甲子園でおなじみの全国高校野球選手権、冬の全国高校サッカー選手権、春高バレー…、人気大会が目白押しの高校部活と、プロ野球やJリーグなど華やかなプロスポーツとの狭間で、「大学スポーツ」はやや影の薄い存在となっている。

 そんな大学部活を応援する「サシイレ」というユニークなWEBサービスが注目を浴びている。

その名の通り、応援する大学の部活動に対して、いつでも気軽に差し入れができるというもの。

 手続きはいたってシンプル。応援したい大学の部活を選び、差し入れする商品を提携企業のカタログの中から選んで購入すると、部活の練習場や寮に品物が届くというもの。お礼として、部活からメッセージと写真入りのポストカードが届くことになっている。この「ありがとう」メッセージは本サイトでも公開され、チームのPRにもひと役買っている。商品価格の1~2割(商品によって異なる)が、WEBサービス側が得る手数料収入となっている。

 運営会社は、大学スポーツチャンネル。サシイレは、東京都が主催する「ビジネスプランコンテスト学生起業家選手権」で優秀賞に輝いた企画がベースとなっており、同社は受賞した青山学院大学のメンバー6人で立ち上げたもの。

 創業メンバーで取締役・プロデューサーの山内一樹氏が振り返る。「2008年10月に優秀賞をいただいて、翌年に会社を設立しました。当時は、大学スポーツを記事や映像で紹介するサイトで、メディア運営を目指しました」。いわゆる学生ベンチャーとしてスタートし、試行錯誤を繰り返して2011年に現在の「サシイレ」というシンプルなサービスに行き着いた。

「大学運動部を取材していく中で、資金難で苦しむ部活や、バイトとの両立で練習に集中できない選手などを数多く見てきました。一方で、世の中には大学スポーツのファンの方が多くいらっしゃって、みんな好きなチームを応援したいと思っていることも肌で感じていました」と同氏が語るように、ファンが気軽に応援できる仕組みをつくれば、たくさんの方に喜んでもらえるサイトになるとの目算があった。

 かくして、2011年にスタートしたサシイレは、多数のメディアに取り上げられたこともあり、脚光を浴びる。「現在では約200の部活が登録し、月間ページビューは30~40万PV。人気のあるチームには月に20件もの差し入れが入ります」(同氏)。

人気は「スポーツドリンク」と「肉」

 ちなみに人気のある差し入れは、スポーツドリンクと肉。肉は、バーベキュー用に送られるケースがほとんどだそう。差し入れが最も活発になるのは、夏の合宿シーズン。まさにこれから最盛期を迎える。

 差し入れという行為は、OBなど身内が行うというイメージがある。事実、同サービスの利用者は、「チームのOBもしくは同じ大学の卒業生が約7割を占める」(同氏)。部活の伝統とも言えるが、チームの身内や近い層に差し入れ需要があったこと。

さらに、通常OBや関係者しかできない差し入れが、一般のファンでも気軽にできるようになったことも同サービスが支持された一因と言えるだろう。

 差し入れを行うことで、チームへの愛着心が増し親交が生まれたケースもあるようだ。「ある大学陸上部のファンの女子高校生がサシイレを利用してくださり、その後チームが箱根駅伝ですごい好走をしたんです。その部では、その女子高校生へのお礼として、とくにファンだと言う部員の写真を額縁に入れて贈ったそうです。すごく喜んでくれて、以来交流が続いているそうです」(同氏)。

 同社では、スマホ用のスポーツ応援アプリ「Bee」の運営も行っている。これは、内外のスポーツチームがSNSを通じて発信した情報を、各ユーザーが自身のSNSで紹介・シェアし、その拡散具合に応じてポイントを獲得できるというもの。ポイントは、応援するチームが提供する様々な特典と交換できる。各ユーザーが、応援するチームの広報大使となる新しいコンセプトのアプリである。

 今後は、同サイトを大学スポーツのポータルサイトとしてさらに成長させると共に、プロモーション企画にも注力していく。大学アスリートを使ったWEB CMの企画制作など、新たな取り組み始まっているようだ。

「目指すのは、世界のスポーツマーケティングをリードしてきた企業のIMGです」(同氏)と語る。

大学ベンチャーから始まった小さな会社が、大きな夢に向かって走り続けている。

(加藤 力/5時から作家塾(R)

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