関西テレビ放送 カンテレ『トクメイ!警視庁特別会計係』公式サイト

 橋本環奈が主演するフジテレビドラマ『トクメイ!警視庁特別会計係』が16日にスタートし、初回視聴率は世帯平均6.3%、個人平均3.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で低調なスタートとなった。配信でもあまり振るわず、SNSではあまり他の作品では見ない「なぜか分からないが面白くない」という不評が目立っており、早くも今後の見通しが厳しそうな状況となっている。

 『トクメイ!』は、捜査の「お金」にスポットを当てた新感覚の警察ドラマ。本庁から経費削減の特命を背負って派遣された、橋本演じる特別会計係の一円(はじめ・まどか)が、経費にルーズな所轄署の刑事たちとぶつかりながらも事件を解決へ導いていくというストーリー。主演を務める橋本のほか、沢村一樹松本まりか、前田拳太郎、佐藤二朗ら実力と人気を兼ね備えたキャストが集結している。

 オープニング映像では『SPEC』シリーズ(TBS系)や『踊る大捜査線』シリーズ(フジテレビ系)、『あぶない刑事』シリーズ(日本テレビ系)など、局をまたいだ往年の刑事ドラマのパロディが盛り込まれ、いきなりのぶっ飛び具合に視聴者の期待は高まった。しかし、ドラマ本編は思ったほどコメディに振り切っておらず、終盤で警察官の不正を意図的にリークする“脅迫者X”の存在が明かされ、主人公が不穏な様子を見せるなどシリアス要素も強く、コメディかシリアスか、どちら寄りかハッキリしないまま第1話が終了した。

 コメディかシリアスか判然としないドラマは不評となる傾向が強いが、今作は同じ不評でもあまりふつうは見かけない意見が目立っている。

ネット上で「キャストも設定もストーリーも悪くないのになぜか面白くなかった」「どこが悪いとは言えないんだけど、次は見ないかな」「設定や橋本環奈の演技はいいと思うし、沢村一樹や佐藤二朗も面白い。松本まりかもいい。なのに、なぜかつまらない」といった声が多く上がっているのだ。

 まだ第1話が放送されただけなので伸びしろはあると信じたいが、ある意味で「どこが悪いのか分からないけど面白くない」というのは一番やっかいで軌道修正のしようがない。配信でもあまり視聴者の支持を集められていないようで、TVerのお気に入り数は20日時点で43万件ほど。お気に入り数で今期トップとなっているフジテレビ系『いちばんすきな花』の約90万件の半分以下で、初回が平均世帯視聴率5.7%の大苦戦となったTBS系『マイ・セカンド・アオハル』の約50万件よりも少ない。

ネット上で早くも「脱落」報告が相次いでいることもあって、今後の見通しは厳しいとの意見が強まっているようだ。

 橋本はアイドル女優的なイメージが強いが、上白石萌音とダブルキャストで主演した舞台『千と千尋の神隠し』が絶賛されるなど演技力も十分に高く、映画でも数々のヒット作に出演。いわゆる「きれいどころ」の枠に収まらず、変顔や身体を張ったギャグシーンなどもこなせる演技の幅の広さが大きな魅力だ。

 だがテレビドラマとなると、意外にも主演クラスで代表作と呼べるようなものはない。今作と同じ警察モノで2017年に放送された『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)では連ドラ初ヒロインを務めたが、全話平均世帯視聴率は6.5%とあまり振るわなかった。今年4月期には、TBS系で地上波連ドラ初主演となったドラマ『王様に捧ぐ薬指』が放送され、相手役がHey! Say! JUMPの山田涼介ということもあって前評判は高かったが、全話平均視聴率は7.0%と微妙な結果だった。

 もし今作もコケてしまったら、橋本は「ドラマが当たらない」というイメージになってしまいかねない。そうなると心配になるのが、主演が決定している2024年後期のNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』だ。

 先述したように橋本は演技力に定評があり、朝ドラヒロインとして申し分のない人気と実力がある。さらに『おむすび』は、NHK『正直不動産』や日本テレビ系『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』などのヒット作を多数手がけている根本ノンジ氏が脚本を担当するため、ストーリーも期待できる。

 しかし、橋本に「主演ドラマが当たらない」というジンクスが生まれると成功が危ぶまれそうだ。さらに、今作は栄養士を目指す「平成ギャル」が主人公だと発表されているが、朝ドラには「特定のモデルのいない現代モノはハズレが多い」というジンクスがある。

橋本は昨年末に出演したNHK『紅白歌合戦』での司会ぶりが好評で、今年も2年連続の司会が決定しており、その上で朝ドラまでヒットすれば文句なしの「国民的女優」となるだろう。だが、もし朝ドラが「大コケ」といったことになればキャリアに傷がつきかねない。

 そうした事態を避けるためにも、まずは『トクメイ!』の巻き返しに期待したい。