同車は1.5Lの3気筒エンジンを積む、レクサス史上もっとも小さなクロスオーバー。その位置付けは「週末に買い物へ行くときのカジュアルな装いとは?」の答えだという。さながら上質なスニーカーといったところだろうか。スタンスはいい感じ。走りはどうか。
【画像】内外装に高級感!レクサスLBX
■ヤリス クロスとは別モノ
LBXは、レクサスが初めて送り出すBセグメントのコンパクトクロスオーバーモデルだ。世界初披露がイタリア・ミラノで行われたように、主力市場はそのカテゴリーの本場である欧州。そして、やはりコンパクトの人気が高いお膝元の日本である。

●メーターは12.3インチの大型フル液晶。ヘッドアップディスプレイとステアリングスイッチを連携させることで、視線の移動を抑えて運転に集中できる環境を整えた。
車名は「レクサス・ブレークスルー・クロスオーバー」の頭文字。従来のレクサスと異なるネーミングには、これまでの高級車の概念もクラスのヒエラルキーも打ち破るという開発陣の願いが込められた。ミニ、アウディQ2、DS3といった欧州勢に勝負を挑む最小のレクサスだ。日本勢の従来モデルでは、上質なコンパクトクロスオーバーというコンセプト、ボディサイズの両面でマツダCX-3のイメージが近い。
世界初披露がファッションの街ミラノで行われたワケはもうひとつある。LBXは新しいグレード体系として5つの世界観を設定。さらには内装色・シート素材・刺しゅうパターンなど、約33万通りの組み合わせから唯一無二の一台をオーダーできる「ビスポークビルド」を用意するのだ。
LBXはヤリス クロスをベース車両として開発されているが、内外装の共通点は後席のシート形状くらいしか見当たらない。ドアハンドルにはレクサス独自の電子制御式「e-ラッチシステム」を採用。Bセグメントとしてはじつに贅沢。
「プレミアムカジュアル」がコンセプトのデザインは、ダイナミックで若々しいスタイルのよさが印象的。レクサスの新しいフロントフェイス「ユニファイドスピンドル」は、とどまることを知らない同ブランドの進化を主張する。
スタイルのよさはヤリス クロスより2ランク大径化したタイヤも一因で、なんと兄貴分にあたるCセグメントのレクサスUXよりも大きい。それをボディに収めるため、レクサス初採用のGA-Bプラットフォームには大幅な改良が施されている。「ヤリス クロスと一緒の部品はサイドメンバーの組み幅くらい。サスペンションもほとんど別モノになっています」とは、遠藤邦彦チーフエンジニア。

●パワーユニットは1.5Lエンジン+モーターのHEVのみ。バイポーラ型ニッケル水素電池を搭載し、モーターアシストを強化した
■走りのためのプロポーション
LBXはフロントサスペンションのアッパーマウント位置をそのままに、前輪を20㎜前方に配置。ホイールベース延長とハイキャスター化の一挙両得作戦だ。この2つは直進性向上に効く。ボディの拡幅でトレッドもワイドになり、旋回性がアップ。タイヤの切れ角が増し、最小回転半径の縮小も両立しているという。

●試乗車の装着タイヤは225/55R18サイズのヨコハマ アドバンV61。ホイールはハブボルトで締結される
1.5Lハイブリッドユニットも“レクサスチューン”がしっかり施されている。エンジンは3気筒特有の振動を抑えるため、バランスシャフトを追加(ヤリス クロスはガソリン車のみ)。駆動用モーターはノアやカローラ系の最新版に換装、駆動用バッテリーにはバイポーラ型ニッケル水素を搭載し、動力性能もグッとレベルアップされている。
富士スピードウェイのショートコースでFFの欧州仕様プロトタイプにチョイ乗りしただけでも、そうしたエンジニアリングの効果は実感できる。モーターアシストの強化によって、加速の力強さとレスポンスが向上。3気筒らしい音はするものの、点火系のチューニングと相まって雑味は取れている。
ドライビングポジションのヒップポイントも低くなったおかげで、低重心感はスペック以上。どっしり落ち着いた高速直進性、全域でリニアなハンドリングと路面に吸い付くような安定性は、スポーツハッチも顔負けだ。後輪モーター駆動のE-Four(電気式4WD)もラインアップする。
日本では今秋以降に発売予定。プレミアムクロスオーバーの概念を超える「クラスレスコンパクト」が、まもなく国内デビューを迎える。

●先端を低く抑えたフード形状と、ボディとグリルの境界を融合させたシームレスグリル。LBXらしい意匠の構築と風の流れの変動を抑える効果を持たせた
〈文=戸田治宏 写真=山内潤也/トヨタ〉