『週刊ダイヤモンド』7月24日号の第一特集は「弁護士 司法書士 社労士 序列激変」です。法務や労務手続きに関する専門知識を持つ、企業にとって欠かせない士業。
信頼を揺るがしかねない“事件”とは
資格を取得すれば食うに困らず、一生安泰――。
そういわれることも多い士業だが、現実はそんなに甘くない。同じ士業だけではなく、士業間の競争も繰り広げられており、敗れれば序列の低下は避けられない。
士業の序列1位は弁護士だ。その中でも頂点に君臨するのが、大企業のあらゆるリーガルニーズを引き受ける西村あさひ、森・濱田松本、TMI総合、アンダーソン・毛利・友常、長島・大野・常松の五大法律事務所だ。しかしその五大も、盤石とは言い難い。
欧米の投資ファンドを巻き込み、日本の資本市場の信頼を失墜させた東芝の「圧力問題」。一連の調査過程における西村あさひの関わり方は、五大の信頼を揺るがしかねない“事件”だといえる。
西村あさひは、東芝の監査役会の依頼を受けて、監査役会の補助者として調査を受任。圧力の証拠は認められないと結論付けた。
西村あさひはもともと東芝経営陣に法的助言を行っており、コーポレートガバナンスに詳しい複数のベテラン弁護士たちは、調査の信頼度を上げるためにも「西村あさひは受任するべきではなかった」と話す。
企業不祥事の報告書は「億を超える」(複数の弁護士)割の良い仕事だと言われるため、西村あさひは引き受けたのかもしれない。だが結果的に、西村あさひはコンプライアンス意識が欠如した東芝取締役会と監査役会の片棒を担ぐことになってしまった。
五大の足元を揺るがすもう一つの要素が、人材流出だ。
18年10月、森・濱田松本でエースと言われていた三浦亮太弁護士が独立。19年1月に設立した三浦法律事務所は、新興事務所として注目度ナンバーワンだ。他にも五大出身で、弁護士をしながら起業する若手も出現。企業内弁護士に転じる弁護士も増えている。
AI(人工知能)も実務に活用される段階に入り、士業間の序列に影響を与えつつある。特に司法や行政の手続き業務とリーガルテックは相性が良く、弁護士以外でも、企業の代行需要で食ってきた司法書士や税理士、公認会計士から脅威として認識され始めた。
一方で、上げ潮に乗るのが社会保険労務士だ。
弁護士を頂点とした士業の序列が今、大きく変わりそうな状況だ。