今回で4年目となる恒例の好評企画が、この「40歳年収が高い企業ランキング」です。全上場企業を対象として、独自に「40歳時の年収」を推計。
収入に関する前提が覆っている
新型コロナウイルスの感染拡大が経済に与えるダメージによって今、多くの人にとって収入に関する前提が根底から覆っています。特に自営業やフリーランスの人々にとっては深刻な状況です。
程度の差こそあれ、それは今まで当然のように毎月給料が振り込まれてきた会社勤めのビジネスパーソンにとっても同じ。店舗や工場などの休業による影響を受けている人は直接的な打撃をすでに受けています。
そして、ホワイトカラーと呼ばれる職種でも、在宅勤務にシフトするなど働き方が大きく変わった人は多いはず。となれば、多少のタイムラグが生じたとしても、働き方の変化に応じてその対価である給料の払い方も変わってくる可能性が高いです。「実はあまり意味がなかった残業が浮き彫りになった」といった話が出てきていることなどは、その一例といえるかもしれません。
そんな中で今回お届けするのが、今回で4年目となる恒例の好評企画である「40歳年収が高い企業ランキング」の最新版です。全上場企業を対象に40歳時点の年収を推計。時代を振り返ったときに、後に「コロナ以前(Before Corona)最後の年収」と呼ばれることになるかもしれない――。そんな結果をランキング形式でお届けします。
では早速、トップ10を発表していきましょう。
ランキング1位はキーエンス40歳推計年収は2140.9万円
栄えある第1位に輝いたのは、「40歳年収が高い企業ランキング」上位の常連、キーエンスです。主に工場の自動化(ファクトリーオートメーション、FA)用機器の制御に使うセンサー機器を扱っています。40歳推計年収で2140.9万円という数字をたたき出しました。
キーエンスのすごさを端的に表しているのは、その収益力の高さです。
事業規模を表す「売上高」は、5871億円(2019年3月期、以下同)と、同業他社と比べてさほど目立ちません。キーエンスの業種区分である「電気機器」の中で比べると、その差は歴然です。業界トップの日立製作所が9.5兆円、2位ソニーが8.7兆円、3位パナソニックが8.0兆円。文字通り「ケタ違い」の差があります。
ところが、本業の稼ぎを表す「営業利益」が売上高に占める割合を示す「売上高営業利益率」を見ると、今度は逆にキーエンスがケタ違いの強さを見せつけます。
売上高に対していかに利益を稼ぎ出しているかを示す指標ですが、業界平均は6.17%。また、前述した売上高業界トップ3企業の売上高営業利益率を高い順に見てみると、ソニー10.3%、パナソニック5.1%という状況です(日立は独自の調整を加えた営業利益を用いており、単純な横比較ができないため除外)。
ところが、キーエンスの売上高営業利益率はなんと54.1%もあります。この高収益率こそ、高年収の源泉となっているのです。
4位三菱商事、5位伊藤忠…トップ10に総合商社が5社も
キーエンスに次ぐ2位となったのは、不動産業を手掛けるヒューリック(1761.6万円)。同社は12年12月期~19年12月期まで、営業利益・純利益ともに8期連続で増益という業績を上げてきました。
それとリンクするように「40歳年収が高い企業ランキング」でも下記の通り、順位も40歳推計年収も年々右肩上がりを続けています。
17年 10位 1278.1万円
18年 5位 1416.2万円
19年 4位 1637.8万円
20年 2位 1761.6万円(今回)
次に3位以下へ目を移すと、トップ10の中に総合商社が5社もランクインしていることが分かります。
4位 三菱商事(1589.0万円)
5位 伊藤忠商事(1507.9万円)
7位 三井物産(1413.4万円)
9位 丸紅(1375.0万円)
10位 住友商事(1370.1万円)
世間の「高年収」というイメージ通りの結果といえるでしょう。また、三菱商事から業界首位の座を奪取しようとひた迫る伊藤忠が、このランキングでもデッドヒートを繰り広げている様子がうかがえます。
ただし、高年収を謳歌してきた商社業界も新型コロナウイルスの襲来とともに転機を迎えるかもしれません。20年3月期決算ではランキング9位の丸紅が1902億円の最終赤字に転落。さらには、三井物産は今期(21年3月期)の純利益の見通しについて、前年同期比で54%もの減少となる1800億円と見込んでいます。
新型コロナウイルスの感染拡大がいつ終息するのか、いまだ不透明な状況が続いています。
どのように算出したのか?
さて、ここで今回掲載したランキングの算出方法を解説したいと思います。
まず今回のデータは、「有価証券報告書」(有報)で公開されている提出会社の平均年間給与(年収)を基にしています。対象期間は19年1~12月期としました。
ただし、この公開データは各社の従業員の平均年齢がばらばらであるため、本来は横並びで比較することができません。従業員の平均年齢が高いほど年収も高くなりがちだからです。
そこで、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(19年)を基に、8業種(建設、製造、情報・通信、運輸、商業、金融・保険業、サービス、その他)の賃金カーブを多項式モデルによって作成。それを各社のデータに当てはめて、40歳時点の推計年収を求めました。
このようにして比較可能なデータとして整備してはいるものの、このデータには厄介な「クセ」が幾つかあります。持ち株会社(ホールディングス)と事業会社が混じっていることです。
持ち株会社として上場している企業の中には、経営企画や人事系など、少数の幹部社員のみしか在籍していないところがあります。すると、その企業の実態よりも年収が高く出てしまう恐れが強いです。
一方で、公開された年収が低い企業の中には、一般社員よりも年収が低い契約社員を含めている場合があります。他にも、定年退職者の雇用を積極的に進めているビル管理業系の企業や、地方に本社を構える企業も年収が低くなる場合があります。
こうした事情を踏まえてランキングをご覧ください。参考までに決算期時点の各社の従業員数も掲載しています。