中年オジサンたちの溜まり場のイメージが根強い「スナック」。しかし、近頃は1人でスナックを訪れる「スナック女子」が増えているという。

お酒を飲むならほかにもいろいろな店があるのに、昭和の香り漂うスナックの何が女性たちを引きつけるのか? 「東洋経済オンライン」でスナックの魅力を広めるコラム『今夜もスナックが呼んでいる』を連載している、スナックライターの五十嵐真由子氏に聞いた。

■女性の新たなコミュニケーションの場

 これまでは一般的な女性が足を運ぶ場所とは言い難い「スナック」だったが、2016年ごろから「Hanako」(マガジンハウス)、「OZmagazine」(スターツ出版)などの女性誌がスナック特集を大々的に組み始めたことをきっかけに、各地のスナックで徐々に女性客が増えてきていると五十嵐氏は指摘する。

「今年の2月に熊本県のイベントの一環として、全日本スナック連盟会長の玉袋筋太郎さんと女性限定のスナック講座を開いたところ、予想以上に応募者が殺到しました。参加者も20~30代の比較的若い世代の人から50代の方もいて、幅広い年齢層がスナックに興味を持ち始めていると感じています」

 また、五十嵐氏によれば、スナック女子が増えている背景には、メディア効果のほかに、社会的背景も影響しているという。

「ここ数年は働き方改革が進み、残業が許されず定時に帰らされるケースが増えているせいか、会社帰りに同僚と飲むなどの、社内コミュニケーションが減っています。30代から40代で役職に就いている女性の場合は特に、部下と気軽に情報交換することに戸惑ったり、自分の弱い面をさらけ出すことに抵抗があったりするので、気軽に飲みにいけない。
そこでスナックがひとつのコミュニティの場となってくるのです」

 スナックには、親と同じくらいの年齢のママやマスター、常連のお客さんがいて、近況報告や悩み事など、どんな話も聞いてくれる。そんな自分を解放できる場所、居心地のいい場所がスナックにあるということに女性たちが気づき始めたらしい。



 新たなコミュニケーションの場として、女性から人気を集めている「スナック」。しかし、ママの高齢化や採算が合わないなどの理由で店を閉めるケースも増えていて、年々全国で約1万店が淘汰されている。とはいえ、入れ替わるように若い女性の参入も増えつつあるという。

「スナックは居抜きでも始められますし、調理場もいらないので、比較的コストをかけずに開店することができます。
お酒とカラオケ、簡単なおつまみさえあれば十分なので、飲食経験がなくても始めやすいんです」

 若いママが増えているのも、同年代に当たる「スナック女子」が増えている要因のひとつかもしれないと五十嵐さんは語る。

 ほかに、さまざまなコンセプトを掲げている変わり種のスナックも人気を呼んでいる。

「岩盤浴のある店や、占いが楽しめる店など、エンタメ色が強い個性的なスナックも増えています。あとは戦隊ものが好きな人たちが集まる店など、何かの趣味に特化したお店も多いですね」

 さらに五十嵐氏は、スナックの魅力として、明朗会計な上にコスパがいい点を挙げる。

「女性なら、飲み放題&カラオケ歌い放題2時間3,000~4,000円くらいが相場です。行ったことがない人は驚くと思いますが、普通のカラオケよりも断然安くてお得なんですよ」

■常連さんが来る前の19~20時がおすすめ

 最後に、スナックデビューを目指す女性に向けて、五十嵐氏からアドバイスをもらった。


「都心なら、スナック検索サイトを見て、ある程度下調べするといいでしょう。料金や店の雰囲気が載っていますので、自分に合いそうなスナックが見つけられると思います。地方の場合ですと、古典的ですが、飲食店の店員やタクシーの運転手さんにイチオシの店を聞くのが一番。ただ人気店だと、満席で入れないことも結構あるので注意が必要です」

 そして、行きたい店が決まったら、初心者でも入りやすい時間帯を狙って行くべきだと五十嵐氏は言う。

「初めての店なら、19~20時ごろに行くのをおすすめします。遅い時間に行ってしまうと、すでに常連さんたちでにぎわっているので、その輪に入っていきづらいかもしれません。
早めに店に行ってママと話しておけば、スムーズになじめるはずです」

 今の時代、SNSで簡単に人とつながることができる。しかし、女性たちはリアルなコミュニケーションを求めてスナックにたどり着き、日頃のストレスを発散しているようだ。
(福田晃広/清談社)