環境の変化も大きかった。「東日本大震災以降、復興需要によって全国的に建築資材費や労務費が上昇した」(竹中工務店)。特に労務費の高騰と人手不足は深刻で、たとえば、型枠工の場合、労務費は震災前の1.5倍にまで値上がりしている。
復興需要のおかげで、各社とも土木部門は一服ついているが、竹中の場合、土木は連結売上高の1割にも満たない。建築不振が業績悪化に直結した格好だ。
竹中工務店自身はどの工事が響いたのかを明かしていないが、ゼネコン業界では「同じく関西系のスーパーゼネコンである大林組とともに威信をかけて受注した、大阪のうめきたプロジェクトや超高層ビル・あべのハルカスなどで相当な安値攻勢をかけた」(大手ゼネコン関係者)と言われている。
かつて、竹中と大林は東京の高層オフィスビルの受注合戦を繰り広げ「竹林戦争」と呼ばれた、関西系のライバル同士。一方の大林の安値攻勢も激しいが、こちらは採算割れではないかとささやかれた東京スカイツリーで、土壇場で施主の東武鉄道からの支払額を引き上げることに成功した。
「電鉄会社はやっぱり太っ腹」と評判になったが、こんな幸運はそうそうない。
「大手が率先してダンピングする状況が続いている」。ある中堅の建築系ゼネコン幹部はこうこぼす。
そこへ震災復興工事のせいで原価が上がったのだからひとたまりもない。
「選別受注という言葉は好きではないが、昨年から受注の引き締めを始めている」。今年1月には、営業姿勢の刷新を印象づけるように、33年間トップに君臨していた竹中統一社長が、非創業家出身の宮下正裕副社長にバトンタッチする人事が発表された。
ほかのスーパーも、土木で儲かっているとはいえ、建築部門の利益率悪化は皆同じ。今回の“竹中ショック”は、業界のダンピング体質に対して、強烈な警告を発しているともいえる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)