスを見て思わず声が漏れ出るくらい、驚きと魅力の詰まったグループなんです。

ぜひ、私と同じ感動を味わってほしい! すでに彼らの虜になっている人も、これからの人にも、よくわかるように彼らのダンスをじっくりと解説していきます。

 ラインナップは、デビューシングル「初心LOVE(うぶらぶ)」、2ndシングル「The Answer」、そして最新シングル「ハッピーサプライズ」の3曲でお届けします。

「初心LOVE」大橋和也くんはHIPHOP系ダンスが得意!?

 

 最初に解説するのは、なにわ男子の言わずと知れたデビューシングル「初心LOVE」(2021年11月12日)です。この曲は、難易度だけでいえば易しく、みんなで真似できそうなシンプルな振り付け……ですが、実は見せ方が難しいんです。

 簡単なダンスは単調になりがちで、見ている人が飽きやすいパフォーマンスになってしまうことがあります。さらに、振り数が少なくてシンプルなほど粗が目立つので、一つひとつの動きを丁寧に踊る必要があります。

それでも、なにわ男子のメンバーはうまく踊りこなしていました。

 じっくり見ていきます! さっそくサビから、【0:12】で一時停止してみてください。開始早々、大橋和也くんのスキルの高さが出ていますね。左肩を後ろに引くと同時にしっかり下げているので、角度が深くて立体的なポーズを作れています。ダンスが上手な人って、体の使い方を理解しているので、ポーズの作り方がいつも綺麗なんです。

【0:23】では、長尾謙杜くんが目線を上に飛ばすことで手の広がりをより広く表現できていますね。

長尾くんは踊るときの動作が大きいメンバーです。他の場面でも動きが大きい瞬間がたくさん出てくるので、チェックしていきましょう。

【0:59~1:05「自分ばっかりで もうバカみたいだ」は道枝駿佑くんソロパートですが、表情作りが上手! 道枝くんはまゆげを動かしたり、目線を外したり、ソロで顔をアップで抜かれたときにばっちり仕事しています。ダンスは体だけでなく、表情のコントロールも同じくらい大切です。

 続いて、サビを見ていきましょう。【1:19】「シュンとなって キュンとなって」のときの西畑大吾くんのグーが、手首から少し外に折れているのがわかりますか? これだけで可愛い印象がぐっとアップするので、真似して踊るときは意識してみてください。

写真を取るときのポーズにも使えます!

【1:22】「初心(うぶ)だね」は、カメラに抜かれている大西流星くん、高橋恭平くん、西畑くんがそれぞれ別の方向を向いていて、手の位置もバラバラなのに、なぜか一体感があります。これは3人が左肩を下げてポーズを作ることで、体全体の動きを統一しているため。各々が個性を出しながらも統一感を出せるというのは、グループとして素晴らしい技術ですね。

 その直後、【1:23】の、両手を右に伸ばした瞬間で一時停止してください。大橋くんだけ、後方に傾いたような体勢になっていて、体の使い方が他のメンバーと少し違うのが見えるかと思います。こうした体の使い方が自然に出るということは、大橋くん、実は力強いHIPHOP系のダンスが得意なのかなという印象を受けました(少し戻って【1:11】のしゃがんでいる部分でも、大橋くんは膝をやや広げていて、HIPHOPらしい動きになっています)。

 続いて【1:28】「OMG OMG 恋は暇じゃないさ」でも、大橋くんに注目してください。両手を上に広げながら後ろへ下がる際、下半身がブレずに上半身を動かすことができています。これは「アイソレーション」といって、体の一部分だけを動かすテクニックです。無駄な力を抜いてスムーズに動けるのは、ダンス上級者の証し!

 さらに、リズム感も抜群です。【1:32~1:33】大橋くんの左足の動きをよ~く見てください(スローの方が見やすいかもしれません)。ここでは“ワン・ツー・スリー……”で足踏みをして“フォー”で左足を後ろに上げるのが基本の振り付けですが、大橋くんは“スリー”と“フォー”の間で左足を前に振り上げ、「間(ま)」まで音を取っています。

 これは「エンカウント」もしくは「裏の音」と呼ばれているもので、リズム感の良いダンサーが取ることのできる音。“ワン・ツー・スリー・フォー”と表の音で手拍子をするのは簡単ですが、“ワン・ツー・スリー・“and”・フォー”と裏の音まで取るのは、けっこう難しいですよね。これを自然に体現できるのが大橋くんです。

 次は【1:33】「La la la lattta,」で止めて、間奏で横一列に並んだメンバーのみんなを見比べてみてください。個性が光っています。大西くんと西畑くんは比較的、胴体が平面に見えませんか? 左右の腰と肩の4点で、歪みのないきれいな長方形を作ることで、あどけなさやピュアな印象を与えることができます。逆にこなれた感じを出したいなら、他のメンバーみたいに少し角度をつけてあげるとよいでしょう。

【1:35】で指を差すポーズでは、長尾くんだけ明らかに違いますね。メインの振り付けは右手と顔の向きですが、よりポーズにハマるために左肩を下げて、右腰を前に出しています。長尾くんは、振り付けにはないプラスαの動きが自然にできてしまうセンスの持ち主なのかもと感じます。

【1:39】、カメラが引いていくシーンで一時停止してみると、藤原丈一郎くんの右足が一番高く上がっています。大きくはっきりと、振り付けに忠実にきっちり踊るタイプで、真面目でまっすぐな熱い男という印象を受けました。

 2番Bメロの【2:08】「眠れない夜泳いで 君の好きな曲リピートしてた」は、一瞬しか映ってないから見逃さないで! ここの大橋くんの「ウェーブ」がめちゃくちゃかっこいいんです。すぐにシーンが切り替わって続きが見えないのがすごくもったいない……!

 ちなみに「ウェーブ」とは、波打つように体を動かすテクニックのこと。このシーンでは頭を固定して、胸と胴だけでウェーブを通していますが、これがかなり難しいんです。一瞬しか見えないけど、大橋くんのダンススキルの高さがはっきりと垣間見える部分です。

 そして2番サビの【2:24】「シュンとなって キュンとなって」でも、大橋くんを見てください。肘の高さが高めで、他のメンバーと違っていますね。このポーズの作り方は、やっぱりHIPHOP系のゴリゴリかっこいいダンスを得意とするタイプなんじゃないかと推理します。逆に可愛く見せたいなら、他のメンバーみたいに肘の高さは低めで、脇をぎゅっと締めるといいと思います。

 Cメロ【2:36】は大西くんのソロパートから入りますが、ここで私は西畑くんの印象が変わりました。可愛く踊るタイプだと思っていたのに、ステップが深くてかっこいい! これは「チャールストン」というステップで、つま先をしっかり外側に向けてガニ股になるのがポイントですが、とても上手に踏めています。

「初心LOVE」をじっくり研究して改めて感じたのは、ダンスの魅力は振り付けの難易度だけでは語れないということ。最近のアイドルグループはダンススキルのインフレが進んでおり、倍速なのかと見紛えるほどの超高速&高難易度のダンスが多いです。興奮や勢いがある半面、圧迫感や息苦しさがあることも否めません。でも、なにわ男子のパフォーマンスはとても心穏やかに、ハッピーに楽しむことができました。笑顔が素敵でキラキラしているダンスを見ると、自然と元気をもらえますね!

 なにわ男子は「初心LOVE」のイメージが強かったので、2nd「 The Answer」(2022年4月27日リリース)の強烈なギャップにやられました。曲によって表現をバチっと切り替えていて、みんな人が変わったみたい。ダンス自体はこの曲が一番見どころが多いと思うので、細かくチェックしていきましょう!

【0:13】、イントロでメンバーが歩いて立ち位置につくシーン。あれ? これ、西畑くんだよね……? 「初心LOVE」のときとは別人みたいなオーラ。顎が上がっていてあえて猫背で歩く感じで、力の抜けた哀愁漂う雰囲気が良く伝わってきます。表情も口角を下げることでより雰囲気を際立たせています。お見事!

「初心LOVE」の解説で、長尾くんは動きが大きいメンバーだと書いたのですが、【0:18】手を内から振り上げる瞬間を一時停止してよく見てください。しっかり手のほうを見上げていて、宙に浮くくらい体もダイナミックに動かしています。

【0:21】広げた両手を内回しで下ろすシーンは、西畑くんの手が最後まで残っているのが印象的。音をよく聞いて最後まで使い切れている証拠です。たったこれだけの違いでも、グッと目を引くダンスを踊ることができますね。

【0:37】~【0:40】「孤独に怯えないで」のところは、スローじゃないほうが見やすいかも。大橋くんを見てください。動きの前に若干ブレを作っているのがわかりますか? これは意図的な動きで、「ノリ(グルーヴ)」を見せるテクニックです。強い体幹と優れたリズム感、そして音にノれる心の余裕がないと見せられない動き。これは大橋くんが得意なテクニックのようで、他のシーンにも出てきます。

 道枝くんはグループで一番身長が高いメンバーで、179cmあります。それなのに、【0:43】~【0:44】「全部打ち明けて」では、他のメンバーと同じ高さまで頭の位置を下げているがわかりますね。けっこうキツい体勢だと思いますが、こうしたちょっとした工夫があるからこそ、なにわ男子はグループとしてまとまりを演出できるんです。

【0:48】~【0:50】「埋める悲劇のreason」のところ、西畑くんの右足の動き、一般の方は真似しないでください! 右ひざを内側に入れる動きですが、ひざも足首もかなり内側まで入っています。しっかりと踊れる体作りができているからこそ可能な動きなので、柔軟トレーニングしていない方が真似すると、捻挫する恐れがあります。

【0:55】「拾い集めて“count”」、右腕を顔の前に持ってくる部分、藤原くんだけ手の平が上を向いています。一つひとつの動きが自分らしく見えるよう研究するタイプに見えました。努力したという自信を感じますね。

【1:00】の振り付けは、「Ray of light in my “in my”」で一度、右腕を左側に振ってから「eyes」で正面にポーズを決めます。「“in my”」の溜め動作のときに一時停止してもらうと、ここでも長尾くんの動きが人一倍大きいのがわかると思います。他のメンバーの右肘が左手首に触れる程度なのに対し、長尾くんは肘同士がくっつくほど上体をひねっていますね。こうして「準備動作」を深く大きくすることで、振り付けを大きく踊ることができます。

いよいよサビに入ります。ちょっと見づらいんですが【1:07】「君が叫ぶ強い想いが」で、後ろにいる高橋くんの見せ方が上手だなと感じました。手の平が外向きで顔の近くにあることで、小顔でスタイルがいい高橋くんの長所を存分に活かせています。パワーで魅せるタイプのダンスじゃないけど、とても見栄えの良いダンスだと思います。

メンバーの中で一番身長が低い大西くん、【1:10】「求める」では、つま先立ちになっています。そのあと「ミステリーラブ」の部分では他のメンバーより若干深くなるよう膝を曲げていますね。縦軸の動きを大きくすることで、体が大きくなくてもダンスに迫力を出すことができています。

【1:19】「あきらめはしな“い”」、“ジャン、ジャン、ジャン、ジャン”と4つ音を取る部分。振り付けは、腕を右、左、正面、上と動かせばOKですが、大橋くんの膝をよく見てください。手のアクセントより先に膝が動いているのが見えますか? どこをプラスで動かしたら見栄えがいいか完璧に理解していて、実際にその通りに体を動かすスキルがあるということです。そのあと【1:23】あたりまでの部分も上級者です。【0:37】でも解説したブレのテクニックを使っていて、音の取り方が上手!

【1:35】「物語の先へ」では、道枝くんの手の平にちょっとした工夫が。一時停止してみると、上げた手の平が正面を向いていますね。このあとグーになるので、最初にパーでシルエットを大きく見せておいたほうが、差が大きく見えてGood!

「初心LOVE」にはない魅力がたくさん詰まった曲でしたね! メンバーそれぞれが自分の個性を理解していて、それを活かす場面もあれば、他のメンバーと馴染むように補って踊る場面もあって、グループ全体としてよりよく見えるように努力しているのを感じました。

 最後は、3rd「ハッピーサプライズ」(2022年11月16日リリース)を見ていきます。「初心LOVE」でも笑顔だったけど、よりポップな感じですね。“お口チャック”ダンスのシーンは個性が出まくっているので要チェック!

 道枝くん、デビュー時に比べてダンスがうまくなった! イントロの【0:15】で一時停止してください。人一倍、体のひねりが深く見えます。まっすぐストレートに踊る印象の道枝くんでしたが、ここにきて一気に深みが増しています。右手がスッと前に伸びていて、高い身長を活かした美しいポーズですね。

 【0:21】~【0:23】「ありがとうって君は笑った」。西畑くん、すごい演技力です。目の前で語りかけられているかのような演技でドキドキします。

 【0:31】「去年よりも早めの雪」は、スローにしないで再生してみてください。向かって左奥からぴょこっと出てくる大橋くん、お顔はキュートなのにしっかりステップを踏んでいて、スキルの高さが見えます。スキルは高いけど自慢げにしないで届けてくれるから、素直にすごいなって思えます。

 サビに入ります。【1:09】「君に贈ろう 見合ってほらスマイル」。先の2曲でもそうでしたが、大橋くんは先に腰が移動して、時間差で上半身が追いつく動きですね。ブレを出すのが上手!

 【1:28】「目“を”」の部分、右肩に背負っている“OKマーク”を左に振る瞬間で、一時停止してください。西畑くん、大橋くん、長尾くんの3人は、他のメンバーより動き出すタイミングが遅いのが見えますか? これは「遅どり」というスキルで、リズム感が優れている証拠。音をよく聞くことができているので、落ち着いて動き出すタイミングを計れているんです。

 【1:38】きました、“お口チャック”ダンス! ここは各メンバー個性が出ているので、スローにして何度でも見返してほしい部分です。大西くんは王道、まっすぐ閉めるタイプ。藤原くんは大きめのチャックをがっちり閉めるタイプ。高橋くんはお値段高めの服についてるような質の良いチャックを丁寧に閉めるタイプ。西畑くんは短めのチャックをキュッと閉めるタイプ。道枝くんはナナメに閉め上げるタイプ。大橋くんは両側から閉めるダブルチャック。長尾くんはカーブしていて閉めづらいチャック。真似して踊るときは要チェックですね。このときの手は、指ハートをつくるのがポイントみたいです!

 次は、【2:31】「Oh Happy Winter Snowflake」まで飛んでください。【2:34】「青く光った」まで見てみると、大橋くんがすごく楽しそうに見えますよね! これは大橋くんがアップのリズムを取り続けてくれていることが理由です。頭の位置が上下することで、飛び跳ねているようなハッピーさが伝わりますね。

 【2:39】「何年先だって」は一時停止で見てください。大西くんが、かなり深くナナメのポーズになっています。腹筋・背筋が強くないと取れないポーズですね。

 【3:37】、ここは振り付けがあるというよりも、フリースタイルなパートでしょうか。自由って、とっても難しいです。正解がないから何をしたらいいかわからないし、ワンパターンになりがち。でもなにわ男子のみんなは、ちゃんと自由に動いて個性を表現してくれています。個性って、普段から自分でよく考えたり、実践したりしていなければ出せないものだと思うので、全員が日々研究してすごく努力しているのだと感じました。

 

 決められた振り付けは全員で揃うように協力して踊りこなし、フリーな部分では自由に自己表現をしてくれる。どちらの魅力も楽しめるのが、なにわ男子の強みでした。こんなに「お~!」ってなって、ハッピーにさせてくれるダンスを踊りこなせるグループって、実はなかなかありません。

 これからも、なにわ男子のダンスに注目! どんな個性を見せてくれるのか楽しみです。

 

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日刊サイゾー2022.11.13


じゅりっこダンス部(じゅりっこ・だんすぶ)

なにわ男子の“見たらハッピー”キラキラダンス、実は激ムズなポイントを現役振付師が徹底解説!
1996年4月5日生まれ。埼玉県出身。ダンス歴はJAZZ20年、クラシックバレエ15年、HIPHOP7年、その他多くのジャンルを習得したオールジャンルダンサー。現在は主にインストラクター、振付師として活動中。YouTubeではK-POPをはじめとする人気曲の振付解説動画を公開しており、登録者数は15万人を超える。TWICEのバックダンサー、米津玄師のMV出演等の経歴を持つ。
YouTube   :「じゅりっこダンス部」
Instagram:(@juri_co_dance