『週刊ダイヤモンド』5月30日号の第一特集は「電機・自動車の解毒」です。日本でも緊急事態宣言が全面解除される方向となり、電機・自動車の二大製造業は生産活動を再開しつつあります。

しかし、消費蒸発という本当の危機がやってくるのはこれからです。大減産ショックに耐えうるメーカーはどの程度あるのでしょうか。自動車・電子部品など大手製造業245社を対象に、独自の「コロナ耐久度」ランキングを作成しました。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子)

日産に迫る固定費地獄
自動車メーカー7社の慢心

 日本でも緊急事態宣言が全面解除される方向となった。電機・自動車の二大製造業でも徐々に生産活動を再開しつつある。

 しかし、消費蒸発という本当の危機がやってくるのはこれからだ。例えば自動車産業では、2021年3月期に世界の販売台数は前年比20%減の7000万台強へ落ち込む見通しが大勢になっている。

 製造業の場合、売上高激減の影響をまともに受けやすい。売上高が2割落ちても利益を出せる経営体質になっているかどうか――。これが、自動車メーカーの「コロナ耐久度」の明暗を分けることになる。売上高固定費比率が高い(損益分岐点が高い)メーカーの赤字転落リスクは増すばかりだ。

 自動車7社の、リーマンショック前の08年3月期とコロナショック前の19年3月期の「2時点」で、主要勘定科目を比較した。

08年の3月期を100として、19年3月期の数字を算出。作成には東海東京調査センターの杉浦誠司・シニアアナリストの協力を得た。

 ざっと見て狭義の固定費(人件費・労務費+減価償却費)は7社とも増えている。特に、ホンダスズキSUBARUの数値は大きくなっている。

 すでにホンダは前期の20年3月から対策に打って出ている。「シビック」や「アコード」「CR-V」など四輪車販売の6割を占めるグローバルモデル5機種を中心に、25年までに「派生数」を3分の1にする取り組みを始めているのだ。四輪車事業の低収益性を改善するためのこの施策は、元を正せば固定費削減のための地道な作業と言える。

 次に、7社の「売上高固定費比率上昇度」と「売上高営業利益率上昇度」を比較したところ、SUBARU以外の6社では売上高固定費比率上昇度の方が高くなった。固定費比率の伸びが利益率の伸びを上回ったということだ。

 自動車メーカーはリーマン後に筋肉質な財務へ転換したはずだったが、近年の投資過多により意外に脆い財務実態へ戻っていたことが明らかになった。自動車は“慢心”していたのである。

  この背景には、人件費、設備投資、そして研究開発投資が上昇傾向で「ものづくり偏重」の自動車メーカーのビジネスモデルでは収益を上げにくくなっている実態がある。

近年、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化と呼ばれる四つの技術トレンド)の波が押し寄せており、開発投資が激増していることも、自動車メーカーの経営を圧迫している。

 日本の製造業モデルの限界がみえてきているということだ。だからこそ、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカーの経営者が「モビリティ事業の企業からモビリティサービス事業の企業へ生まれ変わる」と宣言している。コロナ後をにらんだ顧客の価値観の変化により、新しい領域のビジネスのトレンドも変わることになりそうだ。

 付け加えれば、利益剰余金(内部留保)を溜め込んできた自動車メーカーも目立つ。とりわけSUBARUはリーマン前を100とすると19年3月期は580である。内部留保が厚い企業は、設備投資や大型買収に打って出るチャンスがある。

 一方、内部留保も乏しい日産の財務の脆弱性があらわになっている。小手先のリストラ策で固定費を少しずつ削ったところで、抜本的な再建計画は描けないだろう。

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