東芝、ジャパンディスプレイも上位に
今回は、2019年に早期・希望退職を実施した上場企業のデータを使い、「早期退職者数ランキング2019」をお届けする。東京商工リサーチの集計データを基にダイヤモンド編集部が作成した。
電気機器の企業が上位4社までを占めた。1位は富士通で、早期退職者数は2850人だった(グループ会社を含む)。45歳以上の間接部門の正社員らが対象となり、19年3月末で退職した。19年3月期の純利益は前期比38.3%減の1045億円。
2位は半導体大手のルネサスエレクトロニクスで、約1500人を削減した。国内の半導体市場は停滞しており、それに合わせて人員を見直した。18年12月期の純利益は29.3%減の545億円。
17年に米インターシル、19年に米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジーを計1兆円超で買収し、海外シフトを強めている。
だが、19年1~9月期の純損益は74億円の赤字に転落(前年同期は619億円の黒字)。中国の景気減速で本業が低迷している。
3位は東芝である。早期退職者数は1410人。グループ会社を含め、早期退職者を1060人募集した(退職時期は19年3月末)。さらに子会社の東芝デバイス&ストレージでも、350人を募った(退職時期は19年9月末)。
東芝は15年以降、不正会計で経営危機に陥った経緯がある。
4位は経営再建中のジャパンディスプレイで、40歳以上の社員を対象に1200人を削減。スマートフォン向け液晶パネルを生産する、主力の白山工場(石川県)の操業を無期限で停止。ファンドの支援を受け入れ、同工場の売却交渉を進めている。
19年3月期の純損益は1094億円の赤字(前期も2472億円の赤字)。19年7月にダイヤモンド編集部が公開した倒産危険度ランキング(本誌での公開は6月22日号)では、ワースト10位になっている。
医薬品は業績好調でも人員削減19年の早期退職者数は18年比で3倍
早期退職者数ランキングでワースト10に入った業種のうち、最も社数が多かったのは電気機器の5社。これまで挙げた4社に加え、電池や電子部品を製造するFDKが10位に入った。
続いて多かったのは医薬品の3社で、5位にアステラス製薬(グループ会社を含め約700人が応募)、8位に協和キリン(296人が応募)、9位に鳥居薬品(281人が応募)が入っている。
業績不調な電気機器に対し、医薬品は好調な企業が目立った。通期で直近の純利益は、アステラス製薬が前期比35.0%増の2222億円。協和キリンが26.8%増の544億円。鳥居薬品は75.3%減の11億円だったが、13位の中外製薬(172人が応募)は18年12月期に純利益が924億円となり、2期連続で最高益を更新している。
医薬品業界に広がる早期退職の流れについて、東京商工リサーチ情報本部情報部の二木章吉氏は「追い込まれてからリストラに踏み切る従来型ではなく、企業体力に余裕があるうちに着手する先行型だ」と指摘している。医薬品は、稼げる事業と稼げない事業をシビアに見極める傾向が強く、不採算事業の再編が最も加速している業種の一つといえる。
10位以内には、このほか5位にコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(グループ会社を含め700人募集)、7位にスポーツ用品販売のアルペン(グループ会社を含め300人募集)がランクインした。
19年に早期退職を実施した上場企業は35社。早期退職者数は計1万1000人を超え、社数、人数とも18年(12社、4126人)比で約3倍となった。
(ダイヤモンド編集部 清水理裕)