2015年に「SDGs(持続可能な開発目標)」が国連サミットで採択されて以来、世界中でSDGsへの取り組みが進んでいる。そして実際に、ESG(環境・社会・企業統治)活動として具体的に展開する日本企業も少しずつ増えてきている。

 しかし、SDGs自体やそれに関連した企業のESG活動に対して、一般の消費者やビジネスマンらがどれだけ認知・理解し、評価しているのかは、あまり明らかになっていない。

 そこで、あらゆるステークホルダー約1万人へのアンケートによって、SDGsへの取り組みの評価が高い企業をランキング形式で紹介しているのが、ブランド総合研究所の実施した『企業版SDGs調査2020』だ。

 この調査では、調査対象となった日本を代表する企業210社のSDGsへの取り組み全体を評価するとともに、各社のESG活動(「環境に配慮している」「地域に貢献している」など)20項目についてもそれぞれ評価している。それでは早速、約1万人へのアンケートでわかった「SDGsへの取り組みの評価が高い企業ランキング」を見ていこう。

※アンケートはインターネットにて実施。投資経験者、ビジネスマン、SDGs認知者、専業主婦、若年層などのステークホルダー1万500人から回答を得た。調査時期は2020年3月。「SDGs取り組み評価」の点数は、「各社がSDGsに本格的に取り組んでいるか」という問いへの答えを、「本格的に取り組んでいる」100点、「少し取り組んでいる」50点、「どちらでもない」「取り組んでいない」「知らない」いずれも0点として点数化し、全回答の平均から算出した。

1位はトヨタ自動車、2位アサヒビール
評価が高いのはBtoC企業に多い傾向

「SDGsへの取り組みの評価が高い企業ランキング」1位は、トヨタ自動車が選ばれた。トヨタは昨年6月に「サステナビリティ推進室」を新設し、SDGsやESGに本格的に取り組んでいることでも話題だ。

 2位はアサヒビール、3位には旭化成がランクインした。トップ20にはBtoC企業が多数ランクインしており、商品を通じてSDGsへの取り組みを一般消費者に認知させられる企業の方が評価されやすいとも考えられる。

SDGsの評価に最も影響ある活動は
「公平な取引を行うこと」

 今回の調査では、SDGsへの取り組みに対する評価とともに、企業のESG活動(20項目)についての評価も行ったが、どのようなESG活動がSDGsの評価につながっているのだろうか。

 調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄社長は、ESG活動の中でSDGsの評価に影響の大きい項目を、重回帰分析によって導き出した結果から、以下のように語る。

「SDGsというと、環境への配慮や社会貢献活動というイメージが大きいですが、実際に最も影響が大きかったのは、『公平な取引を行っている』という項目でした。次いで、影響しているのが『環境に配慮』『働き方改革』『生活を豊かにしている』になっています。一方で、最も影響がない項目は『世界平和に貢献』でした」

トヨタ、旭化成、イオン…
上位企業のどんな活動が評価されているか

 では、今回のランキングで上位になった企業は、どのようなESG活動がSDGsの取り組みとして、評価されているのだろうか。

 まず、1位のトヨタ自動車は、2015年10月に2050年のクルマ環境負荷ゼロを目指す「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げるなど、環境に配慮しているというイメージが強い。しかし、「環境に配慮している」という活動に対する評価は5位と、同項目で1位のサントリーに差をつけられる結果となった。

 ESG活動への評価でトヨタがトップになったのは、「社会貢献活動をしている」「技術・科学の発展に貢献」「世界平和に貢献」「法律やルールを順守」といった項目で、これらがSDGsへの評価につながっているようだ。

 一方で、「女性が働きやすい」は54位、「健康や福祉に貢献」は33位と、トップのトヨタでもあまり評価されていない活動もあった。

 3位の旭化成は、同社のホームページなどでも「旭化成グループのサステナビリティ」として、持続可能な社会につながるさまざまな取り組みを行っていくとうたっている。しかし、「ESG活動の20項目に関して、評価がトップになった項目は1つもない」(田中社長)ことから、同社の取り組みが漠然とした印象を与えてしまっている可能性がある。

 例えば、昨年ノーベル賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェローが実用化に大きく貢献したリチウムイオン電池が、国際宇宙ステーションなどでも活用されていることから「宇宙開発を推進」の項目で4位に。

そのほか、「環境に配慮」6位、「スポーツや文化活動に熱心」7位、「働き方改革に取り組んでいる」9位、「技術・科学の発展に貢献」9位と、こうした項目で軒並み上位となることで、総合して3位となったのでないかと考えられる。

 これに対して田中社長は、SDGsに対する企業の取り組みの現状についてこう分析する。

「そもそもSDGs自体が漠然としていて、企業の取り組みも漠然としているケースが多い。しかし、まだ多くが本格的に取り組めていないことから、先に打ち出したもの勝ちみたいなところはある。今後は、具体的で一般消費者にもわかりやすい取り組みを行えた企業が独り勝ちになるのかもしれない」

 そんななかで、具体的な取り組みが評価されているといえるのが、6位のイオンだ。イオンは、ESG活動の中で「高齢者や障がい者にやさしい」1位、「雇用を生み出している」1位、「地域に貢献」1位と、一般消費者がイメージできる具体的な活動で評価が高い。

 確かに、「公平な取引を行っている」130位、「世界平和に貢献」142位、「国際化が進んでいる」147位、「技術・科学の発展に貢献」173位など、決して上位とはいえない項目もある。しかし、企業の特徴に合わせたESG活動を行うことが企業の個性であり、それを続けることでSDGsの達成へも効果が期待できるのではないか。

(ダイヤモンド編集部 林 恭子)

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