人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、3月24日(日)21時から放送されるテレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『万博の太陽』で万田千夏を演じる飯豊まりえさんが登場します。


飯豊さんは、2008年に小学生向けファッション誌「ニコ☆プチ」でモデルデビュー。2012年に女優デビューを果たし、翌年、『獣電戦隊キョウリュウジャー』にレギュラー出演。その後、2015年放送の連続テレビ小説『まれ』で注目を集め、以降『花のち晴れ~花男next season~』『オクトー ~感情捜査官 心野朱梨~』『何曜日に生まれたの』など多くの話題作に出演しています。

そんな飯豊さんが万田千夏役で出演する『万博の太陽』は、1970年、日本万国博覧会(大阪万博 EXPO’70)で働くことを夢見たヒロインの青春と家族の物語を描く。橋本環奈さん演じる主人公・朝野今日子は、“世界とつながる場所”である万博への憧れを募らせ、大阪へ。居候先の伯父一家に励まされたり、ぶつかりあったりしながら成長し、やがて万博のコンパニオンとして世界中の人々と交流するという夢をつかみ取っていきます。


今日子が居候する叔父一家・万田家の長女である千夏は、研究者になりたいという夢を抱きながらも、女性の幸せは結婚と信じる父の言いつけどおりに見合いをするが、自由奔放な今日子と暮らすうち、心境に変化が現れるというキャラクター。そんな千夏を演じる飯豊さんが“役者”として活躍する上で大切にしている言葉とは?

中園ミホの脚本を読み終える頃には千夏像が出来上がっていた

――撮影に入る前に、脚本の中園ミホさんとお会いになったそうですね。どのようなお話をされたのですか?

私のことを色々とお話させていただきました。また、中園さんがもともと占い師さんをされていたということもあって、私の名前の画数を占ってもらったり(笑)。千夏も、最初は千夏という名前じゃなかったそうなんです。もっと穏やかで優しい人物にしたいから千夏にしたと伺って、キャラクターの性格を画数でも表現されているんだと驚きました。


――そんな中園さんが書いた脚本を読んでみていかがですか?

女性が活躍できる場所が少なかった時代を舞台に、自由な生き方を手に入れるために動く女性たちが描かれていて、読んでいるだけで背中を押されました。キャラクターたちの個性・役割もわかりやすく描かれていて、役作りについて悩む間もなく、読み終える頃には自分の中で「千夏」というキャラクター像が出来上がっていました。

――脚本だけでなく、コンパニオンの衣装や美術もしっかりと当時が再現されていましたよね。

そうなんです! 当時の資料や雑誌を見せていただいたり、また当時にインスパイアされた衣装やセットも相まって、「当時の大阪万博ってこんな感じだったんだろうな」と気持ちから入り込めました。

――「古き良き時代」と言われる昭和。その一方で、女性が働きに出にくいという不便な部分もありました。
今回、それに一番悩まされるのが千夏の存在。その苦しみの部分はどのように表現されたのでしょうか。

父・昭太朗役の唐沢寿明さんの演技を受けると、自然と苦しい気持ちになっていた記憶があります。自然に次のシーンでも父の顔色をうかがって委縮してしまったり……。そのくらい、唐沢さんの演じるお父さんが怖かったです(笑)。

――千夏と飯豊さんは似ていますか? それとも父親に反対されてもやりたいことを優先するタイプですか?

どうでしょう……。
時と場合によると思います。父親ではないですが、私は「やりたい」と思ったことがあれば、その都度マネージャーさんに意思を伝えているんです。なので、どちらかというと「一緒にやりたいことを実現するタイプ」でしょうか?(笑)。

ただ、芸能界に入りたいと父親に伝えた時は、結構反対されました。千夏とは少し状況は違いますが、そこはリンクしている部分だと思います。

――その他の部分で、千夏と飯豊さんの共通点はありますか?

とても近いキャラクターだなと思ったシーンはたくさんありましたね。
思ったことを、あえて相手に伝えないとか。きっと私が自然に演じられるように、中園さんが台詞を作ってくれたのだと思います。

――今回、関西弁にも挑戦されました。共演者の方々とは現場でどのようなお話をされていたのでしょうか?

私は関西弁の台詞だったので、関西ご出身の母・和世役の江口のりこさんにイントネーションを確認してもらうことがありました。関西弁指導の方にもついていただいて、監督の意見も聞きながら、指導の方に確認していただきました。

――忙しいですね!?

忙しかったです(笑)。
監督からは「イントネーションより感情を大事にしてほしい」とお話があったのですが、どちらも大事にしたかったので、とてもチャレンジングな撮影だったなと思っています。

――飯豊さん以外の方も苦労されていましたか?

意外と関西弁を話す人が少なくて(笑)。環奈ちゃんも唐沢さんも東京出身設定で、私と弟・博士役の番家天嵩くんの姉弟2人で一生懸命頑張りました(笑)。

――作品のこと以外に、息抜きで何かお話したことは?

倉本鉄平役の木戸大聖くんと、待ち時間にゴルフの話をしていました。木戸くんの趣味がゴルフみたいで、「飯豊さんもやってみてください」とおすすめしてくれて。環奈ちゃんも結構やっているみたいで、マイドライバーの話で盛り上がっていました。私も父親がゴルフ好きで、きっと私も始めたら親孝行にはなると思っているんですけど……。そのうちやってみようと思います!

――そんな和気あいあいとした雰囲気で撮影が進んでいたんですね。

すごく楽しかったです。あと木戸くんにはNetflixの『First Love 初恋』のオーディション秘話を聞いたり(笑)。環奈ちゃんとは同世代で共通の知り合いが多くて、撮影中に一緒にご飯にも行きました。環奈ちゃんとは今作が初共演で、最初はお互いに敬語で話していたのですが、撮影が進むにつれて「まりえ」と呼んでくれるようになって、仲良くなれた実感が湧いてすごく嬉しかったです。

『花より男子』が役者への興味のきっかけに

――ここからは、飯豊さんとテレビの関わりについて聞かせてください。幼い頃はどんなテレビ番組を見ていたのでしょうか?

『花より男子』です。「こんな学生生活を送れたらいいな」と憧れたのはもちろん、『花より男子』を見て役者さんが好きになり「こういう仕事ができたら楽しそうだな」とテレビの世界に興味をもったきっかけの作品です。

――では、自身が後続となる作品『花のち晴れ~花男next season~』に出ると決まった時は驚かれたのではないでしょうか。

まさか自分が英徳学園の制服を着られるなんて! 驚きや嬉しさより、なんだか不思議な気分でした。でもきっと、当時の自分が聞いたら相当ビックリするんだろうな(笑)。

――飯豊さんが役者活動をする上で大事にしている言葉・信念はありますか?

『白い巨塔』で寺尾聰さんと共演した際、「役者という仕事は台詞を覚えて、それを発して、お芝居をすることで成立するけれど、もっと突き詰めて、積み重ねることで深みが出る仕事なので、今やっていることを大事に変わらず続けてください」とお言葉をいただきました。今でも鮮明に覚えていて、その言葉を役者として活動する上の“芯”としてずっと大切にしています。

――ありがとうございます。最後に、ドラマの放送を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

女性は高校を卒業したら家庭を築くということが決まっていた時代に、千夏は今日子と出会い、影響されて成長していきます。見てくださった方にも、きっと何か影響を与えられる作品になっていると思いますので、是非楽しんでください。

取材・文:米田果織
撮影:フジタヒデ