2020年秋に日本上陸を果たした新型BMW 4シリーズ クーペ。13年に3シリーズからクーペとカブリオレが分離独立した4シリーズは、翌14年には4ドアクーペのグラン クーペも加わり、スポーティネスが際立ったキャラクターを確立。
【画像ギャラリー】プロポーションが素敵すぎる! BMW M440i xDrive クーペ(全17点)
「G22」という社内開発コードを持つニュー4シリーズ クーペは、今回も3シリーズとメカニズムを基本的に共用するが、先代よりもさらにキャラクターの差別化が図られている。特にエクステリアはまったくの別モノで、ビジネスユースやファミリーカーとしての需要にも応える3シリーズの面影を感じることは、ほとんど皆無と言っていいくらいである。

●BMW M440i xDrive クーペ
もっとも目を引くのは、やはりフロントマスク。19年秋にフランクフルトモーターショーで「コンセプト4」という名のデザインスタディを見たときには度肝を抜かれたが、縦に大きく口を開けた一体型のキドニーグリルは、この新型4シリーズ最大の特徴である。ここ最近のBMWは、キドニーグリルが大型化しているので、その流れに沿ったものと考えれば理解出来なくもないが、個人的には正直違和感がまったくないとは言えない。
BMWは「古くは1936年のBMW 328なども縦長のキドニーグリルだった」と説明するが、ちょっと無理がある。どちらかというと、71年デビューの3.0 CSLや、77年に登場した初代6シリーズ(E24)の方がイメージとしては近い。実際には、切れ長のヘッドライトも含めて、15年にコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステで公開されたコンセプトカー「3.0 CSLオマージュ」がルーツであるように思える。

●2015年に公開された、3.0 CSL オマージュ
いずれにせよ、新型はインパクト抜群の個性的な顔つきとなり、一見して「BMWのスポーツクーペ」であると明確に認識出来るルックスを手に入れた。それこそがデザイナーの狙いだったのだろう。その意味では成功である。
フロントマスクばかりに注目が集まってしまうが、新型4シリーズのエクステリアデザインの完成度は極めて高い。プレスラインに頼らずに絶妙なカーブを描く曲面で構成されたボディは、力強さとエレガンスが見事に表現され、セクシーさまで感じさせる。クルマの周囲を360度ぐるりと眺めてみれば、そのプロポーションがとにかく美しいクーペであることがわかる。このクラスのクーペで、これほど美しいスタンスを持つモデルは、ドイツ車としてはかなりレアだ。時間の経過とともに、どんどんカッコよさが増すクルマと言える。
■ロングドライブしたくなる
デザインだけでも十分に購入動機になるが、新型4シリーズ クーペは、走りも魅力に溢れている。試乗車のM440i xDriveは、M4のすぐ下に位置づけられるMパフォーマンスモデルで、ツインスクロールターボチャージャーを備えた387馬力/500Nmを発揮する3L直6を搭載し、これに8速ATを組み合わせて四輪を駆動する。

●BMW伝統のシルキーシックスだが、現代のエンジンらしくターボで武装されている
直6ターボは、アクセルペダルの踏み込み量にとてもリニアに反応し、パワフルで直6ならではの滑らかな回転フィールが味わえる。低回転域からの加速でもターボラグをほとんど感じる事はなく、ドライバビリティは非常にいい。
3シリーズより21mmも低重心というだけあり、ハンドリングもとても俊敏で正確。
実用性も十二分に高い。後席は広々しているとは言い難いものの、シートはしっかりとした作りで、大人2人が問題なく着座できるだけのスペースを備えている。またラゲッジ容量は440Lあり、リヤシート中央にスルーローディング機構も備わる。

●ラゲッジはトランクスルー機能付き
先進運転支援システムはレベル2の最新世代で、3シリーズと同様に「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能」も備わる。条件が揃えば手放し運転も可能で、ロングドライブでも疲労が大幅に軽減されるのは間違いない。旅行やゴルフの足としてとても魅力的な一台だが、もちろん走りそのものを楽しみたい人も必ず満足出来るだろう。
<文=竹花寿実 写真=山本佳吾>
■M440i xDrive クーペ(4WD・8速AT)
主要諸元
【寸法・重量】
全長:4775㎜
全幅:1850㎜
全高:1395㎜
ホイールベース:2850㎜
トレッド:前1580/後1590㎜
最低地上高:129㎜
車両重量:1740㎏
乗車定員:4人
【エンジン・性能】
型式:B58B30B
種類:直6DOHCターボ
総排気量:2997cc
最高出力:285kW(387ps)/5800rpm
最大トルク:500Nm(51.0㎏m)/1800~5000rpm
使用燃料・タンク容量:プレミアム・59L
WLTCモード燃費:11.2㎞/L
最小回転半径:5.7m
【諸装置】
サスペンション:前ストラット/後マルチリンク
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前225/40R19/後255/35R19
【価格】
1038万円(消費税率10%込み)