負債を活用してレバレッジを効かせながら(元手の何倍も資金を動かして)不動産を購入し、着実にお金が手元に入ってくるキャッシュフロー投資を実践して金持ち父さんの道を歩んできたロバート・キヨサキさん。では、万人にとって不動産投資はベストの選択肢なのだろうか? 不動産以外にも、有望な投資対象は存在するのか? これから金持ち父さんをめざす人たちに向けて、キヨサキさんは熱弁を振う。
最初に、前回までの話を簡単におさらいしておこう。1971年のニクソンショック(金本位制の崩壊)を機に米ドルの価値は実物資産である金の裏づけを失い、単なる紙きれ同然となって信頼性がどんどん失われていったとロバート・キヨサキさんは指摘した。
だから、彼は紙幣やペーパーアセット(有価証券)をまったく信用していない。
そして、金本位制の崩壊に伴って資本主義経済は「クレジット本位制」に移行し、各国政府はその国に対するクレジット(信用力)を担保に、金の裏づけのない紙幣を無尽蔵に刷って資金を調達してきたという。資金を調達した側からすれば、クレジットとは借金。その返済が難しくなってくれば、信用不安が勃発することになる。
1929年の世界恐慌と同様、リーマンショック以降の世界経済もまさにその状況に陥っているとキヨサキさんは警告する。
少なくとも今後5年間程度は、各国政府がクレジットを保全しなければ返済が滞る金融機関が出るため、さらなる資金注入を強いられ、その直後こそ一時的に株価が上昇するものの、止めれば下落してしまうという不安定な状態が続いていくというのが彼の見立てだ。
自分がもっとも精通している投資先を知る資金注入(追加の金融緩和策)の発表とともに株式に投資して短期のリバウンド(値上がり益)を狙うのも一考ではあるものの、キヨサキさんをはじめとする金持ち父さんたちは、不動産のように収益がコンスタントに得られるキャッシュフロー投資で今後も堅実に蓄財していくとのことだ。
ただし、けっしてキヨサキさんは、誰にとっても不動産がベストの選択肢となるとは述べていない。
「重要なのは、自分が最も精通している投資先とは何かについて知ること。私の場合は、それが不動産だったわけだ。
人それぞれで、おのずと得手不得手は異なってくるものだ。投資について正しい知識を学んだうえで、自分が最も得意とする投資先を見極め、しっかりと勉強してその分野に精通できれば、混迷が続く今の時代であっても金持ち父さんの道をめざせるとキヨサキさんは訴える。もちろん、限られた元手からのスタートでも十分に可能だという。
そのうえで、「効率的に資金を動かしていく“自分なりの公式”を導き出すことが重要だ」と彼は説く。ここで、前回の話を思い出してほしい。キヨサキさんが投資している油田の近くに建つ彼が所有するアパートのことについて述べたくだりだ。
油田の従業員たちがその物件に住んで賃貸料を払っているので、「投資したお金が再び自分自身の元に戻ってくるようなものだ」と彼は指摘していた。実は、これこそキヨサキさんが導き出した“自分なりの公式”の1つなのである。
紙幣を刷れば刷るほど金が値上がりしていく「その一方で、私は自分自身があまり詳しくないものには手を出さない。
えてして失敗する投資家は、他人から聞いた話を鵜呑みにしたり、特に根拠もなく有望だと思ったりして資金を投じ、大損を被ってしまう。だが、金持ち父さんは自分なりに確信を抱けないものには一切目もくれないのだ。
「今後の見通しに関して、明らかに察しがつくこともある。今の私にわかっているのは、これからも各国政府がお金をどんどん刷っていくということだ。それに伴って紙幣に対する信頼がさらに失墜し、代わって金価格や銀価格が上昇するだろう。特に金価格は、いずれ3000ドル台に乗せるものと私は予想している。稀少金属のみならず原油価格の上昇も顕著となり、やがては食料品価格などにも波及していくはず。原油の高騰は輸送コストなどにも影響を与え、インフレ(貨幣価値の暴落)が進行すると見られる。こうした展開が想定されることから、私は金鉱山や油田にも投資しているのだ」(キヨサキさん)
無論、金鉱山や油田への投資はすでに金持ち父さんとなっている彼だからこそ可能なこと。とはいえ、一般の個人投資家でもETF(指数連動型投資信託)などを通じて金や原油への投資を実践できる。
「お金のために働く」のではなく「お金を働かせる」ようになれところで、キヨサキさんは日本のことをかなり危惧している。周知のとおり、赤信号が皓々と光る欧州のみならず、世界の牽引役である米国や中国をはじめとする新興国の経済にも黄色信号が点っている。
そのような状況に陥った際に重くのし掛かってくるのは、「日本が世界的な負債(財政赤字)大国で、一般の国民が無意識のうちに膨大な借金を背負わされている」(キヨサキさん)という揺るぎない事実だ。
今のところは日本国債がむしろ資金の逃避先となっているが、いったんクレジットに傷がつけば、その流れは一気に逆流しうる。当然、そうなれば円の価値も失墜するだろう。
にもかかわらず、「お金のために働く」という貧乏父さんの生き方を続けていても、報われる可能性は極めて低いと言わざるをえない。一刻も早く「お金を働かせる」という金持ち父さんの発想に転換し、より大勢の人たちがハッピーな人生を手に入れてほしいとキヨサキさんは切望している。