誰にでも、心が弱ってしまう時はあります。救いを求める先が、信頼できる家族や友人ではないこともあるでしょう。

「こうすれば幸せになる」と語りかける心理カウンセラー、スピリチュアリスト、霊能力者。彼らを見ていると、「私を救ってくれそう」「この人たちのようになれるかも」と、次第にそんな気持ちが膨らみ……ちょっと待って! それ、本当に信じて大丈夫? スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコが、無責任なことばかり言っている“教祖様”を、鋭い爪でひっかきます。

「悪いことをしたら、ちゃんと謝ろうね」。幼い頃、こんなことをよく言われませんでしたか? 信者ビジネスを繰り広げるスピリチュアルな“教祖様”の中には、残念ながら「ごめんなさい」がどうしても言えない人もいます。自分の罪を認められない教祖様を前にしたとき、信者はどうするのか。今回はそんな話です。


 前回、キングコング西野亮廣さんとのつながりで、スピリチュアル・ブロガーhappy(現在は「さちまる」「竹腰紗智」に改名。以下、元happy)について少し触れました。彼女は「引き寄せの法則」の語り部として、ここ数年、スピ好きな若い世代を中心に、圧倒的な支持を得ています。彼女がつづるブログも大人気でしたが、昨年末に突然削除。そしてすぐに改名し、現在もhappy時代と同じような活動を続けています。現在は「さちまる」を名乗っていて、インスタグラムのフォロワー数は約3万9,000人。
いまだ熱心なファンに囲まれているようです。インスタライブではほぼ毎朝、元happyのありがたいお言葉が聞ける配信を行っており、多い時では7,000人ほどが集っている様子。そんな人気者ですが、実は今月頭に、元happy界隈で“プチ炎上”が起こりました。

雑誌発売延期の“お粗末”な言い訳

 元happyのお気に入りフレーズといえば、「I AM THAT I AM(わたしはわたしである)」。この言葉をモチーフに、元happyのお友達・パールさんが「iTHAT」なる雑誌を監修し、ネット限定で販売を行っています。スピリチュアル界隈で有名な人々のインタビューや対談なども掲載され、その内容はいわば、“happyちゃん機関紙”。1冊3,000円と雑誌としては結構な金額ですが、まるまる1冊ほぼカラーページとのことで、彼女を信仰する人にはお手頃価格設定でしょう。
第1号の好評を受け、6月3日に第2号の発売告知がありました。パールさんは自身のインスタグラムで、元「子宮委員長」八木さやさんへのインタビューの記事を小出しにするなど、スピ好きな人たちの購買意欲をうまく刺激していました。

 信者ビジネスは公に広告が打てない事情もあり、SNSを駆使して商品を宣伝するのが定石です。「iTHAT」第2号の宣伝も、一味違いました。雑誌の発売に合わせるように、元happyと行動を共にする親友・愛さんという女性芸術家がデザインしたノート(B6サイズ60ページ仕様で、表紙以外はごく普通のノート)を、3冊セット3,000円で売り出すと告知。なんと「パールちゃんVS愛ちゃん どちらが売れるか企画」を行い、信者たちを煽る煽る。
私も思わず前のめりに「どっちが勝つの!?」と白熱し……というのはウソで、冷ややかに眺めていました。

 そして迎えた「iTHAT」第2号発売日。もちろん私も(いろんな意味で)ウキウキしながら待機していました。というのも、 発売予定時間に購入希望者に向けたインスタライブがあったのです 。そんな盛り上がりもあってか、専用ショップにアクセスしても、なぜか「iTHAT」第2号だけ販売が始まりません。「アクセス殺到が原因か?」と私も信者たちも混乱する中、インスタライブにはパールさんと愛さんが登場。
なんと、ここで初めて「iTHAT」第2号の“発売延期”が発表されたのです。「どうして?」「理由が知りたい」と右往左往する信者からのコメントを尻目に、なぜかパジャマ姿の元happyとその取り巻きたちは、リラックスした様子で「買えなくて残念な気持ちが怒りになったの?」と問いかけます。発売延期について明確な説明をしないまま、パールさんが「私自身は納得してやってることだから、この(延期の)流れを信じている」とコメント。そして、元happyは「これは起こらなきゃいけないから起こっている。何かの意識変換」「一流のクリエイターは急に変えることが多い。それは、インスピレーションを信じているから」とかなんとか、興奮気味に持論を展開。
これに同調するように、パールさんは「なんか謝る感じがない! 今までだったら『ごめんなさい』って言っちゃいそうだけど、それに違和感があるっていうか。なんか、満足してる。気にしない自分の感覚ができたことがうれしい」と満面の笑みで語り、元happyらは「カッコいい!」と拍手喝采。いや、あの……私は一体何を見せられているんだ!?

絶対に謝らない、パールさんの強弁

 パールさんは後日、自身のインスタグラムにこのような投稿をしています。

「iTHATは何かと勝負したりするようなものじゃなかった。直前になってそのことがわかり、発売日を変更することになりました。事前に告知を出さなかったことは、告知を出そうという感覚が起こらなかったから。普段の自分だったら間違いなく告知するのに。これって一般常識では完全なるミスだよね。そのことを理解した上で、私は自分の判断に自分で責任を持ちます。そしてそんな自分になれたことに喜びを感じてる。感情が揺さぶられ、どんな感情が起こったのか。そのことを知るために必要なことだったから。怒りも悲しみも、責めたり咎めたりする気持ちも自分の世界で起こった出来事として感じてみてほしい。iTHATは、読む前から始まってるんだなって思ったよ。iTHATは、何が起こっても、どんな自分でも自分を信じて生きるためのバイブルBOOKです」(原文ママ)

 何を言っているのかまったくわからないのですが、どうやら愛さんとの「VS企画」に何か思うことがあったのと、自分の“ミス”への強弁が、この長~い文章に込められているようです。これには、いつも従順な信者から300件以上のコメントが寄せられており、「たった一言“ごめんなさい”が聞きたかった」「多くの人が楽しみにしていたのに、その気持ちを無視されているようで悲しい」「どうしても『自分は悪くない』と言いたいんですね」と炎上状態に。そんなゴタゴタを経て、「iTHAT」第2号は今月9日に無事発売。パールさんによれば、1日で約8,000部も売れたそうです。いやはや、いくら弄ばれても耐えられる信心深い人たちには脱帽ですね。

「縄文祭」で大炎上を起こした元happy

 発売延期の件は、パールさんのいうところである“必然の出来事”とばかりにうやむやにされましたが、過去の大炎上はまだくすぶっています。元happyは、長崎県壱岐市の“観光大使”を務めており、現在も解任されたことは確認できません。昨年10月、観光大使である元happyは、およそ2,000人を市内のキャンプ場に集め、スピリチュアルイベント「縄文祭」を開催しました。巨大なステージを設置し、歌えや踊れ、キャンプファイヤーだの寝袋で野宿だのと大騒ぎ。結果的に、キャンプ場の芝生を荒らし、昼夜問わず騒音を立て、市民から大ひんしゅくを買ったのです。その後、「縄文祭」は地元紙「壱岐新報」で批判的に取り上げられ、市民からクレームが多数届いたと明かされています。元happyについては「本市の観光大使に適任だったのかどうか」という議論が持ち上がっていることも示唆し、異例の事態に行政も頭を抱えていることがうかがえます。スピリチュアルにまったく関係ない人を巻き込んだ騒動から半年以上過ぎましたが、いまだに元happyから公式な謝罪はありません。要するに彼女も、「ごめんなさい」が言えないのです。

 実は私、このイベントへの参加を境に、元happyの信者をやめた人から、何件も連絡をもらっています。その内容はどれも、「今までもちょっと『おかしいな?』と感じることはあったけど、今回ばかりは壱岐市の人たちに申し訳なくて……。完全に目が覚めました」といったものです。ネット上でもこの頃、信者から“アンチ”に転じた人をチラホラ見かけるように。「事後の対応に失望した」「心地いいように見えて、“脆い世界”じゃないのかと気づいた」と、我に返る人の声もありました。こういった流れはまるで、“ふるい”にかけられているかのようです。多くの人を振り回しても、都合よくスピリチュアルを引き合いに出し、「インスピレーションがなんとか」「すべては必然だからどうたら」なんて語る人たちのことを、これからも信じ続けていいものか。立ち止まって考えてしまうのは、当たり前のことだと感じます。

 スピリチュアル好きなみなさん。もしも“教祖様”に不誠実さや世間とのズレを感じ、違和感を覚えたのなら、いい機会なのでそこから一歩離れてみてはいかがでしょうか。元happyが言っていた、「わたしはわたしである」。 その思想が肥大し、他者に迷惑をかけても謝れない“教祖様”のように、開き直ってはいませんか。

■黒猫ドラネコ
 1983年5月生まれ。性別、職業は非公表。大分県出身、学生時代から大阪で過ごし結婚を機に上京。穏やかで細かい性格。自分勝手な人が嫌い。趣味はスポーツ観戦、カフェ巡り、漫画・アニメ鑑賞など。甘党でお酒よりジュースを好む。ショートスリーパーにつき夜行性。