ドラマ公式サイトより

 TBS系金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』が6月23日、ついに最終話を迎えた。祈りと救い、未来への希望を乗せて終着駅に到着。

ゴールデンプライム帯初主演となった山田裕貴の熱演には、毎回心を熱くさせられた。

 2023年春、乗っていた電車が突如車両ごと未来にワープ。そこは2026年12月に隕石の衝突によって大災害が起き、荒廃した2060年の日本だった。乗客たちは懸命に生きながら、なんとかワームホールによる“帰還”の可能性に賭けるが、ワープした先は2023年の春ではなく2026年の5月。そして戻ってからは、SNS社会に翻弄され、地球に災厄が降りかかるまであと半年ほどという状況で「どう生きるか」を迫られることに。

 そんななか、最終章の幕が開ける。

2026年に戻ってきた乗客たちは「2023年に突如車両とともに姿を消し、3年後に突如姿を見せた乗客」として好奇の目に晒され、しかも「12月9日に世界が滅亡すると唱えている人たち」として配信者や週刊誌などの格好のネタにされてしまう。消防士の白浜優斗(赤楚衛二)は火災現場に野次馬が集まり、注意を聞かない配信者が肩を組んでくるのを振り払おうとして「罪のない一般人を突き飛ばした」と騒がれてしまい、「あんな騒ぎが起こるようじゃ当分現場は無理だ」と休職を提示される。萱島直哉(山田裕貴)はワームホールとの接触から利き手に力が入らなくなり、美容師ながらハサミがまともに持てなくなり、店を去ろうとする。これまでは悲観的な直哉を優斗が引っ張っていく関係性だったが、第9話ラストではついに優斗の心も折れ、「もう……終わればいい。こんな世界、もう終わればいい」と直哉にこぼすのだった。

 絶望に包まれる中、ある日、電車に乗った直哉は偶然、乗客の仲間だった米澤大地(藤原丈一郎なにわ男子)と車内で出会う。

米澤はそのまま乗客が集合する加藤祥大(井之脇海)の家に直哉を連れていく。彼らはなんとか大災害を回避できないかと動いていた。乗客たちの失踪にはオカルト団体の関与があったのではないかと報じられるなど、世間からの目は疑いの色が濃くなるばかりだったが、米澤は世界の危機と、みんなで協力し合うことの大切さを訴える動画を公開。米澤のゲーム仲間で、SNSフォロワー数240万超えの「きんぐP」がシェアしてくれたことで、動画は一気に拡散され、世間からの見方も少しずつ変化していく。さらに、加藤が2060年から持ち帰った植物の測定結果などの「証拠」も集まり、ついに政府も動き出すことに。対応は政府に任せるしかない乗客たちは、来たる日まで「どう生きるか」をそれぞれ考えることになる。

 優斗は先輩隊員・高倉康太(前田公輝)らの励ましを受け、前向きさを取り戻していく。畑野紗枝(上白石萌歌)のはからいで優斗と語り合った直哉も店に戻り、ハサミは相変わらず握れないが自分なりのやり方で働き始める。そんななか、2060年の未来で恋人の江口和真(日向亘)との子を妊娠していたことが発覚していた佐藤小春(片岡凜)がついに出産した。来たる日まで残り1カ月というタイミングで誕生した、乗客たちが守った未来への希望の命。立花弘子(大西礼芳)らは「私たちの赤ちゃん」と号泣する。和真や、外に集まった他の乗客たちから、2060年の世界でリーダーシップをとっていた優斗に感謝の言葉が改めて語られ、優斗はふたたび「ヒーロー」に。

 そして政府が隕石の軌道を逸らすためのロケットを12月に打ち上げることが決まる。経営者の寺崎佳代子(松雪泰子)は知り合いのツテで防災インフラの整ったスイスに避難できると乗客たちに知らせる。「最後まで誰かを助ける」と決意した優斗は、避難せずに残ることを直哉に伝える。そして、ついにロケットが打ち上げられた。紗枝は直哉に乗客全員で避難すると連絡。そして「萱島さんも来て下さい」と誘い、「待ち合わせはあのホーム。

8時23分、明日」と待ち合わせ場所と時刻を伝えるのだった。

 しかし直哉は翌朝、弟・達哉(池田優斗)に「先に空港行ってろ」と伝え、別行動を取る。紗枝は、優斗も直哉も待ち合わせ場所に来ていないことを知らされる。そこに直哉から電話が。直哉は「終わる前に言っておく。あの電車の中であなたを知って、まあ衝撃でしたよ。

この世にこんなしょうもないポヤポヤバカが存在していたなんて。一生忘れられない。忘れたくない」と一方的に伝え、「ごめん、俺行くとこあるから」と居場所も伝えずに切ってしまう。しかし紗枝は直哉を探しに走り、地下鉄のホームで直哉を発見。紗枝は「私も終わる前に言っておきます。「ずっと祈ってました。萱島さんにとって、ここが少しでも居心地のいい場所になりますようにって。生きたいって思える場所に」と自分の気持ちを伝える。直哉はそっと紗枝を抱きしめ、「おかげで居心地よくなったよ。今は」と答える。ようやく二人の想いが通じ合った瞬間であり、「命が助かっても、救われないんだよ」「俺はもうあんたのことなんか忘れた。あの車両のことも、未来どうのこうのも、もうどうでもいい」と嘆いていた直哉が救われた瞬間でもあった。

 そして直哉は、優斗が高齢女性を救助する現場に向かう。「どうしてここに!?」と驚く優斗に、直哉は「助けに来た。お前を。誰かを助けるだの、救うだの、責任感じてヒーローやってるお前を助けに来たんだよ」と告げる。優斗は「何やってんだよ! 早く行けよ! なんでここに……なんで来たんだよ! 俺は萱島さんに助かってほしかった……」とやりきれない思いをぶつけるが、「ホントはずっと、助けられてきたんだよ」「助けられてきたんだよ、何度も何度も。溺れてた俺を引っ張り上げてくれた。命じゃない。ここを、救ってくれたんだよ」と自分の胸を指さし、「お前みたいなやつがいるから、この世界も悪くない。だから一緒に行こう。生きよう! 何があっても」と優斗にまっすぐな言葉をぶつける。直哉は「こっからどうなるか、まだわかんないけど。やれるだけ、やってみるか」と語り掛け、優斗は「やれるだけ、やってみよう」と答える。二人は肩を組んで歩き出した――。

 本作は、第1話から第8話までを「未来編」、第9話と最終話を「現代編」として、2部構成になっていた。水も食料も乏しく、携帯の電波もない極限下を生き抜く2060年の「未来編」では、生き延びることをテーマに乗客たちの人間模様を描いた。そこで生まれた絆とともに元の世界に戻る”ハッピーエンド”の物語になるかと思われたが、ストーリーは「現代編」に続き、戻った先は元いた世界の3年後。しかも、水も食料も電波もあり余る現代は、誰もがスマホの小さな画面の中に心を揺れ動かされる世界で、乗客たちは2060年以上の絶望の壁にぶちあたる。

 しかし避難のために集まる12月4日朝、新聞記者や動画配信者らに囲まれ、世界滅亡論についてあれこれ勝手に言葉を投げつけられると、直哉は「誰と話をしてんの!?」と訴え、「その目で、耳で、体で、その奥を見ろよ! 知りたかったら直接聞けよ!」「俺はあいつらと会って、ぶつかって、心のシャッター壊されて、世界変わったんだよ! 助けられて今ここにいんだよ!」と、“未来で学んだこと”を切実に叫んでいた。SNSで憶測やフェイクニュースが飛び交い、リアルのつながりが希薄な現代社会の課題を指摘するこの直哉の叫びこそが、本作がもっとも伝えたかったことなのかもしれない。

 対照的に見えて、実は似た者同士の直哉と優斗。劇中、何度か登場した直哉の「会えてよかった」という言葉は、回を重ねるごとに想いが深くなってゆく。変わったのは直哉だけではない。優斗もまた、直哉の手によって行き場のない責任感の強さという呪縛から救われたのだ。回によってはリーダーシップをとる優斗のほうが主人公に見えるときもあったが、最終話での山田裕貴の熱演は、やはり直哉こそが主人公なのだという説得力に満ち溢れていた。

 地球が救われたかどうかははっきりとは描かれなかったが、ラストシーン直前に電話を受けた物理学教授・蓮見涼平(間宮祥太朗)の少しホットした表情や、直哉と優斗が歩き出した先の空にかかっていた虹から、バッドエンドを推察するのは野暮だろう。乗客たちの明るい未来を想像しながら、終電後の後味を楽しみたい。

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日刊サイゾー2023.06.02

■番組情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と
TBS系毎週金曜22時~
出演:山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、池田優斗、宮崎秋人、大西礼芳、村田秀亮とろサーモン)、金澤美穂、志田彩良白石隼也、濱津隆之、坪倉由幸(我が家)、山口紗弥加、前田公輝、杉本哲太、松雪泰子 ほか
脚本:金子ありさ
音楽:大間々昂
主題歌:Official髭男dism「TATTOO」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:tbs.co.jp/p_train823_tbs