ワーストランキングを作成
環境省は毎年、全国の海水浴場(一部、湖沼や河川の水浴場も含む。以下、海水浴場と表記する)の水質調査を取りまとめてきたが、2020年、21年はコロナ禍で水質調査結果の取り扱いが異なることなどを理由に中止となった。
対象となったのは水質格付けが低い「C」「B」「A」の海水浴場で計282カ所。
水質の判定基準は4つあり、水の汚れを示す化学的酸素要求量(COD)、ふん便性大腸菌群数、透明度、油膜の有無で、適(AA、A)、可(B、C)、不適の5種類で格付けされている。
4つのうち1つでもAの基準をクリアできなければ、その海水浴場は、他の判定基準がどれだけ良くてもB以下に落とされる。仮にCODが同じ値でも、AとBでは水質が異なるわけだ。
そこでダイヤモンド編集部の水が汚い海水浴場ランキングは、唯一Cとなった海水浴場をワースト1位とし、2位以下は水質Bの159カ所をCODの多い順に並べ、161位以下は水質Aの122カ所をCODの多さで同様に並べて作成している。なお、ランキング中のCODは複数回測定の平均値である。
少し化学的な話になってしまうが、CODについても説明したい。CODは、海水に含まれる有機物を酸化剤で酸化するときに、消費される酸化剤の量を酸素の量に換算したものだ。
CODが高いほど、水中に存在する有機物の量が多いことを意味し、有機物による水質汚濁の程度が大きいことになるのである。
さっそくランキング結果を見ていこう。
1位となった海水浴場は
上位の顔触れを眺めると、愛知県の海水浴場が多数ランクインしている。
ワースト3の4カ所のうちの3カ所が愛知県であり、ワースト10においても15カ所のうち、愛知県が8カ所を占めている。
トップは愛知県常滑市のりんくう海浜緑地。中部国際空港「セントレア」の対岸に造られた人工海浜である。人工海浜の長さは630メートルで、東海地区では最大級を誇る。ビーチからは飛行機が間近に見え、伊勢湾を照らす夕日を売りにしている。だが、CODは5.9mg/リットルで、唯一の水質Cとなった。
2位となったのは愛知県知多市の新舞子マリンパーク ブルーサンビーチでCODは4.8mg/リットル。1997年にオープンした長さ400メートルの人工海浜で、2基の巨大な風力発電の風車がビーチのシンボルのように立つ。
以下、愛知県のビーチを順に見ていこう。
3位は西尾市の寺部で4.7mg/リットル、5位は蒲郡市の西浦温泉で4.5mg/リットル、10位は同じく蒲郡市の三河大島東浜、常滑市の坂井、美浜町の若松と奥田で3.8mg/リットルとなった。
ところで、愛知県はなぜ水質の悪い海水浴場が多いのか。
専門家は「愛知県で水質の悪い海水浴場は、いずれも三河湾や伊勢湾の奥まった場所にある。この地域の海は昔からCODが高止まりする傾向がある」と指摘する。
愛知県以外で上位となった海水浴場は
愛知県以外でランキング上位となった海水浴場も見ていこう。
3位は神奈川県横浜市の海の公園で、CODは4.7mg/リットル、6位は千葉県富津市の上総湊と北海道室蘭市の電信浜児童で、CODは4.4mg/リットルとなった。
8位と10位は青森県東北町の小川原湖公園(CODは4.2mg/リットル)とわかさぎ公園(CODは3.8mg/リットル)となった。これらは小川原湖の湖畔にある水浴場だ。
小川原湖は全国の湖で11番目に面積が広い、海水と淡水が入り混じる汽水湖である。湖なので、海に比べて水がたまることも影響していそうだ。
9位は北海道石狩市のジェットビーチ石狩で、CODは4.0mg/リットル。
10位には、千葉県千葉市のいなげの浜もランクインした。
なお、ランキングは川、湖沼の水浴場も対象としている。長野県や滋賀県など海のない自治体に住む人も、ぜひチェックしてみてほしい。
また、調査時の天候や、波の状況などが結果を左右することもあるため、前年の格付けも併せて確認すると良いだろう。
3年ぶりの行動制限のない夏休み、海水浴場に多くの人が訪れる中、感染対策に十分気を付けて、楽しんでいただきたい。
(ダイヤモンド編集部 松本裕樹)