『週刊ダイヤモンド』6月1日号の第1特集は「薬局・薬剤師 勢力激変」です。薬局・ドラッグストア大再編の「最終章」、薬剤師キャリアの序列異変、薬学部大淘汰に迫ります。
再編「最終章」三つの異変
専業の調剤薬局と、調剤薬局を併設するドラッグストアが交ざり合う調剤薬局・ドラッグストア業界は、再編の「最終章」に入る。参入企業や店舗数が右肩上がりに増える成長期を経て、寡占化が進む成熟期に入った。
最近では、業界1位のウエルシアホールディングス(HD)と2位のツルハホールディングス(HD)のようなドラッグストア同士の経営統合や、スギホールディングスとI&H(阪神調剤グループ)のような、ドラッグストア大手による調剤薬局大手の買収が進んでいる。
最終章には従来の流れに異変をもたらす三つの要素がある。
一つ目は買収を重ねてきた買い手側の体力切れ。借り入れが膨らんで、大手でも身売り側に回るところが出てくる。
アクティビストが圧力次なる再編の火種
二つ目はアクティビスト(物言う株主)の圧力だ。香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントがツルハHDを標的にしたことが、同社とウエルシアHDの経営統合につながった。
そのオアシスは、この4月に調剤薬局チェーン最大手のアインホールディングス、5月にはドラッグストア大手であるクスリのアオキホールディングスの株式保有比率をそれぞれ引き上げ、次なる再編の火種をつくっている。
総合商社、投資ファンド、さらに保険会社も参戦!?
三つ目は異業種の参戦だ。ヘルスケア分野に力を入れたい大企業などが、医師と患者に接点を持ち、地域に根差した薬局の買い手に手を挙げてくる。
これからの再編は、「総合商社や投資ファンド、さらには保険会社などが参加し、より広がりのあるものになる」と、薬局M&A仲介の第一人者である、M&Aキャピタルパートナーズ上席執行役員の土屋淳氏は期待を込めて予見する。
再編が進む中で、コンビニエンスストアよりも多い約6万店にまで増えた薬局は半減していくと想定される。「生き残るのは、薬局は大手全国チェーン、地域トップ、小さい店舗」と土屋氏。このうちクリニックの前に構える小店舗は、クリニックの医師の高齢化や薬局の後継者不在で自然消滅していく。
調剤報酬は年々シビアになり、病院から処方箋を持ってくる患者を待つだけの調剤薬局は生き残れない。少なくとも、在宅医療やオンライン服薬指導、設備の機械化やデジタル化への投資などが、生き残る条件だ。薬剤師しかりだ。
経営、キャリアのどちらとも、変化する者だけが生き残る。