『週刊ダイヤモンド5月14日号』の第1特集は「ゴルフ大全」です。コロナ禍で人気復活を遂げたゴルフは、ビジネスとは切っても切れない関係にあります。
“超一流”の「きれいなゴルフ」
今からさかのぼること十数年前。日本経済を代表する経営者2人の姿が、霊峰富士の麓にある神奈川県の会員制ゴルフ場、箱根カントリー倶楽部にあった。
その2人とは、ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長とソフトバンクグループ(G)の孫正義代表取締役会長兼社長執行役員だ。当時柳井氏はソフトバンクGの社外取締役であったが、この日はビジネス目的ではない。2人の共通の趣味であるゴルフを楽しむためだった。
ラウンドを共にしたITN法律事務所の名取勝也弁護士は、柳井氏と孫氏が見せる「きれいなゴルフ」にあらためて目を見張った。
「きれいなゴルフ」というのは、決してゴルフスイングの美しさやスコアの良さのことではない。ゴルフを嗜む上での“一流”の振る舞いだ。後続に迷惑を掛けない「プレーファスト」は当たり前。ミスショットやミスパットをしてもキャディーに不満をぶつけることもなく、同伴者への気遣いも忘れなかった。なにより、ひたむきにゴルフに打ち込む2人の姿は“美しかった”という。
英スコットランド発祥のゴルフは、もともと貴族の社交術として始まった。日本でもエリート必須の“嗜み”として、エグゼクティブらはゴルフに打ち込む。もっとも彼らは人脈を広げるために打算でゴルフに励むわけではない。
まずは、スコアだけではない“一流”のゴルフを極める。その先に、カネでは決して手に入らない不思議な出会いと人脈が待っているのだ。
では、ビジネス界きってのゴルフ好きである柳井氏と孫氏は、“一流”のゴルフを通じてどんな人脈を築いているのだろうか。
ビル・ゲイツ氏に鈴木敏文氏…孫氏と柳井氏のゴルフ経営者人脈
自宅にシミュレーションゴルフを設けるほど、ゴルフに熱を入れる孫氏は、シングルハンディ並みの腕前。パープレーはもちろん、ホールインワンも達成したことがあるという。
ビジネスで世界中を駆け回る孫氏が築くゴルフ人脈は、まさにグローバルなものといえる。その筆頭格が、米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏だ。孫氏はゲイツ氏と1980年代後半から親交があったが、ゴルフを通じて距離をぐっと縮めたのだ。
孫氏と同様に自宅に練習場を備える柳井氏も、ホールインワン達成者だ。
ほぼ毎週末、気の置けない友人とのラウンドを楽しんでいるという柳井氏は、ある大物経営者とも距離をぐっと縮めていた。その大物経営者とは、セブン-イレブン・ジャパンを急成長させた「流通のカリスマ」鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問だ。