3度の金融支援、さらに2004年には産業再生機構からも支援を受け、丸紅とイオンのもとで再生を目指したダイエー。あれから10年が経ち、イオンの完全子会社となることで上場を廃止し、ダイエーの歴史は事実上、終わろうとしている。
(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)拡大経営の傷は癒されないまま
“失われた10年”の不完全なリストラ
かつて戦後の流通革命をリードし、総合スーパー(GMS)の雄として君臨したダイエーは、単なるスーパーではなかった。なにしろ、ハワイのアラモアナショッピングセンターからプランタン銀座、ローソン、プロ野球のダイエーホークス(当時)、さらにクレジットカードのOMCカードやホテルなど、ありとあらゆる企業を傘下に持つ、一大流通グループだったのだ。
「高度経済成長期は、流通業界志望者がこぞってダイエーを受けた」(業界関係者)ほどに輝いた存在だったが、ついにその歴史が終わろうとしている。
ダイエーの経営が傾き始めたのはバブル崩壊後である。店舗用地や企業を買いあさって、その資産価値上昇を見込んで借金をし、さらなる拡大にひた走った。そのビジネスモデルが、バブルの崩壊で立ち行かなくなったのだ。
3度に及ぶ金融支援、さらに2004年には産業再生機構からも支援を受け、丸紅とイオンのもとで再生を目指してきたが、ここにきて大幅に方針を転換。年内にダイエーの上場を廃止し、丸紅の持つ株式をイオンが買い取ることで、イオンの完全子会社となる。
上場を廃止すれば、上場を維持するためのコストを減らすことができる。また、イオンの持つ店舗とともに、さらなる統廃合を進める。18年頃には、ダイエーの屋号は消滅する見通しだ。
つまり、さまざまなプレーヤーが寄ってたかってダイエー再生を試みたものの、うまく行かなかったということだ。実際、ダイエーの業績はこの10年間も低空飛行のまま。直近では2期連続の営業赤字で、売上高も減り続けている。また、今期も業績を下方修正し、営業損失65億円と、3期連続で営業赤字に転落する見通しとなった。これによって最終赤字はなんと、7期連続を記録することになる。
再建失敗の理由は大きく2つ。まずは、不十分なリストラだ。ダイエーの店舗は老朽化しているものが多く、改装するにしても、また、スクラップするにしても、多額のコストがかかる。リストラ費用が不十分で、思い切ったスクラップ・アンド・ビルドに踏み切れなかったのだ。
また、スーパーにとって生命線である商品力についても、「安さをどこまでも追求するだけのやり方から抜けきれないまま」(業界関係者)。その結果、いつまでたっても収益が出る体質に浮上することができなかった。
「とても他人事とは思えない」GMSの凋落は業界共通の課題
しかし、苦戦しているのは、なにもダイエーに限った話ではない。
「とても他人事とは思えない」
本格的な人口減少時代に突入しようとしている今、ある業界関係者はダイエーの終焉に、こう感想を漏らす。GMS不振の構図は10年前から何も変わってはいない。ダイエーは、資産の値上がりを前提とした典型的なバブル商法がアダとなって、いち早く経営危機を迎えただけとも言える。GMS業界は、いまだ突破口を見出せないままに、時間だけが過ぎている。