保険に対して、根っから拒否反応を示す人は少なくありません。「保険=保険会社が儲かるしくみになっている」という人もいますし、保険業界のことを「不安産業」(人々の不安につけこんで商売をする業種)と揶揄する向きもあります。
冒頭でもふれたように、保険業界は不安産業といわれることがあります。"不安だからこそ入っておく商品"であるという意味では、不安産業に違いないのですが、その点だけに注目して「入る必要がないもの」「意味がないもの」と決めつけるのは早計でしょう。
なぜなら、保険によっては、必ずしも保険会社ばかりが儲かるわけではなく、被保険者がトクできる商品もあるからです。
売れば売るほど保険会社が儲かる保険とは、何だと思いますか?
答えはいろいろあるのですが、ざっくりいうなら"掛け捨て型"の保険全般がそうです。掛け捨て型の保険の場合、保険会社は途中で契約をやめる加入者に対してする解約返戻金を支払う必要がないので、保険料が利益に大きく結びついていくのです。
もちろん、被保険者が保険期間中に入院したり死亡したりすれば、保険会社は保険金を支払うわけですが、逆にいうとそのような事態にならない限り、被保険者は支払った保険料を回収できません。
実際には、無事元気で満期を迎え、回収できずに終わる人も多いことから、掛け捨て型保険は保険会社の利益に貢献しているといえるのです。
とはいえ、前回までのこの連載を読んでいただければおわかりになると思いますが、掛け捨て型が悪いというわけではありません。掛け捨て型は解約返戻金がない分、保険料が安く設定されているからです。被保険者は安い保険料で大きな保障を買うことができ、保険会社は少しずつでも利益を積み上げられる――双方にとってメリットのある商品ともいえます。
ただし、なかには一部のシニア向けの保険のように、保険料に対して保障が極端に薄かったり、保障を受けるための条件が細かく設定され、保障を受けづらかったりと、被保険者にとってあまりメリットにならない(=保険会社ばかりが儲かる)ものもあるので、注意しておきましょう。
貯蓄性の高い保険は、その会社の"入り口"商品逆に、保険会社にとってあまり儲かりにくいのが、"貯蓄性"を重視した保険です。
学資保険などのように、満期時に受け取る金額が払い込み保険料の総額が上回っているような設計の商品は、私たち被保険者にとっておトクです。払い込んだ保険料よりも2割くらい多く保険金が支払われるものもあるのです。
ただし、すべての学資保険がそうではありません。上記のような貯蓄重視型ではなく、保障重視型の学資保険もあり、その場合は満期に受け取る金額は払い込み保険料の総額を下回ってしまいます。学資保険に何を求めるのかを意識する必要があるのです。子どもの病気とかケガなども保障を、というのなら構いませんが、お金を貯めたい(本来こちらの目的の方が多い)というのなら貯蓄性を重視して加入してください。
こういった貯蓄性が高い、保険は、保険会社にとってはトクになりません。それでも販売されているのは"その保険をきっかけとして、ほかの商品にも興味を持ってもらおう"という意図があるからだと考えられます。そのためか、業界の中では"ドアノック商品"などとも呼ばれています。
実際、子どもが生まれたから学資保険に入って、「ついでにそろそろ死亡保障も考えようか」というケースは多いはずです。
重要なのは、そのときに不必要なまでに手厚い保険に入ってしまわないこと。それでは、いくら貯蓄性の高い保険でトクをしても、保険会社も思うツボです。
また、裏ワザ的に使うと貯蓄性が高くなるのが「低解約返戻金型終身保険」です。
低解約返戻金型終身保険とは、保険を早期解約した場合に支払われる解約返戻金を一定期間低く抑えることで、保険料を割安にした死亡保障の終身保険のこと。
早期解約した場合、解約返戻金は支払ったお金の7割程度まで減らされてしまうため、3割以上の大損をすることになります。そのため加入するにあたっては、絶対早期解約しないことが条件です。
この低解約返戻金型終身保険を貯蓄目的で利用するためには、"保険金を500万円程度と、死亡保障にしては低めに設定"し、"保険料を短期間で払い終えること"が重要。
終身保険の保険料は一般的にいって高いですが、保険金が500万円程度であれば、短期で払い済みにすることもそれほど難しくありません。
たとえば、30歳の男性の方が500万円の死亡保障がつく終身保険の場合だと、およそ月2万4000円程度支払えば、10年強で払い済みにできます。保険料としては高いですが、貯蓄と考えればできないことはないのではないでしょうか?
払い済みにした後は、その保険のことは忘れて放っておきましょう。そして、長期間寝かせておくのです。
その保険は解約すれば返戻金がもらえますが、長く寝かせるほど、解約返戻金に利息がついて増えていきます。
最後に、注意しておきたい保険の加入方法についてお話ししておきます。
保険に入るには、「対面」「ネット」の2種類があります。対面の場合、保険代理店や銀行窓販、郵便局といった販売会社の窓口で、担当者と話をして加入するほか、保険会社の営業マンが自社商品のコンサルティングを行うケースも。
保険代理店は単一会社の商品ではなく、できるだけ多くの会社の保険を取り扱っているところを選んでください。ただし、代理店は契約手数料で利益を得ているため、被保険者にとってよい商品ではなく、自分達に有利な商品ばかりゴリ押ししてくる場合もあります。もちろん、保険会社の営業マンも同じで、その売り文句にはかなりバイアスがかかっていると考えるべきでしょう。
そのため、コストはかかるものの、本当にいい保険を選びたいならファイナンシャル・プランナー(FP)に相談するのがおすすめです。FPの私がいうのもなんですが、FPの中には保険を研究し尽くしている保険オタクもたくさんいるので、保険代理店や銀行などの不勉強なスタッフよりは、確実に適切な商品をアドバイスしてくれます。
とはいえ、FPによっては保険会社と密接なつながりがあり、保険代理店同様、コスト重視の発言をする場合もあるため、できるだけそういった縛りのない独立系のFPを選択することが重要です。
一番気軽なのは、ネットで申し込む保険かもしれません。
(構成/元山夏香)