大型車のタイヤ脱落事故はけっこうあるようだ。2022年1月13日付けのNHKニュース「走行中のトラックからタイヤ2本外れる 直撃した歩行者大けが」によれば、昨年度は131件起きているという。そしてなんと、131件のうち125件、95%が左後輪だという。
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95%が左後輪って、尋常じゃない。なぜ左後輪に集中するのか。2022年1月14日付けのテレ朝news「“外れたタイヤ”が歩行者直撃…「真後ろからドン」事故の瞬間」がこう報じている。
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国土交通省によりますと、右折する時は比較的速い速度で曲がるため、遠心力で積荷の重さが左の後輪に掛かる可能性が考えられます。
また、左折する時は、低い速度で左の後輪がほとんど回転しない状態で曲がるため、タイヤがよじれて負荷が掛かる可能性が考えられるといいます。
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へ~、そんなことでタイヤ脱落の95%が左後輪になるとは、恐ろしいもんだな。左後輪のナットがゆるまないよう、何か工夫すべきじゃないんですかね。
拙宅には紙の日経新聞が毎日届く。私は経済方面はあんまり興味がないのだが、せっかくなのでパラパラ見る。2022年1月14日付けの朝刊に「タイヤ脱落 10年で12倍に」という記事を見つけた。6段組の大きな記事だ。10年で12倍? なんだそれ。読んでみてた。びっくりしたねえ! 一部を以下に引用する。
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業界では近年の脱輪事故急増の背景として、海外に輸出しやすくする目的などで10年(※2010年)にタイヤの取り付け方式が国内規格から国際規格に変わったことがあるとの指摘がある。
以前の国内規格では右側のタイヤを留めるナットは右ネジ、左側は左ネジだったのが、国際規格では左側も右ネジに変更された。この結果、左側ではタイヤの回転とネジが緩む向きが同じになり、締め付けが甘いと緩みやすくなった可能性があるという。
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換気扇の掃除は私の役割だ。
大型車の左側タイヤも、回転により緩まないよう逆ネジ(左ネジ)になっていた。ところが「海外に輸出しやすくする目的など」で右ネジにした、つまりわざわざ回転により緩みやすいように規格変更した。以来10年、タイヤの脱落事故は12倍になったというのである。そんなバカなっ!
ネットでちらっと検索してみた。1年前の2019年1月19日付け乗り物ニュースが「大型車のタイヤが脱落、後続車に激突も… 冬に増加の車輪脱落、『左後輪ばかり』のナゾ!」と報じていた。タイヤの脱落がなぜ左後輪に集中するのか、北海道トラック協会の推測としてこんなことが書かれている。
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「2010(平成22)年に大型車のホイール規格が、世界基準といえる『ISO方式』へ全面的に切り替わりました。それまで採用されていた日本独自の『JIS方式』では、右側の車輪のボルトは『右ねじ(右回し)』、左側は『左ねじ(左回し)』でしたが、新たなISO方式では左右輪とも右ネジです。
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2021年11月19日には朝日新聞が「大型車のタイヤ脱落が過去最多、国交相『調査分析したい』」と報じている。ネジの規格変更が影響したかについて、当時の国土交通省大臣は「脱落事故との関連性は明らかになっていない」と述べたそうだ。国交省は「ネジの締め付けと点検をしっかりおこなっていれば脱落は起こり得ない」という立場なのだろう。
もしもですよ、もしも日本が、世界基準のISO方式に逆らって「左側は左ネジ」の大型車を輸出し続けたら、世界の運送業者たちからこう賞賛されたんじゃないか。
「日本車でだけ左側タイヤの脱落事故がほぼ起こらない。なぜだ? あっ、左側が左ネジなのか。よくそんなことを考えついたな。日本、あったまいい~!」
いずれにせよ、タイヤの脱落は大きな事故につながる可能性が高い。何かしらの対策を講じるべきではないかと思っている。
文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。