日本から韓国に行くフェリーは大阪・福岡・下関などから出ており、全てのコースを制覇したいと思っていた筆者だが、最近、残念なことが起きてしまった。今年6月に誕生した金沢-釜山航路が、たった5カ月で突然の休業、幻のルートとなってしまったのだ。
10月28日、ウェブサイトで船の運休を発表した東日本フェリーの担当者は、「石油の高騰により事業として続けることが難しくなり、今回の休止となりました。再開のめどはまだ立っていません」と電話取材に答えてくれた。
29日に金沢から釜山へと出発した船が最終便となった。記念イベントなどは特に行われなかったということだ。
金沢と釜山を結ぶ国際フェリー「パンスター・ハニー号」は、週1回、日韓を往復していた。
月曜13時に釜山港を出たフェリーは、翌朝10時に金沢港に到着。水曜15時に再び金沢港を出発し、翌12時に釜山に到着するというスケジュールだった。片道料金はスタンダード(相部屋)で1万6000円、最高級のプレジデントスイートで25万円。船内には食堂や浴場、コンビニのほか、ルーレットやゴルフの打ちっぱなしスペース(!)が用意され、マジックショーなども行われていたという。
小松空港から仁川空港まで飛行機で約1時間30分であることを考えると、かなり時間はかかるが、施設が整ったフェリーでの旅は貴重な思い出になったことだろう。
東日本フェリーによると同船はこれまで、金沢を訪れる韓国人観光客を中心に、3000人以上の乗客を乗せて運行していたそう。韓国人にはあまり知られていなかった金沢の魅力を紹介する意味でも、大きく役だったはずだ。
フェリーの休止が決まる前日、釜山への入り口となった金沢港に行ってみた。地方の港ということだけあり、出入国管理所は町の公民館のようにこじんまりとしており、鉄条網で厳重に囲まれているようなこともない。
ここでパスポートにハンコを押してもらえればそこから先は国外、という事実がちょっと信じがたい状況で、そののどかな景色に潜む非日常感がなんとも印象的だった。
いつの日か、この港から国境の先に旅だちたいという思いを胸に、人気のない港施設を後にした。
(清水2000)