実際、鉄鋼大手といえども世界シェアは小さい。新日鉄と住金を合算しても、世界の粗鋼生産量に占めるシェアはわずか3.1%、アルセロール・ミタルですら6%にすぎない(図参照)。


 一方、原料を供給する資源会社は集約化が進んでいる。鉄鉱石の供給元はブラジルのヴァーレ、英豪のリオ・ティント、BHPビリトンの3社で世界の 64%を占める。

 とはいえ、鉄鋼業界側も脛に傷を持つ。過去において何度も独禁法違反の事例が明らかになっており、その体質から完全に脱却したとは言い切れない。近年では08年6月に、新日鉄、JFEスチール、住金などが、鋼矢板などの価格カルテルで課徴金納付を命じられている。

 公取委は審査のあり方をあらためて検討すべきだが、同時に取り締まりの徹底や課徴金引き上げなどの制裁強化の議論も必要だろう。

 新日鉄と住金の合併は、鉄鋼再編の引き金となりそうだ。特に注目されるのは神戸製鋼所の行方だ。

 今回、神戸製鋼が合併計画に入らなかった理由はいくつかある。

 一つは同社が強い特殊鋼線材のシェアが、新日鉄と合わせて9割超を占めることによる独禁法上の問題だ。

 一方で、新日鉄と住金という組み合わせは得意分野の重複が比較的少ない。新日鉄は薄板から建材まで幅広いだけでなく、ハイブリッドカー向けの電磁鋼板などに強い。
住金は原油採掘などに使うシームレスパイプが強く、さらに国内の鉄道用車輪・車軸ではシェア100%を持つ。

 二つ目は、神戸製鋼の売り上げに占める鉄鋼事業の小ささだ。同社の売上高の5割以上は機械、アルミ・銅、建設機械、電力卸供給、不動産などの非鉄鋼事業が占めている。それゆえ統合による相乗効果を生みづらい。

 新日鉄、住金による神戸製鋼への持ち分株合計は6.8%で筆頭株主となるものの、国内高炉大手で1社取り残された神戸製鋼が単独で生き残りを図るのは厳しい。特殊鋼メーカーとの連携を検討する可能性もある。

 JFEホールディングスも次なる一手を模索するはずだ。旧川崎製鉄と旧NKKの経営統合により、粗鋼生産量では新日鉄とほぼ肩を並べ、経常利益額では新日鉄を上回る。ようやく新日鉄の背中が見えた矢先、「野武士集団」といわれる旧川鉄の闘争心に再び火がつくかもしれない。韓国のポスコやインドの鉄鋼各社との関係などが注目される。

 また、将来的には、新日鉄、住金がさらなる再編に動く可能性もある。

 両社の粗鋼生産量合計は3842万トン。
中国の河北鋼鉄集団、上海宝鋼集団とほぼ横並びの世界2位グループの一角にとどまる。だが、アルセロールは7320万トンと、他社を大きく引き離している。

 さらに中国は政府の意向で鉄鋼メーカーの再編を進めており、「数年内に6000万~7000万トンのメーカーが複数台頭するだろう。新日鉄と住金が合併するだけでは不十分だ」(長井亨・アドバンストリサーチジャパン取締役)との指摘もある。

「量でトップになることは念頭にない。規模、技術、品質などの総合力でナンバーワンになりたい」(宗岡社長)とはいうものの、量でもトップグループにいなければ、「総合力トップ」の看板は掲げられない。

 いずれにせよ、両社はまだ合併検討のスタートラインについたばかりであり、中身を詰めるのはこれからだ。

「“ベスト・フォー・ザ・カンパニー”で意思決定する」(友野宏・住金社長)

 その言葉どおり、どこまでタブーを排して生産拠点の統廃合などを推し進め、また、拡大した資金力や人材を活用して海外展開を図るのか。合併の成否は、鉄鋼業界のみならず、国内産業が復活するための試金石にもなる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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