『Mukiwa』でジンバブエでの少年時代を回想したゴッドウィンは、その後、『When a Crocodile Eats the Sun: A Memoir of Africa(クロコダイルが太陽を食べるとき――アフリカのメモワール)』や『The Fear: Robert Mugabe and the Martyrdom of Zimbabwe(恐怖――ロバート・ムガベとジンバブエの苦難)』など、ムガベ政権の汚職と腐敗を批判する著作をつづけざまに出版する。新生ジンバブエは黒人と白人がなんとか共存してやってきたのに、権力にとりつかれ“モンスター”と化したムガベがなにもかもぶち壊してしまったのだ。
ムガベが欧米諸国、とりわけイギリスから激烈な批判を浴びたのは、彼が「白人社会の信頼を裏切った」からだ。1980年にジンバブエを解放したムガベは、当初は白人への報復を抑え、その融和政策は「アフリカでの黒人による国家建設のモデル」と賞賛された。その功績により、1994年にエリザベス女王からバス勲章を授与されてもいる。
それにもかかわらず、2000年代になると、自らの政治的失敗を糊塗するために白人農場の強制収用などの不寛容政策に転じ、欧米や白人社会に対する憎悪を煽るようになった。「飼い犬に手を噛まれる」とはまさにこのことで、欧米諸国からすれば、ムガベはずっと“悪魔”の正体を隠し、善良な白人たちを欺いてきたのだ。