北朝鮮の金正恩総書記は2021年の朝鮮労働党第8回大会で、「税金外の負担」は犯罪行為であり断固阻止すべきだと強調した。これは、地方当局が法的根拠なく住民から様々な名目で金品を徴収してきた慣行を指し、強い不満を招いていた。
この「税金外の負担」を廃止する指示が改めて出されたが、新たに導入された「寄付制度」も不満の声を招いていると、米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)は報じた。
咸鏡北道の情報筋によると、今月中旬、道内の各人民班(町内会)に「住民負担をなくせ」という指示が下された。それまで人民班や工場、企業所は「党の政策貫徹」を名目に、平壌建設支援金、地方工業工場建設費、観光地・温室農場建設支援金などを住民から毎月徴収していた。
こうした支援金は1件あたり5000北朝鮮ウォン(約29円)だが、複数が課されるため、労働者の平均月給3万ウォン(約175円)では生活を削って支払う必要があったという。
国家プロジェクトが住民に利益をもたらしていないとの不満が高まり、党は支援金の返還を各地に通達した。
平安北道の情報筋は「建国以来初めてのことで、住民は驚いた」と語る。
当局は、新義州温室農場や元山葛麻観光地区、平壌5万世帯住宅など国家的大型事業への支援金制度を廃止し、今後は自発的寄付へ切り替える方針を示した。
しかし、多くの住民は、党が形式的に負担を撤廃したように見せかけつつ、実質的には「基金」制度を通じてさらに多額の現金を集めようとしていると批判している。
情報筋は「多額の寄付者の名前を公表・称賛することは、強制的な集金の実質的強化だ」と述べた。
社会的地位や役職がワイロや性上納と引き換えにされるような実態がある北朝鮮では、住民が『自発的な寄付』という建前を信じない住民が多いのも当然と言える。