株式会社日立製作所(以下、日立)は、兵庫県養父市と、中山間地域が抱える高齢化や過疎化などの課題を解決するため、マイナンバーカードを用いた市民向けサービスの創出を目指し、「マイナンバーカードデジタルパスポート化事業」の取り組みを開始すると発表した。

本事業は、国が主導するデジタル田園都市国家構想交付金の対象として採択されたもので、養父市が市民に紐づくデータを安全に管理しながらサービス間で連携が可能な「パーソナルデータ連携基盤」を日立と構築し、マイナンバーカードなどを活用した「オンライン投票選挙」や「避難所管理システム」の実現を目指す。
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via プレスリリース

■背景と目的

養父市は、中山間地域という国土の約7割を占める地域に属し、広い区域に集落が点在することに起因する移動の課題や、人口減少により、地域における生活面での支え合いの基盤が弱まっているなどの課題があるという。このような中山間地域の課題解決を目指し、養父市と日立は2022年度にサービス間のデータ連携を実現する「データ連携基盤」を構築し、市役所から離れた場所の住民の利便性向上を図る「遠隔行政窓口」のサービスを2023年5月から開始した。養父市のマイナンバーカード保有率は90.9%で、高齢者を含む市民に広く普及しているという。この強みを生かし、養父市と日立は今回新たに、市民が市のサービスを円滑に受けるパスポートとしてマイナンバーカードを活用できる仕組みを作り、サービス間でのパーソナルデータ連携を可能にする本事業に取り組むとのことだ。

■本事業の概要

本事業では、「パーソナルデータ連携基盤」を構築し、マイナンバーカードや養父市が独自で発行する「やっぷるカード(ID)」を活用した市民向けサービスの創出を推進する。「パーソナルデータ連携基盤」は、LGWAN-ASPサービス内にある養父市の個人情報管理サーバーから、パーソナルデータのみを取り出し、サービス間で連携可能とするもので、市民が自身のパーソナルデータの提供先を設定できる同意管理機能なども提供する。

本基盤の構築にあたり、これまで日立が培ったスマートシティのアーキテクチャー検討やエリア・データ連携基盤の構築ノウハウを活用し、国が推奨するパーソナルデータ連携モジュールをいち早く用いる。
これにより、将来的な地域間・企業間などさまざまな分野に跨るデータの接続を見据えた、相互運用性の高い基盤を実現するとのことだ。

今後、本基盤を活用し、養父市の多種多様なサービス間での安心・安全なパーソナルデータの連携を可能にすることで、多くの市民が有するマイナンバーカードを用いたデジタルサービスの拡充を進め、市民の利便性向上を目指す。

本基盤を用いたサービス拡充の最初の取り組みとして、以下2つの市民向けサービスを創出する。
①オンライン投票選挙
マイナンバーカードの個人認証機能などを活用し、市民が自宅で本人確認の上、スマートフォンなどからオンラインで期日前投票宣誓や期日前投票ができる仕組みを、日立がスパイラル株式会社とともに開発する。これにより、時間や場所にとらわれないオンライン投票選挙の実現を目指す。オンライン投票選挙はまだ法整備の段階だが、実現した際は、市民の投票所までの移動時間の削減や投票機会の拡大により、投票率の向上が見込まれるほか、選挙管理委員会の投票集計業務など事務作業の効率化といった効果も期待できるとのことだ。


②避難所管理システム
避難所名簿や避難所への入退管理をデジタル化し、災害時はタイムリーに官民で情報連携をし、平時においても地域イベントなどで利用可能な仕組みを目指す。具体的には、現地での混雑緩和のため、事前に市民がマイナンバーカードによる本人確認の上、スマートフォンなどから事前登録情報の登録を行い、マイナンバーカードをかざすだけで入退出処理を行うものだ。本システムはテレネット株式会社のらくらく避難所くんをベースに提供する。本システム上で避難所マップや避難所の混雑度などを公開することも可能なため、養父市は混雑状況に応じた市民の誘導を行う、市民は事前に登録した世帯情報から親族の避難情報を確認するなど、災害時における円滑な避難所利用を実現するとのことだ。