北欧フィンランドが、韓国製の155ミリ自走榴弾砲K-9の大規模な追加導入に踏み切った。政府はこのほど、韓国企業と中古のK9A1自走砲112両を取得する契約を締結。

すでに運用している車両と合わせ、総数は200両規模に達する見通しとなり、同国は欧州有数のK-9運用国へと躍り出る。

調達の背景には、ロシアと長大な国境を接する地政学的環境と、歴史に裏打ちされた独自の軍事思想がある。フィンランドは人口約550万人の小国であり、兵力規模では大国ロシアに対抗し難い。このため、限られた戦力で最大の効果を発揮する「火力中心主義」、とりわけ砲兵戦力の重視を国防の柱としてきた。

その原点は1939年に勃発した冬戦争にさかのぼる。圧倒的な兵力差の中、フィンランド軍は森林や湖沼地帯という地形を生かし、機動を制約されたソ連軍に対して砲兵火力を集中運用することで善戦した。この経験は戦後も教訓として継承され、「分散配置された部隊を、必要な瞬間に火力で結びつける」という戦術思想として定着している。

実際、同国の国土は森林と湖沼が大半を占め、戦車など機甲部隊の大規模展開には適さない。視界が制限され、接敵距離も短くなりがちな環境では、直接戦闘よりも間接射撃による広域打撃が有効となる。砲兵はこうした地形条件に適合した戦力であり、戦場全体をカバーできる柔軟性を持つ。

近年では、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、長距離火力の重要性が改めて浮き彫りとなった。フィンランドは2023年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、同盟の防衛計画に組み込まれる形で戦力強化を進めているが、その中核を担うのが砲兵である点に変わりはない。

今回導入されるK-9は、155ミリ砲を搭載した自走榴弾砲で、機動力と射程、発射速度を兼ね備える。既存装備との互換性が高く、整備・訓練面での効率性にも優れることから、フィンランド軍にとって即応性の高い戦力増強手段と位置付けられている。老朽化した牽引砲の更新も兼ねており、全体の火力近代化を一気に進める狙いだ。

小国でありながら欧州屈指の砲兵戦力を維持・拡大するフィンランド。その姿は、兵力の多寡ではなく、戦場環境と歴史に適応した軍事思想こそが抑止力を左右することを示している。K-9の大量導入は単なる装備更新ではなく、「小国の砲兵中心主義」を体現する戦略的選択といえそうだ。

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