西友は11月6日、一般用医薬品の販売資格である「登録販売者」試験の際、同社が発行した実務経験証明書の多くが虚偽記載であったことを認めた。
証明書を発行した従業員は352人。その内の8割に当たる282人が発行要件を満たしておらず、その内の200人が登録販売者試験に合格。今年8月末時点で101人が医薬品販売に従事していた。虚偽証明書の発行は、登録販売者試験が始まった2008年から行なわれてきた模様だ。
ただし、今のところ、医薬品販売による健康被害などのトラブルはないという。
そもそも登録販売者とは、薬剤師ではなくても一部の一般用医薬品を販売できる資格のこと。09年6月から始まっており、受験のためには医薬品販売業務を1年間、毎月80時間以上行なわねばならず、勤務先が発行する実務経験証明書の提出が義務付けられている。
不正が発覚したのは今年8月末。東京都に匿名の電話があり、「西友の売場で医薬品の知識がないのに登録販売者を名乗っている人がいる」という情報提供があった。東京都が調査に乗り出した所、複数の不正が判明。9月上旬からは西友も社内調査を開始した。その後、不正が発覚した従業員は一般医薬品売場から外して、他の売場等に移動。
東京都福祉保険局薬務課によれば、登録販売者制度がスタートして以降、実務経験証明書の虚偽記載の事例が増えているという。
とはいえ、「西友のような大手で発覚したのは初めてのケース。また、過去の事例ではせいぜい人数も一桁であり、282人というのは前代未聞」(同)
虚偽証明書で受験した登録販売員の合格者は資格取り消しとなるが、一方で大量の虚偽証明書を発行した西友については罰則規定がないため、「業務改善の指示が関の山」(東京都福祉保険局)という。
今回の問題の原因について西友は、「会社からのノルマや圧力の事実はなく、組織的な関与はなかった」と主張。あくまで従業員の判断で不正を働いたとしたいようだ。
しかし、これだけの大量の不正が個々人の判断で行なわれたかどうかは疑問だ。
問題発覚からすでに2ヵ月たつが、「年内には調査を終えたい」(金山亮執行役員)と対応は遅い。早期に究明し、具体的な改善策を示さなければ、西友のレピュテーションが低下する恐れがある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)