私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。
頭の回転の速さがずば抜けていた飯島愛さん(C)サイゾーウーマン<今回の有名人>
「ギャルって結構、偏見で『何もできない』とか」ゆうちゃみ
『やすとも・友近のキメツケ!※あくまで個人の感想です』(関西テレビ、11月28日)
11月22日放送の『上田と女が吠える夜」(日本テレビ系)にゲスト出演したタレント・相田翔子が、「私って引きが悪い」と思ったエピソードを披露していた。
「高校生の時に電車のホームで、ポンポンと2回背中を叩かれたんです。で、『え?』って振り向いたら、周りにいた人がササササーって引いて行っちゃって。『え? 誰? 誰?』と思って学校に行ったら」と、ここまで話した相田は急に真顔で黙り込む。
同番組司会のくりぃむしちゅー・上田晋也は、その沈黙を「ラジオだったら放送事故くらいの間」と表現したが、しばし黙った相田はその後、「ハトのフンが2発」とポツリ。
つまり相田は、ポンポンと背中を叩かれたと思っていたが、実際には、それはハトにフンをかけられた感触だった……と上田が“通訳”していた。相田は「あんなにいっぱい人が待っている中で、(ハトが)私を選ぶなんて引きが悪いなと思って」と結論付けていたものの、エピソードよりも相田の素っ頓狂さに笑いを誘われた視聴者も多いのではないだろうか。
相田のような女性は“天然”と呼ばれ、一時期テレビでは重宝がられた。ゆえに、本当は天然ではないのに、天然を装う女性タレントも多かったが、今、バラエティ番組で天然を掲げる女性タレントを見かけることはほぼないと言っていいだろう。その代わり、今のテレビに不可欠なのがギャルタレントだと思う。
テレビによるギャルの起用というと、『噂の!東京マガジン』(TBS系→BS-TBS)が思い浮かぶ。
同番組には「やって!TRY」というコーナーがある。番組スタッフが街行く若い女性に「この料理を作ってください」と課題を与える。
スタッフは番組を盛り上げるため、見た目が派手なギャルは家庭的ではない、つまり料理もできないと見て、あえてそういう人に声をかけていたように思う。確かにギャルは料理だけでなく、「何もできない」という印象を持たれがちだが、芸能界のギャルタレントを見ていると、それとはまた別の“イメージ”が広まっているのではないだろうか。
芸能界でギャルの道筋を作ったのは、飯島愛さんだろう。
ギャルタレントのイメージは、時代と共にさらに変化していく。
あのちゃんのように、見た目はギャルではないものの、目上の人に敬語を使わないタレントが出てきたこともあって、今の時代は「ギャルはフツウのタレントよりも礼儀正しい」というイメージに変わりつつあるように思う。華やかで元気があり、大御所相手にも臆せず、かといって失礼を働かない……そんなギャルタレントは、番組を制作する側からすれば、重宝するといえるのではないだろうか。
ゆうちゃみに見る「意外にちゃんとしているが完ぺきではない」ギャルタレントの姿
そしてもう一つ、ギャルが重宝される理由があるように思う。11月28日放送の『やすとも・友近のキメツケ!※あくまで個人の感想です』(関西テレビ)に出演していたゆうちゃみは、「第一印象は悪いほうがトク」と持論を語る。
「ギャルって結構、偏見で『何もできない』とか、第一印象が良くない」と切り出したゆうちゃみによると「悪いほうがトクじゃね? ってことがあって。ギャルイコール何もできひんで、周りが勝手にやってくれる」「ギャルでハードルが下がってすぐ褒められる」とのこと。同番組司会の海原ともこも、ゆうちゃみに会った時に「あの子すごいで。敬語しゃべれる」と思ったそうだ。
そんなふうに褒められたゆうちゃみだが、同じくゲストのチュートリアル・福田充徳に「でも、さっきメイク室でベテランのメイクさんにガンガンタメ口でしゃべっていましたよ」と人によっては敬語を使っていないことを暴露される。ゆうちゃみいわく、「めっちゃ仲良い」かららしい。
もし清純派と呼ばれる女性タレントや女子アナが、テレビではちゃんと敬語を使っているのに、裏方であるメイクさんにはタメ口だったと聞かされたら、なんとなく「ウラがある人」のような印象を受けてしまわないだろうか。
しかし、ゆうちゃみがメイクさんにタメ口だったと聞かされてもあまり驚かないというか、「そういうこともあるだろう」と思えてしまう。本格的なイメージダウンにならないとわかっているからこそ、福田もゆうちゃみに関する小さい暴露ができたのだろう。
誰もがスマホを持つ時代、芸能人は常に暴露の危機に晒されているといっていいだろう。優等生イメージが強い人ほど、暴露された時のダメージは大きくなることは想像に難くないが、そんな中、ギャルタレントの「意外にちゃんとしているが完ぺきではない」という在り方は、ダメージを最小限に減らし、生き残るのに最適なスタイルなのかもしれない。テレビはこういったリスクの少ないタレントこそ起用したいと思うであろうことを考えると、ギャルタレントは今後もバラエティ界を席巻し続けそうだ。
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