朝日新聞は25日、2017年にマレーシアで殺害された金正男氏について、クアラルンプールの韓国料理店「高麗苑」の店主アレックス・ファン氏の証言を報じた。正男氏は10年近く通った常連客で、2016年末に亡命を勧めたが「大丈夫」と応じなかったという。
これより少し前の2014年3月、デイリーNKジャパンの記者もクアラルンプールで金正男氏のインタビューを試みたことがある。当時フリーランスとして活動していた記者は、報道プロダクションとの共同取材で金正男氏に直撃した。
金正男氏は頑なに取材を拒否したというが、彼と同い年で、1990年代に北朝鮮の平壌で彼を見かけたことがあるという記者の粘り強い説得を受け、立ち話とカカオトークでの対話には応じたという。
当時、記者が金正男氏から受け取ったカカオトークのメッセージには、次のように書かれていた。
マナーよく約束を守っていただいて感謝します。
それで約束通り、連絡さしあげます。せっかく私に会いに、はるばるいらっしゃったのに、お茶の一杯も御馳走して差し上げられず申し訳ありません。
繰り返し申し上げますが、すべての言論と縁を切った状態であり、もういかなる言論社、言論人とも接触しないつもりです。ただ、〇〇さん(記者の実名)が個人的に私と友人になりたいとのことなので、そのお気持ちに感謝し、今後、安否を伝えながらお付き合いできたらと思います。
率直に思う所では、〇〇さんが言論人でないならば、われわれの関係はより深くなることもあるでしょう。
金正男氏はこれより前に、複数の海外メディア記者と接触し、取材に応じていた。
記者によれば、金正男氏の態度はきわめて紳士的だったという。記者と報道プロダクションは当時、金正男氏が正式にインタビューに応じなければ、隠し撮りなどによる報道はしないと協定を結んでいたため、この一件が報道されることはなかった。ただし、記者は金正男氏が殺害された後、このやり取りを公開したことがある。