ヤフー傘下のオフィス用品通販大手アスクルは、早ければ今年5月からインターネット通販(EC)の物流代行サービスに乗り出す。

 これは、ヤフーショッピングの出店者向けサービスで、商品の保管から梱包、配送までを一貫して担うものである。

今年7月から埼玉県で大型物流施設(延べ床面積約7万平方メートル)が稼働することに伴い、その能力をフル活用する。

 実はこの参入は、代行サービスで先行するアマゾン、楽天と「物流戦争を引き起こす」(川連一豊・ジャパンEコマースコンサルタント協会代表理事)とみられている。

 そもそもEC業界で物流が注目を集めるのは「アマゾンの急成長の要因が物流にあると認識されたことが大きい」(角井亮一・イー・ロジット代表)。アマゾンの「送料無料」や「当日配送」といった配送サービスが消費者に受け、ネットの店舗もそれを無視できなくなった。とはいえ、店舗からすれば、1割程度を占める直接物流費を下げることは容易ではない。そこにアマゾンや楽天が自社の物流網を提供しているのである。

 その点、アスクルは自社のドライバー約1400人を抱え全国で6物流拠点を展開し、法人向けに当日・翌日に配送する仕組みを整えている。梱包技術や接客にも定評があり、企業の支持を得ている。

 これを個人向け市場にも生かそうと、昨年ヤフーと業務資本提携を結び個人向け直販「LOHACO」をはじめ、今回、代行サービスにまで踏み込む。アスクルの豊田裕之取締役は「2社で商品検索から配送までできる。本気でアマゾンに勝ちたい」と話す。

 ただし、先行する2社も黙っていない。

図に示すように、既にアマゾンは全国11拠点を構え、神奈川県で超大型施設(約20万平方メートル)の開設を控える。物流代行サービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン」は手軽さが受けて浸透している。この春からは配送時にアマゾンのロゴが入った箱ではなく「無印の箱」での配送も可能となり、どの店舗でもアマゾンの物流網を気兼ねなく利用できる。

 それに対し楽天も物流拠点を現在の1拠点から来年にかけて5拠点まで一気に拡大する。煩雑な物流を割安な価格で代行することで、店舗に本来の顧客サービスに注力してもらう狙いがある。楽天物流の恵谷洋社長は「物流で稼ぐよりも出店者の売り上げを伸ばすほうが重要だと考えている」と言う。

 もっともヤフーは今EC戦略を見直す時期にきている。個人間の固定価格取引サイト「ヤフーバザール」は、「社運を懸けていた」(事業関係者)にもかかわらず集客できずにわずか8カ月で終了。ヤフーショッピングも伸び悩んでいる。アスクルの力を発揮し物流戦争で戦うため、ECのてこ入れが必要となっている。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)

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